貝灰漆喰ができまるで | ザファンハウスオーナー様担当。日本一の若手職人育成企業を目指すコテ山のブログ

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株式会社バウビオジャパンの山川です。 建てていただいたお客様と社員と生涯のお付き合いをどうやって達成するか日々真剣に考えています。

皆様おはようございます!


念願の念願の貝灰漆喰の製造に立ち合わせていただきました。

過去2度お願いしてようやく承諾をいただきました(;゚∀゚︎)

まさに三顧の礼ですね。

大切に保存させていただきます。



場所は柳川市の有明海のほとり。



Googleマップで探してみると中々楽しいのです(・∀︎・)

柳川市にこういうところがあるのは本当に誇りに思えます。私は新しいものを開発するより、そこの地域に根ざした産業や文化を残し続ける事の方に興味が湧きます。

昔からある材料は本当に理に適っていて、それを使いこなせる職人がいなくなってきているだけ。職人がいなくなるから簡単に素人でも塗れる材料を開発する…本末転倒な話です。


私たちはそこに真正面から向き合います。職人の育成は社の利益のみならず、次の世代になってもお客様の家づくりを守り続ける事になり、そして地域の建築、産業を守るという担いをうけます。

その為に建築工事を受注し現場で人を育てるのです。

特に家は人間にとって巣であり、家づくりに携わることは人間の命を守るという尊い仕事だと思っています。

職人=お客様=地域、環境、文化、産業

それぞれがそれぞれに利益を生み出す関係の善循環の中心にザファンハウスの家づくりがあるのです。

ですからザファンハウスのオーナーになるということはそれだけ将来のこの地域の建築を守る職人育成文化や産業を守る事に貢献したという事になります。

その実際の成果、実をはかる意味で技能五輪への挑戦があります。

実際にそこで全国大会に入賞できました。

この成果はオーナー様の皆様の成果でもあります。

本当に応援ありがとうございました。


さて…今回は長くなりそうです(;゚∀゚︎)


有明海で採れた赤貝の殻が貝灰漆喰の原料です。



あくまで私の考えです。

材料を選ぶ基準として

その①これまで50年100年あるものはこの先50年100年残ります。また残さなければならない貴重な文化だと思います。だから新しいものより元々あるものをいかに知恵を出して、技術を尽くして魅力あるものとして皆様に見てもらえるのかが職人の役割と言えます。


その②漆喰は世界にあります。その主成分は化学式で言うところの水酸化カルシウムなのではっきりいってどこの漆喰だろうが成分、効能などは大して変わりません。であれば可能な限り輸送コストを抑えたそこの地域に近い材料の方が良いように思います。

輸出したりすると関税がかかります、遠くから持ってくれば輸送コストもかかります。また輸出、輸入の手続きをする商社、問屋、販売店などコストだらけです。貝灰漆喰はとりにいっても10分程度。私の時給に換算しても150円くらいしかかかりません。



その③石灰か貝灰か、共に自然素材です。ではどちらが良いというか好みなのか?というと石灰は田川市で取れてるし…その②の話も大差なさそう。で、私の判断基準として山を削るか、産まれてくる材料を廃棄するものを原料にするのかと言うところも一つの判断基準にしました。もちろん石灰ももともとは貝などの化石が原料なので成分的にも大差ありません。しかしよりサスティナブル、持続可能な取り組みだと考えると貝灰の方に私の中で軍配が上がりました。

今回の出来上がったものを改めて見る中で気づいた事は、同じセメント袋に詰めた場合、石灰なら20kg〜25kgあるのに貝灰だと8kg程度の質量しかありません。化学式は同じ水酸化カルシウムですが、その結合の粒子の細かさでいうと石灰の方が細かいわけです。ですから細かい仕上げを考えれば石灰を、強度を出すなら貝灰をという事になりそうです。

家づくりにおいてそこまで細かい仕上げが求められないのであれば、より強度の出る貝灰の方が私は良いと思いました。

ひょっとしたら、田川に住んでたら違う考えかもしれません(。-人-。) 

一流の左官職人になると漆喰を自分でつくる際、石灰を主にして強度を出す為に貝灰をブレンドするそうです。

事実、毎年1月、7月に住宅点検でまわりますが木とのキワや入り隅などで木の収縮によりたまに補修が出ますが、一度も大きな面でのクラックなど出ていません。

まあ、きちんと下地の大工工事から管理されているのもあるかもしれませんが(・∀︎・)


話は次へ…

もちろん赤貝だけで燃えるわけではないのでコークス(石炭を蒸し焼きにしたもの)と一緒に混ぜながら焼いていきます。



このコークスも大きなものを使えば鉄を溶かすほどの高温になります。しかしそれでは炉がもたなかったりしますから絶妙な1000度から1300度くらいの温度をキープする為に細かい粒を使います。



この粒が大きすぎても小さ過ぎでもいけないそうです。

ベルトコンベアに混ぜ合わさった貝殻とコークスが炉に運ばれます。



バランス良く適量を入れないと上手く焼けずカスが沢山出てしまうそうです。



さあ、始まります。



見た感じ半々というとこですかね。

どんどん積み上げられ



この状態まで。

この体積は下の方から焼いていくうちに潰れていき次の日の朝には沈んでしまうそうです。


そして色んな話をしましたが、中でも印象的だったのが



山川さん、毎回反省ですよ。

毎回毎回うまくできたと思った事はないです。


職人ですね。

ひとつの道で今より、より良く常に改善を続ける姿勢。よりこの材料に惚れ込んでしまいました。

私も社員に職人であれば常に不安であれ。慢心になった時点で職人として終わってしまう。それは単なる労働者だ。と常々話します。単なる労働者が悪いというわけでなく私たちは職人として生きていく事を決めている人間だからそういう考え方を持ちなさいという事です。


ここで何故貝や石灰を焼くのか?なのですが


炭酸カルシウムCaCO3を高温で焼く事によりCO2と分解して生貝灰CaOとなります。




そしてさらにその生貝灰CaOに水H2Oを加えて、消貝灰Ca(OH)2となる、これが漆喰の原料になります。石灰でいうところの消石灰ですね。



炭酸カルシウム自体は貝殻や石灰石で見られるように水に溶けません。なので一度焼いて、また水をかけて消化して消石灰にする必要があるのです。



粉に水をかけるとまたよりきめ細かい粉になる。

頭で分かっていても目で見れば理解できません、昔の人はすごい発見をしたものです。そしてこの時熱を放ちながらじっくり分解していきます。触ってみたら表面で40度くらい。中はもっと熱くなっているかもしれません。


この時ものすごい水蒸気を発します。



これは街中では絶対できないですね(;゚∀゚︎)

大変な仕事です。



そしてようやくできた貝灰は製造工場に運ばれて次の工程に向かいます。



そして製造すれば必ず出る燃えカス。

これで商品や現場で何かできないか?と依頼をいただきましたので2022年の楽しみがまた増えました。光栄至極でございます。


できた貝灰は同じ柳川市大和町の製造工場に運ばれ加工されます。

加工って言っても銀杏草という海藻を煮出し



それを濾して



貝灰に混ぜていきます。



この海藻ノリはコテ滑りを良くしたり、水保ちを良くして塗りやすくする為です。


そしてそれに麻の繊維を混ぜ込み



攪拌して袋詰め。



そしてようやく



貝灰漆喰ができるわけです。



そしてその貝灰漆喰は職人の手により



魅力的な材料として皆様のご自宅の壁に塗られているわけです。

そしてまた二酸化炭素を吸収しながらもとの炭酸カルシウムに戻っていくというところもまた良いところですね。

廃棄は土に戻せば問題ないし環境にも十二分に配慮されています。


この良さを誰かが伝えないと次の世代に残っていきません。

材料の良さを伝えて、もっともっとこの材料が潜在的に持つ魅力を引き出していきたいと思います。


それが私の役割だと確信しています。


長々とありがとうございました。

今年最後のブログになるかもしれないのでしっかり取材して皆様にきちんと伝えたかったのです。


皆様にとって残りわずかですが、今年一年が素晴らしい年になりますように(。-人-。) 


2021年本当にありがとうございました。

皆様のおかげで素敵な一年になりました。


感謝