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 政府は防衛力の強化に向け、従来の防衛費に加え、防衛に役立つ研究開発費や公共インフラ(社会基盤)整備費、海上保安庁予算などを一括で計上する予算の枠組み「総合的な防衛体制の強化に資する経費」(総合防衛費)を創設する方針を固めた。

 複数の政府関係者が明らかにした。国家安全保障局(NSS)を中心に、省庁横断で防衛関連の予算を確保する狙いがある。政府は5年間で、総合防衛費を対国内総生産(GDP)比で2%以上の水準まで引き上げたい考えだ。

 研究開発費を巡り、政府の科学技術関係予算は年間4兆円を超えるが、5割近くは文部科学省予算で、防衛省分は約4%にとどまっている。新たな仕組みでは、防衛省や、国の科学技術研究の方向性を決める「総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)」の事務局などを含めた関係府省会議を作り、防衛上の「重要技術課題」と必要な「目標額」を定める。その上で防衛関連の研究開発費を総合防衛費に計上する。

 公共インフラ整備でも、防衛省や国土交通省などの関係府省会議を設置する。自衛隊と海上保安庁の要望を踏まえ、緊急時の部隊展開や住民の避難に不可欠な「特定重要拠点空港・港湾(仮称)」の整備や運用の方針を決める。必要な予算は、国全体の公共インフラ整備費の「特定枠」とし、総合防衛費に含める。

 整備の優先対象となるのは、台湾有事の際、大きな影響が想定される南西諸島の施設だ。南西諸島では、戦闘機が離着陸できる長さの滑走路を持つ一般空港は現在、沖縄本島の那覇空港と沖縄県宮古島市の下地島空港しかない。