年の暮れにうちへ来て、まだ1ヶ月。前にキリスト教会系の宿泊所にいて認知症が激しくなり、追い出された人。足腰が立たず、食事も口まで運んでやってもぼろぼろこぼす状態の人をそれはもう、献身的に尽くしていたうちのヘルパー、元河川敷の住人のHさんだった。
「お父ちゃん、お父ちゃん」と年齢もそう違わないHさんを夜も日もなく、呼んでは甘えている姿は微笑ましいものがあった。先日、ぽたらか改修中の仮住まいになる寮にそのじいちゃんを運んで、漏れなくHさんがセットで付いていって、たった二晩のことだった。「明日は風呂に入れてやんからね。鬚も剃んねえと。」と声を掛けて隣の部屋で寝たそうだ。
ところが、明け方になると大きな鼾が急に止まった。心配になってHさんが飛んでいくと呼吸が止まっている。慌てて、私と施設長に電話を入れ、二人が来る前に一生懸命、心臓マッサージを施していた。
救急車で都立病院に運ばれたKさんは蘇生もかなわず、8時20分に死亡が確認された。大変なのはそれからである。警察がやってきて、ねちねちと同じ事を聞くのである。まるで殺人でもしたかのようにである。木訥なHさんが思わず口よどんでしまうと、先ほどと言うことが違うと矛盾点を探し出そうとする。私が口を挟むと、「あんたには聞いていない!」私も「あんたにあんたと呼ばれる筋合いはない」と応酬した。Hさんはすっかり、疲れ果てて憔悴しきっている。
ホームヘルパーの宿命だからね。献身的に尽くしてるのに、真っ先に疑われるの。
心配なのは、今回のショックをきっかけにまたうつになり、失踪しないかということだった。