こんにちは。ふくしまこどもの学校給食を考える会 代表のあけみんです。
今回は、・・・・
福島県の学校給食に使用されている地場産物の活用状況の調査結果から、オーガニック給食の実施に向けた方策を考察してみます。
今回の調査結果のソースはこちら
調査の目的は、
学校給食における地場産物の活用状況を把握す るとともに、今後の地場産物の活用の推進を図るための資料とすること
調査対象は
県内において完全給食を実施している52市町村(給食委託の7町村を除く)立小・中・特別 支援学校の単独調理場191施設、
共同調理場71施設及び県立学校18校
調査対象期間が、
第1回(前期) 令和3年6月14日(月)~18日(金)までの5日間
第2回(後期) 令和3年11月15日(月)~19日(金)までの5日間
調査方法
① 1日の給食に使う食材料について、1品目ごとに「1」としてカウントする。
② 地場産物とは、福島県内産のものとし(市町村産品+市町村産品以外の県産品)
ま た、同じ食材で地場産物とそれ以外とを使っている場合は、地場産物としてカウントす る(一部でも地場産物が使われていれば地場産物とする)。
③ 海産物についても、あくまで産地で判断し、水揚地は考慮しない。
④ 次に挙げる食品については製造した場所が福島県内であれば地場産物として判断する。
(豆腐、焼豆腐、油揚げ、凍り豆腐、納豆、きな粉等の豆製品、もやし及びこんにゃく等)
豆製品については、原材料がアメリカ産でも地元の豆腐屋や製造所で加工していれば地場産物としてカウンんとすることになります。。
結果
6月の食品類別地場産物活用率では、
県内産の食品類の活用率が高い順は、豆類、穀類、肉類、卵類の順で合計で42%でした。
このうち、市町村産の食材の活用率が高いものは、穀類と豆類、その他の野菜の順で、全体では19.8%でした。
11月の食品類別地場産物活用率では、
県内産の食品類の活用率が高い順は、穀類、果物類、豆類、その他の野菜類、肉類の順で全体で50%でした。
6月に比べて、11月の方が活用率は高い結果でした。特に、果実類が多く活用されていました。市町村産の食材の活用率が高いものは、穀類と豆類、その他の野菜類で全体では、24.9%でした。
こちらも、6月に比べて、11月の方が活用率は高い結果でした。
県のH Pによれば、「市場に流通する地場産物の種類が後期の方が多いため、前期より割合が上回っている。」とのことでした。
6月と11月の食品類別地場産物活用率の平均は、
県内産の食品類の活用率が高い順は、豆類、穀類、果物類、肉類、卵類、その他の野菜類の順で全体では46%でした。
県内産のうち市町村産の食材の活用率が高いものは、穀類、豆類、その他野菜類、いも類、緑黄色野菜で全体では、22.4%でした。
次に、地域別の活用状況を見ると、地場産物の活用状況が高い順に南会津、相双・いわき、会津・県立学校・県南・県中、県北の順で
(県立学校を除いて考えると)会津地方、相双・いわきの方が、中通り地方に比べ、活用率が高い状況だと言えます。
市町村産の食材として活用率でも、中通りに比べて、会津や浜通りの方が活用率が高い状況でした。
最後に、福島県内の地場産物活用率の推移を見ると、震災前の平成22年には36.1%だったのに、震災後の平成24年には18.3%にまで落ち込んでしまいました。(平成23年は東日本大震災のため調査未実施)
それが徐々に活用率を上げていき、令和4年には46%まで上昇して、震災前よりも地場産物(県内産の食材)の活用率が増えました。
考察
県のH Pによれば、活用率増加の主な要因として以下の4点があげられています。
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①栄養教諭等を中心に地場産物を取り入れた学校給食を活用して食育指導を推進していること から、地場産物の活用を意識した献立作成、関係機関との連携による学校給食施設における 地場産物活用の機会を増やす努力をしてきたため。
②継続的な地場産物活用のため、県内の学校給食施設において、県内産及び地域産の野菜を使 用する「ふくしま健康応援メニュー」を9月~3月に提供することとしたため。
③市町村や県の補助事業により、地域産品及び県産品が提供されたため。
④学校給食用食材の放射性物質検査と結果の公表をしているため。
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また、まとめとしては以下のような内容が示されていました。
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学校給食に地場産物を活用した食育指導をすることにより、地域の身近な食材を理解し、郷土 食や行事食などの食文化を知る機会となる。さらに、感謝の心と郷土愛をはぐくむとともに、食 に関する知識や食を選択する力を養うなどの、教育的効果が期待できる。 このような食育指導には地場産物の活用は重要であり、今後も放射性物質の検査等により学校給食の安全・安心を確保のうえ保護者の理解を得ながら、地場産物の活用が図られるよう関係機 関に働きかけを行うなど引き続き取組を推進する。
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さて、ここからがあけみん先生の考察となります。
まず、結果で活用率が最も高かった豆類ですが、この調査の方法では、
豆製品については、地元の豆腐屋や製造所で加工していれば原材料の産地にかかわらず地場産物としてカウントすることになっています。
なので、豆腐、焼豆腐、油揚げ、納豆などを地域の豆腐屋から仕入れている場合、原材料がアメリカ産の大豆であっても、地場産物としてカウントされてしまいます。豆類の活用率が高い理由はこうした要因からではないかとも推察できるわけです。・・・
大豆の自給率は、わずか6%。大豆は豆腐や納豆の他、みそにも加工される大切な食料です。大豆の自給率を増やして本当の意味での地場産物にしてほしいと思います。
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/daizu/attach/pdf/index-3.pdf
次に、活用率の高かった穀類は、米、大麦等、パン及び麺から構成されています。
学校給食用精米は、原則として、県内各市町村産水稲うるち玄米の1等米を使用しています。
給食が全て米飯だったら、穀類の活用状況は100%に近付くのですが、
週に2回程度主食がパンまたは麺が実施されるため、その分活用率が減ります。
穀類の活用率を上げるためには、米飯給食の実施回数を週に4回以上または、完全米飯給食にすべきではないでしょうか?
もしくは、パンや麺をお米から作るようにすれば活用率は上がります。
3番目に活用率の高かったのが果物類です。
福島といえば果物王国と言われるくらい、果物の美味しい地域です。
県内で取れる、新鮮な果物が取り入れられているのであれば良いことだと思います。
この調査では、新鮮な果物の他、果実缶詰、果実 ジュース、ジャム類等も地場産物の果物としてカウントして良いことになっています。
また、一部でも地場産物が使われていれば地場産物とカウントすることにもなっています。
極端な話、少しでも福島県産の果物を使って作られたジャムや果物などであれば福島県産としてカウントして良いことになります。
工業的な製品になると、こうしたからくりが生じてくることも考えられます。
実は、新鮮な果物を給食に提供するのは意外とハードルが高いのです。学校給食見学会でも、りんごを洗って、カットして、数えて・・・というのに手間をかけるよりも、りんごを使った冷凍ゼリーを買って、数えて出す方が効率が良いということを聞きました。(実際そうだと思いますが・・)
4・5番目に活用率が高かったのが肉類と卵類です。
これらは、県内産の割合は高いものの、市町村産別に見ると低くなることから、県内の限られた地域が産地となっているとが窺えます。
養鶏場や養豚場は県内にあっても、飼育されている鶏や豚に与えられる餌はどこからくるのでしょうか?
最後に、野菜類の活用状況についてです。
野菜はもう少し活用率が高くなると思いましたが・・意外に低いのだという感想を持ちました。
学校給食に携わっていたときには、地元JAや、地域の農家で構成される学校給食協力会から野菜を仕入れていました。
どうしても地元で手に入らない野菜は、地域の青果店にお願いして納品してもらうというシステムだったためか、
野菜の活用率はもう少し高かったように記憶しています。
野菜については、地元野菜を学校給食に活用するための仕組みを作ることが活用率向上の鍵になると思います。
また、給食の献立を考える栄養士が、地域の野菜の生育状況などを把握することも大切だと考えます。
さらに、地元で取れる野菜を美味しく食べるためのメニューの研究なども不可欠です。
私が尊敬する管理栄養士の先輩で、喜多方市熱塩加納町の学校給食の基礎を作った栄養教諭の先生は、
地域の生産者の方達と積極的に関わり、
時には給食に提供してもらう野菜を畑に行って収穫したり。
納品伝票の書き方を農家の方に教えたりと・・・地場産物の活用のシステムを構築してきました。
先輩たちが蓄積してきたノウハウを、
現在学校給食に関わっている、教育委員会の方、栄養士・調理員さんたちが参考にして、
それぞれの地域の給食を質の高いものにして行ってくれれば嬉しく思います。
福島県の学校給食に使用されている地場産物の活用状況の調査結果より感じたことを綴ってみました。
以上を踏まえて、私が提案したいことは以下の五つです。
1、主食は米を使用しよう!
小麦を原料とするパンや麺の回数を減らし米飯の回数を増やす。
もしくは米を活用したパンや麺を開発する。
2、県内産の大豆を育てよう!
豆腐・納豆・味噌の原料である大豆の自給率を高め、
真の意味での活用率を向上させる。
3、工業的な加工品でなく、新鮮な果物を給食に!
砂糖や添加物が入っている(かもしれない)製品を安易に使わず
新鮮な果物を提供しよう
4、主菜には多様なタンパク源を!
主菜には動物性のタンパク質だけでなく、植物性のタンパク質も積極的に活用しよう
5、地元野菜を購入するための仕組みを構築しよう!
地元農家と連携を図り給食用野菜を確保するための仕組みづくりを
積極的に行いましょう!
私も微力ながら、ブログでの情報発信、映画の上映会の企画、学校給食の調査研修などを通して、福島の子どもたちの給食がより良いものになるよう活動していきたいと考えています。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
以下 参考資料