パティーはとても古い建物で行われた。

油を引いた床には、アンティークのテーブルが並ぶ。

2階のその部屋には階下から直接登れるよう、部屋の東の壁寄りには階段が付いていて、上り口の開口部とその周囲には、床材と同じ様な色調の手摺が付けられていた。

ゲストたちは一階にある仮設の受付に寄り、記帳を済ませてこの会談でパーティースペースであるこの部屋に上がる形になっていた。

パーティーの始まる前、カナッペとシャンパンが振る舞われ、ゲストたちはそれぞれに知った顔をを見つけては挨拶を交わしていた。

やがて、決められた時間になり、パーティーが始まった。


主催者が挨拶をし

主賓がつまらない話を続ける

大体、来たのは良いが、このパーティーの目的も趣旨も僕は知らない。

隣にいる、そう40を超えた僕より少しだけ年上の女性に連れられて来ただけだからだ。

それにも関わらず会場には結構知った顔が多く、それはそれで十分に僕を閉口させた。


綺麗ごと以外に聞こえない挨拶は、想定の時間を大幅に超えて続く。

僕は、彼女の顔を覗き込んで

「つまらない」と表情で伝えた

彼女も、その意見に痛く同感だったようで、微笑んでいた。


ようやく、長い挨拶が終わり、歓談のお時間というやつになった。

大体歓談したい相手なんてものは、パーティーでは決まって居るはずがない。

時間つぶしにしかたなく歓談というのが、僕がパーティーというものを好まない最大の理由だ。


今度は、声に出して言った。「ねえ たまらなく居心地が悪いんだけど」

そ言うと彼女は、「わかったわ 10分我慢して」

とだけ言うと、僕の傍らから離れて、今夜のホストと主賓のいる一角へと歩いて行った。

僕は、開いた窓から外を見た。

何のことは無い、住宅地の景色が広がるだけだった。


ため息交じりにまた部屋の中に視線を戻すと、満面の笑みで接する彼女が見えた。

ため息が出そうな僕は1階に降りた。


受付は既に大方のゲストを迎えたのか静かだった。

僕は受付に居た女性に向かい

「退屈極まりないのだけど」と言った。

30前の綺麗な女性は「そうなんですか?」といい微笑んだ。

僕は深く頷いた。


入り口を出て、車停めのスロープを下り、駐車スペースを横切る、なんともいただけないファッサードの様な出入口があった。

その外は道路だ。

細いその道路を3分ほど歩くと車の通る道に出た。

僕は一台のタクシーを拾い運転手に恵比寿駅と行先を告げた。

エアコンと呼ぶよりクーラーと呼んだ方がそれらしいタクシー独特の空気がそこにあった。

10分もかからず車は恵比寿の駅に着いた。

運転手に駅前から外れた道を示し、その坂道を上がりガーデンプレイスに向かう途中で僕はタクシーを降りた。

そこからほど近いところに、簡単なイタリアンを食べさせるバールの様な店があり、僕はそこに入った。

なじみの店員が迎えてくれて、僕はうなぎの寝床の様な細長い店の奥のテーブルに通された。

店は入り口近くは多くの若い男女で混んでいたが、奥のスペースは静かだった。


携帯に彼女か着信が3件残っていた。

無視した

そして、スプマンテをオーダーし、飲もうと思った時にメールが来た。

[どこに 居るの?]


と書いてあった。


僕は返信に [少なくともその場所には既に居ないよ 再開する必要はあるかな?]

と書き送った。


アンティパストミストがテーブルにやってきた 1人分には微妙に多かった

「これ 多くない?」

と聞くと

「ケンさんが、どうせ誰か来るからと言ってました。」

ケンさんとはこの店の主人だ。


「ま いいや」


そう言って僕は パーティー会場よりも安くて冷たくて美味しい スプマンテを飲んだ。




molt posso 追従できない放物線の裏側へ