「よおし、来た来た。
俺は歌うぞ。お姉さん、お姉さん。
トンコ節を頼むよ。踊り? いいよ、いいよ、そんなもの。
俺たちにゃ、分かんねえからさ。
お三味、お三味線を頼んます」
「よし、お姉さん。ぼくは分かるよ、分かりますよ。
踊りましょ、ね、踊りましょ。
無粋な奴は放っといて踊りましょ。
何てたって、ワルツです。
芸者ワルツだよ。ね、一緒に踊りましょ」
戸惑う芸者に対し、三味線の調律を終えたお婆が声を掛けた。
「お姉さん方、こちらは若手の官吏様たちですよ。さぁさ、楽しくいきましょう」
「お姉さん方、こちらは若手の官吏様たちですよ。さぁさ、楽しくいきましょう」
盛り上がる二人に対し、正三は唯々杯を空にした。
いつの間にか女将が消えて、色香を漂わせる芸者が相対していた。
「未来の次官さま、あたしにも頂かせてくださいな」
正三の隣に席を替えると、正三の手から杯を盗み取った。
「未来の次官さま、あたしにも頂かせてくださいな」
正三の隣に席を替えると、正三の手から杯を盗み取った。
“さあ、、”と言わんばかりに、正三の肩にしなだれかかった。
ほろ酔状態にある正三は、科を作るその芸者に、
「おーい、きみに分かるか? ぼくわね、小夜子さんが好きなんだよ。
ほろ酔状態にある正三は、科を作るその芸者に、
「おーい、きみに分かるか? ぼくわね、小夜子さんが好きなんだよ。
だから僕の肩にもたれかられるのは、はなはだ不快だ」
と、険を見せた。
「正三さん、わたし、小夜子よ。今夜だけは、小夜子なのよ」
芸者はそんな正三に、まるで動ぜずだった。