電話の受話器と言うのは結構重いと感じるのは長電話の最後の方。

ケンタの奴からメッセージを聞いて僕が懐かしい有美の家の電話番号に連絡をしたの帰宅して直ぐだった。

1980年代初め、未だ未だ携帯電話は普及していない時代の物語である。


最初の電話をした時彼女は留守だった。

彼女の母親に伝言をして、あらためてかけ直すことにした。

晩飯をガッツリ食った頃に、有美から電話があった。


久しぶりの電話はとてもあっさりとした会話で始まった。

「有美 会いたいなら ケンタなんかに連絡しなくても 直接電話でもくれればよかったじゃん そう今日みたいに」

「ごめん 出来なかった 帰国して2週間以上も経っていたのに それでもできなかったんだよね」

僕がストレートに発した言葉に帰ってきた言葉は意外だった。

なぜ という疑問が泡のようにように沸き起こった。

でも、その時 僕はこの「なぜ」を聞いてはいけないそんな直感に襲われた。

だからこそ、少し言葉を選ぼうとした、そうしたら今度は言葉が出ない。

沈黙は不自な気まずさを生む

「とにかく有美の元気な顔を見たいから 会おうよ」

「元気な顔かな・・・」

有美に対する 「なぜ」は今は禁句だと さらに感じた


「元気でも 元気じゃなくても 顔が見たい 会おう」

「会いたい」

有美がそう言った。

「明日、バイト休みなんで6時なら大丈夫だけで有美は」

「大丈夫」

「じゃ、地元で あの店がいい ライム」

「ライムか 懐かしいね」

僕には懐かしいと言う感覚は正直無い いきつけの店だ

「ケンタどうしよう」

僕が言うと

「伝言頼んだ手前もあるしね、ケンタには私から連絡してみる」

「それがいいね」

とその日の電話は明日の約束をして終わった。


ベッドに寝そべって考えた 有美は何処か変だと

でもそれは、どんな詮索をしてもわからない事だと感じた

なぜなら、その原因は少なくても2年前 僕らが離れてから今日電話で話す間での間の出来事に起因する。

だとしたら、僕の考えは 休むにたらずだろう。

そんな、時に電話が鳴った。

ケンタからだった。

「会いたくないんじゃなかったのかよ」

いきなりケンタが言い出した。

「会いたくないさ 少なくてもお前の段取りではな」

「ま いいや お前が素直になることは地球が滅亡しても無いだろうからな」

どうやら、有美から電話をもらってかけてきた様だ。


「ところで本題だ 明日は俺バイトで抜けれないから 申し訳ないけれど行けない」

僕は有美がどんな話し方をしたかが気になった。

ケンタは、友達関係の事となればバイトなんてどうにでもする奴だ。

そのケンタがバイトを口実に来ないとは不自然だった。

「ケンタ お前いつからそんなに労働意欲をもったんだよ。」

「うるせい つべこべ言うな 明日はダメなんだよ」

「ほ~ 珍しいな 」

「そうだ 珍しいのだ」

かぜかバカボンのパパの口真似でケンタはおどけた・

「ケンタ 有美何かあったのか」

少し間を空けてケンタが答えた

「俺も正直 そこがとても気になっていた だいたい彼だったお前に会いたいと 俺に言ってきた時点で不自然すぎるだろ それに 何度か電話で話したが どうも変なんだ 有美」


「何か知ってるのか」

「俺は知らないし 知るならお前が先に知るべきだろう だから・・・」

「だからなんだよ」

「明日は行かない」


僕には変なケンタの気の回し方が正直ありがたかった。


「用件はそれだけだ 明日は ゴメン よろしくたのむ」

そう言ってケンタは電話を切った。


翌日、授業は午後から2時限だったけれど、 ケンタとは履修の関係で会わなかった。

学食にも、カフェにもケンタの姿は無かった。

学校帰りに、地元の駅に着いたのは丁度6時10分前だった。

改札を抜けて、ロータリーを渡った場所のライムの入るビルがある。

独立した階段を上ると入り口には黒板のメニューと、内部照明で光るペンギンが立っていた。


店は、この頃流行った『カフェバー』という種類の店で古都と呼ばれるこの街には珍しい店だった。


全体的には、重厚な木を使ったクラシカルな作りで、オイルをひいた床にウエストラインまで板張りの内装。

その上が、漆喰の様な壁だった。

チーク材の大きなラウンド・テーブルが店のセンターにあり、同じフロアにそれを囲むように4名掛けの角テーブル、一段落ちた窓へと続くフロアには同じ4名掛けの丸テーブルのセットが並んでいた。

料理はスペイン料理とイタリアンを中心に、酒は通常のバーメニューは何でもあった。


この店のオーナーは30代後半の女性で、僕らは何かと迷惑をかけていたが、何故か我侭を聞いてくれる店だった。


窓側のテーブルについて、ジントニックを頼んだ。

一口飲んで、テーブルのナッツを摘もうとした時 2年ぶりの有美が店に入ってきた。

オーナーに短い挨拶をしたのか、少しして席に来た。

笑顔は昔のままだった。



写真は無関係ですなんとなくお気に入りの写真を・・・・・・



molt posso 追従できない放物線の裏側へ