長編恋愛小説 水たまりの中の青空 ~第一章~(五十) | toshichanのブログ

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【遅れてきた新人】の、内山敏洋 と申します。 蔵の中に溢れかえっている作品や頭の中に湧き出てくる作品を“どんどんと!”と、考えております。

(五十)

「どうしました? 坂田さん。なにか問題でも?」
舞台の袖から、女性の声がした。
慌てて「いえ、問題はありません。ちょっとこの小娘に、説教をしてただけで」と、小夜子を椅子から立たせた。

「ちょっと、待って。彼が、“待ちなさい”って言ってます」
傍らの外人と話をしながら、小夜子をその場に留め置くよう伝えた。
「ちえっ! また、あの女が!」

舌打ちしながら、坂田は小夜子の腕を掴み続けている。
「放してください、痛いです」
「あ、あゝ。ちょっと、ここに居て」と、小夜子から離れて二人の元に駆け寄った。

どうやら通訳をしているようだった。
外人からの言葉に対して、坂田が中々納得せずにいるようだ。
次第に外人の声が荒くなり、坂田に詰め寄る風に見えた。

女性通訳と坂田との会話はステージの袖でのことで、小夜子には聞こえない。
しかし三人が小夜子を見ている。
突然坂田が小夜子を手招きした。

不安な思いで立ち上がった小夜子に、外人がその場に居るようにとでも言うように、手を上げ下げしている。
“なによ、なんなのよ。こっちに来いだの、座れだの”
怪訝な面持ちをしている小夜子に、またしても神経を逆撫でする声が聞こえた。

「スランラップ!」
小夜子の耳には、罵声にしか聞こえなかった。
“なによ、日本語で言ってよね。アメリカ人だからって、威張らないでよね”

「スランラップ! オノデステキ!」
“なによ、このアメリカ人。何言ってるのよ。
いい加減にしてよね。怒るわよ、いくら温厚なあたしでも”

「へェイ!」
“まっ、失礼な。どういうつもり、一体。おならだなんて! もう我慢の緒が切れたわ”
勢いよく、スッくと立ち上がった。