★1953年萬代屋ジャガーXK-120 五十嵐平達氏 ~ ブリキ自動車コレクションから 209 | ポルシェ356Aカレラ

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車名当てクイズ
今回の記事を作るに当ってポピュラ・オートモビル1952年1月創刊号(画像左)と1952年3月第2号(画像右)を引っ張り出したのですが、恥ずかしながら、この2冊の表紙となっているクルマの車名が判らないことに気付きました。日本車やポルシェならある程度までは判りますが、欧州車やアメ車はどうも判りません。


目次や奥付に車名の記載はなく、表紙に創刊号は「ヴォックスホール発表」、第2号は「アルファロメオの全貌」と特集記事と思われる記載があり、先ずは特集に関係する表紙?と考えましたが何れの表紙も特集とは無関係のようです。創刊号の表紙はタイヤの上半分が隠れた独特の造形からナッシュかな?と判りましたが、車種までは判りませんでした。第2号の表紙は特集のアルファロメオではないことは判るのですがどうも車名が判りません。1952年初頭から3月までに出た雑誌ということは、1951年発表の新車であることは間違いないだろうと考え色々検索したところ、以下の車名が判明しました。

●創刊号の表紙: 1951年ナッシュ ランブラー カントリークラブ ハードトップクーペ (1951 Nash Rambler Country Club Hardtop Coupe)

●第2号の表紙: 1951年シムカ 8 スポーツクーペ (1951 Simca 8 Sport Coupé)

創刊号をパラパラめくると、またまた見たことのないクルマが出てきました。ムンツ・ジェット・コンヴァーティブル・クーペと記載がありますが、デザインは仏車のパナールにも似通った感じで製造国もよく判りません。調べたところ、このクルマはアメリカのムンツという人が400台生産したクルマで車名のジェットの通り200㎞の最高速を誇ったとのことですが、日本での知名度は非常に低い感じがします(このクルマ、御存知でしたか?)。


創刊号には天皇の御車として1952年キャデラック75リムジンのグラフ記事も出ています。こうした御料車の取材が自由に出来たらしいのは、今とは随分と宮内庁の対応も異なる感じがします☆☆




閑話休題
今日は、国産旧車ファンの人には「何じゃらホイ」(笑)的な車種となりますが、ブリキ自動車コレクションの第209回記事として萬代屋(現バンダイ)のジャガーXK140とXK150をご紹介します☆☆☆
 


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★ジャガーXK120 実車について (1949年~1954年)
1948年(昭和23年)秋、戦後初めて開催されたロンドン・ショーの人気の焦点はブロンズ・カラーの美しいジャガーXK120ロードスターでした。即ち、XK120は戦前1936年から1940年にかけて生産された名車ジャガーSS100に代わる高性能スポーツカーとして1948年10月のロンドン・ショーでベールを脱いだのです。戦前のSS100同様、ジャガーの創業者ウイリアム・ライオンズ(William Lyons、1901年9月4日-1985年2月8日)自身がデザインした細く低く流れるように美しいボディにXK型3442cc6気筒DOHC 160psエンジンを載せた抜群の性能はデビューと同時に北米を中心に爆発的な人気となったのです。カタログ上の数値でなく掛値なしに200kmオーバーの最高速度は当時世界最速の1台でした。
ロードスター(簡易な幌のみ付属)のみでデビューしたXK120は1951年(昭和26年)3月に美しいフィクストヘッドクーペ(FHC:固定型ルーフのクーペ)、1953年4月にはドロップヘッドクーペ(DHC:完全な内貼りを持った耐候性の高い幌付オープンクーペ)が加えられています。また、1952年には圧縮比9で190psを発生する高性能グレードXK120Mも追加されています。1951年にはワイヤホイールがオプション設定され、ワイヤホイール装着車はセンターロックナットが干渉するため美しいリアのスパッツが取り除かれています。


●誠文堂新光社「自動車のアルバム」(1952年版)表紙
1951年(昭和26年)10月30日発行・B5判108頁。表紙は自動車史/自動車文化史研究の第一人者・五十嵐平達氏(1924年-2000年)の筆によるもの。この時期の五十嵐氏は神田の交通博物館パンフレットの表紙画など乗物関連の出版物の表紙画を多数描かれています。


XK120の左下に五十嵐平達先生のサイン「Heitatu」



●ポピュラ・オートモビル1952年3月号 第2号のジャガーXK120グラフ解剖記事
ポピュラ・オートモビルは銀座のイヴニングスター社が1952(昭和27)年1月に創刊し短期間発刊した自動車雑誌で編集長は後にスピードライフの編集長を務め誠文堂新光社の役員となった横倉讓治氏。趣味性の高い編集で、このXK120の記事は神奈川県知事の御曹司で当時まだ慶大生だった故・内山勇氏(1930年生れ)が書かれています。白のロードスターは日本に最初に入ったXK120。





●1980年1月 企画室NEKO発行「THE JAGUAR」掲載「私の見たジャガー」
五十嵐平達氏が戦前から1960年代初頭(Eタイプ登場)までに東京の路上で見たジャガーについて12頁に亘り多数の貴重な写真を交えて書かれています。上掲の1952年自動車のアルバムの表紙画について、当時の日本でXK120をカラーで出したことに意義があった旨(出版社からはキャデラックあたりのアメ車の絵の方が良いと言われ説明に苦労したとの由)や上掲のポピュラ・オートモビルの内山氏の記事が本邦に於けるXK120の初の紹介記事であった旨等を記載されています。その他、この本では「日本のXKシリーズ全調査」と題して、ジャガーXK120~150の権威・佐藤義信氏による日本に棲息しているXKシリーズの全リスト(シャシーNo等付の一覧)が掲載され、非常に資料性の高いヴィンテージ・ジャガー好きなら必携と思われる内容となっています。


最初に日本に上陸したXK-120(五十嵐氏撮影)


木立の間に見える情感溢れるXK-120(五十嵐氏撮影)



●1960年 新東洋企業発行 ジャガー総合カタログに掲載された赤坂迎賓館前のXK-150
国内で撮影された広報写真は珍しいと思います。




【1953年 ジャガーXK120ロードスター 実車主要スペック】 (1954 JAGUAR XK120 Roadster Specification)
全長4410mm・全幅1575mm・全高1270㎜・ホイールベース2591mm・車重1142kg・FR・水冷直列6気筒DOHC3442cc・最高出力160ps/5200rpm・最大トルク?・変速機4速フロアMT(1速ノンシンクロ)・乗車定員2名・電装系12V・最高速度200km/h(125mph)・米国内販売価格$3345(参考:同時期のポルシェ356クーペ1500superの米国内販売価格はXK120の約1.4倍の$4584)



【萬代屋(バンダイ) 1/18スケール1953年ジャガーXK120フィクストヘッドクーペ ブリキ製モデル玩具 主要データ】 (1/18scale 1955 JAGUAR XK120 Fixedhead Coupe by Bandai-ya. Tinplate model Toy KEY DATA)

・商品名: JAGUAR COUPE SPORT CAR (外箱の印字)
・萬代屋 製品番号(製品管理番号): No.286(ロードスターは1番違い?XK-150はドロップヘッドクーペNo.648、コンバーチブルNo.649)
・主要素材: ブリキ
・全長: 240㎜(実車比1/18.4)
・全幅: 100㎜(実車比1/15.8)
・全高: 80㎜(実車比1/15.9)
・ホイールベース: 148mm(実車比1/17.5)
・スケール表記: なし
・箱サイズ: 縦100×横242×厚さ85㎜
・動力: 後輪フリクション・モーター
・室内ハンドル位置: 左のみ(アメリカ向け輸出仕様車をモデル化)
・カラーバリエーション: 黒/赤、緑/クリーム、赤/クリーム、緑/黄緑 等
・シャシー再現: 細かなプリント表現あり(XK-150はJAGUARの車名刻印のみ)
・発売時期: 1955年(昭和30年)・・・・・No.300のクラウンRSが1955年11月の発売でジャガーは14番古いNo.286のため、1955年夏頃の発売?)
・販売価格: 不明(150~200円前後と推定)
・入手難易度: 10段階評価でレベル7程度
・2021年現在のアンティーク・トイ市場での推定評価額: 4.5~8万円程度 (箱付未使用美品の場合)


★東京玩具商報1960年4月号 萬代屋 広告
マスターライン・ライトバン、メッサーシュミット4輪(タイガー)と共にジャガーXK-150クーペ(ドロップヘッドクーペ)が掲載されています。No.286のXK140フィクストヘッドクーペについては玩具業界誌には広告が見当たりません。


地方最低売価190円と記載されています。



★東京玩具商報1960年5月号 萬代屋 広告
次の5月号でもジャガークーペが新製品としてオースチンヒーレー等と共に掲載されています。



★新宿伊勢丹6階 玩具売場配布「1960年上半期 萬代屋 あかばこビーシー世界の自動車シリーズ発売予定品一覧」(縦68×横178㎜・2つ折)
新宿伊勢丹6階玩具売場の印字がありますが、伊勢丹専用ではなく都内の各デパートでこの部分にデパート名の印刷を加えて配布したものと思われます。ジャガークーペ170円が4月発売予定として掲載されています。








●萬代屋1/18スケール 1953年ジャガーXK120フィクストヘッド・クーペ(黒/赤・箱付・未使用極美品)
ジャガーXK120のような丸味の強いボディのブリキ素材での玩具/模型化は難しかったと思われますが、リアルタイムの日本製ブリキ玩具としては、増田屋齋藤貿易、マルサン商店、アルプス商事、米澤玩具と実車の人気を反映して多数が競作され、XK140以降は萬代屋(現バンダイ)からもリリースされています。当時のブリキモデルの中で、三陽工業(後の富山商事~トミー工業、現在のタカラトミー)が製作し米澤玩具(ヨネザワ)ブランドで販売されたXK120(2018年9月2日の本シリーズ第11回記事参照)が文句なしに最も優れています。次点はアルプス商事製(2021年8月1日の本シリーズ第133回記事参照)。フィクストヘッドクーペでは少々実車よりも横幅が広いことがスケールモデルとしてはウィークポイントながら、この萬代屋(現バンダイ)製は程々にサイズもあり良く出来ています。










下箱に工場出荷時のボディカラーを示す「RED」のスタンプが押されています。






全長60㎜(1/75スケール)の英MATCHBOXのXK-140フィクストヘッド・クーペとの大きさ比較




運転席。ハンドルはブリキ製、実車に比較的忠実なダッシュパネルは別パーツが奢られています。




細かくプリントされたシャシー裏


工場出荷時の薄紙の入った未使用品



●萬代屋1/18スケール 1953年ジャガーXK120ロードスター
2004年Schiffer Publishing発行コレクター向け資料本 The Big Book of TIN TOY CARS「Passenger,sports,and Concept Vehicles」より転載。XK140と記載されていますが、元箱にはXK120と明記されています。


元箱画像。恐らく発売当時、玩具小売店で誤って組み合わされたものと思われますが、ヤフオクに出品されたXK150に付いていたバンダイXK120ロードスターの箱画像。


XK120と印字されています。




●萬代屋1/18スケール 1959年ジャガーXK150ドロップヘッド・クーペ(黒/赤・箱付・美品)










1/75英MATCHBOXとの大きさ比較




左ハンドル運転席のプリント




車名が刻印されたシャシー裏




●萬代屋1/18スケール 1959年ジャガーXK150コンバーチブル
2004年Schiffer Publishing発行コレクター向け資料本 The Big Book of TIN TOY CARS「Passenger,sports,and Concept Vehicles」より転載。品番はクーペと1番違いのNo.649。




●萬代屋1/18スケール 1959年ジャガーXK150ドロップヘッド・クーペ レーシング ルーフ開閉アクション付
2004年Schiffer Publishing発行コレクター向け資料本 The Big Book of TIN TOY CARS「Commercial and Racing Vehicles」より転載。レバーを引くとルーフが開閉するアクション付。品番No.677。通常品より30番位若い品番。入手難易度10段階評価で10と記載されており(確かに見たことがありません)、MINT(箱付美品)の評価額は2200ドルと高額です。




●萬代屋1/30スケール程度 1955年ジャガーXK140
2004年Schiffer Publishing発行コレクター向け資料本 The Big Book of TIN TOY CARS「Commercial and Racing Vehicles」より転載。萬代屋製のXK140には大小2種類あり、この小サイズは箱絵は良いのですが、本体は実車とは異なる妙な造形で魅力的なモデルとは言えません。




●萬代屋1/18スケール 1955年ジャガーXK140フィクストヘッド・クーペ(左)と1959年ジャガーXK150ドロップヘッド・クーペ(右) 2台の並び
2台は殆ど同じ大きさですが、金型は異なります。










箱2種。夜の湾をバックにしたXK140の箱絵は雰囲気はあるもののバランスが崩れていますが、参考にした元絵があるのか否かは不明です。








●日本製の当時物ジャガーXK120~150ブリキ4台の並び
大きい順に1/18萬代屋XK140とXK150、米澤玩具、アルプス商事。バックの箱の最上段は三和模型の国内向け(左)と輸出向け(右)の箱。






手前に当時物の英DINKYと英MATCHBOXのミニカーを追加して撮影。




●当時物ジャガーXK120~150立体造形物 大集合
1/18萬代屋XK140とXK150、米澤玩具(赤・青・クリーム)、アルプス商事のブリキ以外に米IDEALの1/21プラ製(水色)と米TOOTSIE-TOYの1/35鉄製フィクストヘッドクーペ(紺色)、同1/58鉄製コンバーチブル、英DINKYと英MATCHBOXのフィクストヘッドクーペ、1/28アルプス、1/43Spark(品番S2110クリーム)、1/75英マッチボックス XK140フィックスドヘッドクーペ。コレクトーイやキラル製を入れるのを忘れていたことに後から気づきましたが、これだけでも結構壮観です。







●フィクストヘッドクーペ5種
大きい方から、萬代屋、米IDEAL、米TOOTSIE-TOY、英DINKY、英MATCHBOX。この独特な美を誇るクーペボディについて、五十嵐平達氏は高価なイタリア製スポーツカー以上に美しい旨を著作に記述されています。








●当時物プラモデル
この中で手元に4つある三和製は年代的にリアルタイムには間に合わず、童友社のXK150は既にEタイプがデビューしていた1960年代後半の発売で何故時代遅れのXK150がモデル化されたのか謎ですが、小学生の頃にリアルタイムで作った個人的に懐かしのプラモです。左上のAURORAのみ米国製、他は全て日本製。


Box Artが秀逸な米リンドバーグ1/32ジャガーXK120 プラモデル(画像提供:henry氏)。


米ITC 1/25ジャガーXK120プラモデル(Webより借用画像)




●近年のジャガーXK120~XK150のミニカー
すぐに出てきたモノだけ並べてみましたが、近年と言っても右端のウェスタンモデルなどは既にリリースから40年程度の時が経っています。




※ジャガーXK120~150の変遷については、2013年2月14日の自動車カタログ棚からシリーズ第111回記事を御参照ください。






★オマケ(その1): トミカくじトミカプレミアムRS1/43トヨタ2000GT後期型 3色
12月1日より全国のセブンイレブンとイトーヨーカドーで始まった1ロット70本のトミカくじ。43のトヨタ2000GT黄色・緑・シルバーの3台はコースター/タオル/キーホルダーといったミニカー以外と同様の外れクジ(=ゴミ)とWebで記載している人もいますが、個人的には実車の年代的に欲しいと思えたのは2000GTのみ。しかし、2000GTはくじ70本中6台しか入っていないとのことから、初めからフリマやヤフオクで買った方が得策と考え、フリマで探して最安だった送料込み3台セット3200円というのを購入しました(1台当り1070円位)。これで既発売の白・赤と併せて5色が揃いました☆








★オマケ(その2): クリスマス限定のポルシェミニカー達
1/43のツリーを積んだ73カレラRSの白と赤の2台はspark製のポルシェ特注2022年のクリスマス限定品で税込定価1台1万4080円とお高いことと、生産数が各2022台と多いこともあってか、1年経った現在も一部ディーラー在庫があるようです。1/64のPOP RACEの2台は蒐集対象外のSINGER911ながら色が綺麗なのとクリスマス限定ということに釣られて入手(各税込2915円)。1/87は1995年のherpaコレクターズクラブ限定品で930と993のターボにサンタのフィギュアが付いて当時3500円でした。ところが、同時期に赤箱の中国製トミカとして360円で売られていたポルシェ356や930ターボには当時定価の5~6倍以上の高値が付いても、このherpaの1995年クリスマス限定品の現在の流通価格は2000円台止まりで限定品と言えどもトミカ以外のポルシェはなかなか市場価値は上がらない(と言うより、下がってしまう)という悲しい状況にあります。


1/87herpa 1995年クリスマス限定品




★オマケ(その6): 今日のビートルズ「Happy Christmas(War is over)」 1971
ビートルズというよりジョン・レノンですが、現在の世界情勢では、この曲の価値は高まっていると思います☆しかし、、ジョンの声はどうしてこんなに優しいのでしょうか☆☆