夜が始まったばかりの時間帯だった。

仕事が少しだけ予定したものよりも早く終わり、僕は車でオフィスを出た。

山下町から、高島町を経て三ツ沢公園に坂を上った。

夕刻のラッシュの名残かもしれない、横浜駅周辺には少し渋滞があった。

三ツ沢から新横浜のそのホテルまで15分程度で到着した。

ホテルに隣接するショッピングセンターの駐車場がホテルと兼用になっている。

僕はゆっくりと、そのショッピングセンターの駐車場へと通じる道に車を入れた。

建物の合間からホテルのタワーが見えた。

かなりの、高層建築でその形はそのまま円柱の形をしている。

円柱総てに段差が無く、ガラス窓が一面に張り巡らされた様は、未来の建物を意識させる。

シンガポールにも同じ様な超高層層のホテルがあるのだけれど、そちらは外壁にラナイが付帯している分だけ生活観が感じられるが、このホテルにはそれが無く、ホテルというよりは何処か企業の建物の様に感じられた。

空いているスペースは、多層階のパーキングの建物の上階近くに見つかった。

エンジンを停めて車を降りた。

ホテル入り口という白地に青の看板には、そのホテルチェーン特有のロゴマークが描かれていた。

僕はエレベーターでフロントのあるフロアに降りてチェックインを済ませた。

部屋は20階に用意されていた。

今度は客室用のエレベーターホールへと歩きエレベーターで20階に上がった。

廊下は円柱の内側に丸く回廊の様に一周しており、内側もガラス張りで円の中心はロビーフロアまで吹き抜けている。半周する手前に予約した部屋はあった。

ドアを開けると、入り口の空間は狭く放射状に窓に向って広くなっている。

手前側にバスルームとクローゼットが配置され、窓に近い側にダブルサイズのベッドと小さなテーブルとソファーのセットが置かれているシンプルな部屋だった。

窓から見える西の空が少し明るく、眼下の夜景は未だ物足りない灯りかたをしていた。

もう少し時間が遅くなれば、ベイブリッジや横浜 港みらい地区の明かりが華やかにこぼれだすだろうと思った。


僕は携帯のメールで今夜、会う約束をした侑子にメールを入れた。

彼女とは仕事で海外に行っている時に知り合い、帰国してから僕が彼女の住む名古屋を訪ねたのをきっかけに親しくなった、30歳を越えたばかりの美しい女性だった。



molt posso 追従できない放物線の裏側へ