今の「郵政民営化見直し構想」ってどんなもの? | 世界一やさしい「郵政民営化」のお話

世界一やさしい「郵政民営化」のお話

小泉旋風では「賛成!」。民主党旋風では「全面見直し、凍結」。

でも、本当はどっちなの? それともどっちでもいいの?

今イチわかりにくい「郵政民営化」見直し議論。 今だからこそ、ぐっと分かりやすく解説してみたいと思います。

こんにちは。
今日も郵政民営化見直しについて考えていきたいと思います。

今日のテーマは、「鳩山政権の郵政民営化見直し構想ってどんなもの?」

この秋に見直し法案が提出されるようですが、その構想について、
少し理解を深めていきたいと思います。

まずは、その前に、もともとの郵政民営化の構想がどういうものだったのかをおさらいしましょう。

これまでの郵政民営化の肝は、基本的には2つです。

1.郵政3事業を4分割して、分社化したこと。

 郵貯、簡保、郵便に加えて、それらのサービスを顧客に提供する拠点としての郵便局は、
 これまですべて同じ「郵政公社」の事業として一体経営されてきたけど、
 これからは、以下の4つの会社に分けましょう、という話です。

 1)郵便事業会社(手紙や小包を配達したり集荷したりする、クロネコヤマト的な事業)
 2)かんぽ生命(保険商品を作って販売する 第一生命的な事業)
 3)ゆうちょ銀行 (普通預金や定期預金を預かって、それを運用する、いわゆる銀行業)
 4)郵便局会社(沢山のお店(=郵便局)をもって、上記3つのサービスに加えて、それ以外の独自の商品サービスを他の会社からも仕入れたりして、『販売代理店』として顧客に提供する、小売事業)

 なぜ3つ一体じゃなくて、4分割になったかというと、、、
 そこには深いワケがあります。

 
ひとつには、夫々全く異なるタイプの事業なので、経営責任を明確にして動き易くしたほうがいいんじゃないか、ということ。

でももうひとつ、こちらのほうが重要なのですが。
ほんとに民営化して「民間企業と同じ土俵で公平に戦わせる」ためには、分社化するしかない、という背景があったのです。

実は日本で普通に銀行や保険会社をやるためには、免許がいるわけですけれど、その免許を受けると、「銀行法」「保険業法」という法律に従わなければなりません。
そして実は、それらの法律には、銀行や保険会社の「兼業を禁止」する規定があるのです。

人様のお金を預かって運用するという、国民生活に大きく影響する大事な機能ですから、
自由に他の事業をやらせて経営が不安定になってはまずい、という精神です。

つまり、民間の金融機関になったら、その経営者は郵便事業や小売事業をやっちゃいけないんですね。

もちろん、「郵政の場合は例外だよー」という新しい法律を作れば、この問題は解決しますが、
「それじゃあ、フェアに民間と競争してるとはいえないだろ、、、」という話になるわけです。

民営化=民にできることは民に=すべての競争はフェアに行わせる

という考え方からすると、そりゃ違うね、という方向になったわけですね。

2.もう1つの大きなポイントは、「株式を上場させる」ということを決めたことです。

今の郵政グループは、郵政公社から「日本郵政株式会社」になり、
漸く普通の「会社」になりました。原則として民間と同じ、会社法の適用がされる会社なわけです。

でも、株式の保有は100%政府です。上場はされていません。
ですから、正確にはまだ郵政は「民営化」などされていない訳です。

これまでの民営化構想では、2010年までに、ゆうちょ、簡保については上場し、3分の1を残して市場で売却する、ということを目指していました。


目指したのは、普通の株式会社と同じように、

経営者が「株主」に経営の中身をちゃんと説明すること
そして株主がちゃんとその内容をチェックし、評価する体制にして、
だめなら経営者もすげ替える力をもつ、
そういうプレッシャーを経営者が常に市場からうけるような形にしておくこと


です。

上場すると、株主は私たちでも、お金を出せばなれます。もちろん、3分の1は政府保有が残るわけですから(これは今のNTTもそうですけれど)、全く政府の影響力がなくなる訳ではありません。
ただ、残りは誰が株主になるかはコントロールができません。

残りの株は、他の企業にも投資している人々が保有し、「本当にこの企業の収益性は高いのか、将来性はあるのか」、という観点で、厳しく経営のチェックをしますから、当然「なあなあ」な経営をしたり、単にこれまでの既得権益を守っていくことは、ぐっと難しくなります。。

一番分かり易いのは株価です。
みんなが「ああ、この企業やばいな」と思えば、市場に売りがでて株価が下がりますから、そういう意味でも、日々経営に対する評価が「見える化」されますね。



こういう経営に対するチェック機能、健全なプレッシャーを与える機能を、「ガバナンス」と言います。

つまり、株式を上場させるということは、

郵政に対してこれまでクローズな世界で「官」や「政府」が行って来た「ガバナンス」を、
だれでも参加できて、かつ「ガラス張り」である、民や市場の「ガバナンス」に移行させること

を意味します。


さて、では今の鳩山政権の郵政民営化見直し構想はどんなものかというと、、、、

1.4分社化はやめて3事業一体に戻す(亀山案)
       または
  郵貯と簡保は別会社にして、残った郵便と郵便局会社をくっつける(金融以外は一体経営)


2.株式上場は凍結。

ということのようです。


まず、
1.について。

3事業一体にするという案は、亀山氏の悲願のようです。これを一体にしたい、という背景にあるのは、「自立していくことが難しい郵便局をすべて守るのだ」という考えのように思います。

今の4社体制での郵便局会社の収益の殆どは郵貯、簡保、郵便からの手数料収入です。
別会社として手数料収入を得る、というモデルだと、郵貯や簡保、郵便から取引を切られたら、自力で収入を稼がないといけない、それは厳しいだろう、という考えですね。

特に、採算性の悪い地方切りが行われるのではないか、という懸念をもたれているようです。

実際、3事業一体にすると、郵便局だけの独立でみたときの採算というのは明確に見えにくくなりますから、そういう議論はなくなる可能性が高いですね。

ただ、この3事業一体型にする限り、先ほど申し上げたとおり、銀行法や保険業法の壁がありますから、「民営化」すると、いろいろな問題が発生します。フェアじゃない、という奴ですね。
結論として郵政は完全に国営に戻す、という形に近いものになる可能性が高まっていくと思います。

鳩山政権のもう1つの案は、この現状を理解して、じゃあ、保険と銀行だけは別会社にして、郵便と郵便局会社を統合しよう、という案です。

ただ実はこの案も、「帯に短したすきに長し」というところではないかと思います。

なぜなら、

郵政グループの中で一番利益貢献をしているのは、やはり金融事業であって、「郵便」とだけ一緒にしたところで、それほど経営が「安定」する訳ではないからです。

もし本当に「ゆうちょ銀行やかんぽ保険が地方切りするんじゃないか」という懸念があるなら、それは同じように残ります。

その割には、従業員人数でみると、郵便と郵便局会社を合わせると、郵政グループ全体の9割以上の人員になりますから、「それって分割っていうの?」という感じになります。

しかも、郵便事業は「物流会社(クロネコヤマト)」的な会社、郵便局は「窓口」をもっている「金融も扱えるマルチな小売窓口」的な会社、という本質を考えると、実はあまり一緒にいてシナジーがあるかというとそうでもありません。。。

ですから、この案ですと、4分社化したときに「問題だー」と言われていた論点は、あんまり解決しないようにも思えます。


ただ、これらの議論の本質を理解する上で、一番重要なのは、

『本当に「地方切り」はそんなに懸念として大きいの?』

というところなのだと思います。



なぜなら、私が郵貯や保険の経営者だったら、ものすごい過疎の郵便局でこれまでゆうちょや簡保を提供してきたけど、「採算が悪いから全部ストップ」という決断をするかというと、おそらくしないだろうな、と思うからです。


これは、郵貯やかんぽ生命と「郵便局会社」との間の手数料がどのように決められているかを、しっかり精査すれば分かることだと思うのですが、おそらく、「いくら預金を集めてくらたから、いくら手数料を払うね」という体系になっているハズです。
(もちろん固定+実績ベースの変動になっていると思いますが)

郵貯や簡保からしてみたら、沢山集めてくれないところにはあまり手数料を払わない、という体系になっているわけですから、過疎の村の郵便局と取引していても、それほどリスクはないハズですよね。

かえって、絶対に郵便局じゃないとリーチすることができないお客さんに、リーチができているわけですから、(他に銀行や保険会社がいない)過疎の村だからこそ郵便局に頼みたいのではないでしょうか。

むしろ本質は、「郵便局会社自体の経営」のあり方なのでしょう。

郵便や郵貯や簡保からの手数料だけでは、経営が成り立たないという状況になってしまったときに、
どうやって利益の出る体質にするのか。

ここで、現存の郵便局をなんとか維持しながら、利益の出る体質にできないか。
もっと効率化できないのか。
もっと新しい商品やサービスを販売して、収入の幅を増やせないのか。
もし難しいなら、全体の民営化を見直すのではなく、例えば、そういう過疎の郵便局に限り、一定の条件で国や地方自治体から援助金が出たりするようにできないのか。



ここをあきらめるのか、あきらめないのか、その経営の手腕にたいする自信があるかないかで、
この議論の行く末が決まるような気がします。




2.もう1つの鳩山政権の見直しのポイントは、「上場凍結」です。

上場を凍結すると何がおきるのかは、過去の記事にも乗せましたが、
要するに「民」のガバナンスはあきらめて、「官」のガバナンスに戻す、ということですね。

これは、霞ヶ関に依存しない政治主導の改革をするのだ、、、国民の視点で日本をかえていくのだ!
という鳩山路線とは、ちょっと逆行するような気もします。


上場するかしないかも、私たち一人一人が、郵政という巨大組織の経営をチェックしていける形にしたいのか、それとも、「もうすべて国にお任せ」でいいのか、という決断なのだろうと思います。



もしご興味のある方は、9月の記事「3事業一体ってそんなに重要なの?」「ホントに株式上場凍結すると何がおきるの?」もよかったらご参照ください(笑)


そのあたりは、今一度議論すべきポイントなんだろうと思いますね。



次回は、「郵政見直し議論が勃発した結果、今何がおきているの?」について
お話してみたいと思います。

お楽しみに。

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