ぽたらか -23ページ目

ぽたらか

ぽたらかは20年の歴史を閉じます

 面白い。そして、懐かしい。新宿のような大都会の話ではないけれど、私たちも20数年前、始めたのはまさにこのような野戦病院のようだった。その頃、墨田区で伝説の熱いケースワーカーがいて、「空いてますか?どこでもいいから一人寝かせてください。」いっぱいだと言っても、強引だ。「もう、連れてきています。」

 夏なら熱中症、冬は低体温症。栄養失調でも心臓は止まる。風呂に入れて身ぎれいにして、栄養のあるものを食べさせて、柔らかい布団に寝かせて、すっかり元気になったようでいて、翌朝、笑顔のまま冷たくなった人もいた。

 世の中には好き好んで住所不定になる者はいない。どんなデメリットがあっても住所設定ができない理由はあるのだ。

そんな人のために日本は『行旅病人、行旅死亡人法』という法律があるのだ。健康保険のない人でも行倒れた地区の行政が医療を提供し、亡くなった場合は葬式をしなければいけない。ーというもの。

 ホームレスが救急搬送されたら、受け入れた病院は地区の福祉課に電話をして医療券を送ってもらえればいいだけだ。

ドラマでは小池栄子さんが岡山弁で啖呵を切って(岡山弁だから余計嬉しい)ナンバーカードに保険証を一体化して国が管理をする。それだと、事情があって住所を設定できない人はどうなる?アメリカでは金持ちしか医療は受けられない。そんなアメリカの真似をしていいのか?ー要するにそんなことをいっていたような。

 

 17年前のある寒い夜。伝説のケースワーカーから電話があった。「今、〇〇記念病院に路上生活者が救急搬送されました。入院の必要はなく、すでに処置されていますから、迎えに行ってください。」

 直ぐに、車で迎えに行くと、病院の非常口の前にうずくまっているぼろ雑巾の塊のような老人がいた。まさか…?とは思ったけれど、受付に確かめたらその件のじいちゃんだった。医療処置はおろか、中にも入れてもらっていない。そのまま帰った救急隊員もどうかと思ったが、せめてバイタル計って異常がないかどうか確かめて、中のベンチにくらい寝かしてくれよ。野良犬だってこんなひどい扱いはしないだろ。いくら、汚いとはいえー。

 そのじいちゃんはぽたらかに連れて帰って、綺麗にして栄養のあるものをいっぱい食べさせて、大丈夫そうに見えたのだけれど。1カ月後に急死した。検死の結果末期癌だった。でも、呼べば誰かが直ぐに来てくれる。心配して入れ替わり立ち代わり声を掛ける仲間がいる。そんな日々が嬉しかったのだろう、満面の笑顔で冷たくなっていた。

 生活保護を受給しながら、酒とギャンブルにおぼれ、住民トラブルを起こす輩よりは、慎ましく路上で蹲っている人のほうが、私は愛おしくてたまらぬ。