★イチコー試作コンテッサタクシー&縦目セドリックタクシー ~ ブリキ自動車コレクションから001 | ポルシェ356Aカレラ

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お盆休みですね。故郷に帰郷される方や国内・海外旅行にお出かけの方も多いことと思います。故郷が東京のワタシの場合は、帰るべき田舎がないので地方出身の人がこの時期ばかりはちょっと羨ましかったりもします。しかし、帰郷するにも高速道路は大渋滞なので、私がもし地方出身で故郷に帰郷するとしたなら、所要時間の読めないクルマでの移動は極力避けて座席指定の取れる鉄道か飛行機を使うでしょうね。それでも、家族が多かったり荷物が多いような場合にはクルマ移動以外に選択肢がないというケースもあろうかと思います。

閑話休題
これまで「自動車カタログ棚からシリーズ」のオマケとしてかなりの数のブリキ自動車の画像をアップしていますが、今回は新たなシリーズとして実車カタログではなくブリキ自動車をメインとする「ブリキ自動車コレクションから」をアップすることといたします。これまでは原則として紹介したカタログ等の市場価格について触れることはしていませんでしたが、今回は初の試みとして、恐らく多くの人が興味を持つであろう「鑑定額」を私見ながら記載することとします。金額を書くなんてテレビの「開運!なんでも鑑定団」じゃあるまいし下世話な話だと眉をひそめる向きもおられるかもしれませんが、ご紹介するモノにどの程度の市場価値があるかは重要な情報の一つだろうと思います。
 



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●1964年(昭和39年) 東京駅丸の内口のタクシー乗り場 写真
1965年(昭和40年)6月25日誠文堂新光社発行 玉川こども百科4「自動車」改訂第1版(五十嵐平達著)より。自動車文化史研究の第一人者 五十嵐平達氏が編纂した玉川こども百科「自動車」は1952年(昭和27年)2月に初版が出版され、時代に合わせた内容の小変更を加えつつ第9版まで刷られた後、1965年6月に改訂版となった。これは、その際にタクシー・ハイヤーの解説頁に加えられた写真で、右下に1963年秋にMCを受けた後の1964年式2代目クラウン40系タクシー、その後ろに縦目のセドリック2台(恐らく1962年式)と初代観音クラウン最終型30系の黄色に青帯の東京駅構内タクシー、1台目の縦目セドリックの駅寄り隣にはS4プリンスグロリアのタクシー、最後尾にはいすゞベレルの白いタクシーが写されている。背景には現在も変わらない東京ステーションホテルの入り口が写っている。構内タクシーのカラーは捜してみると意外に少なく貴重な1枚。写っている車両と本の発行時期から、撮影は東京オリンピックの開催された1964年と推定。
東京駅風景



★現在、私の手元には500台を超える1950年代~1970年代に製造された日本車をメインとする日本製ブリキ自動車のコレクションがあります。
1977年(昭和52年)、私が高3の頃からコツコツ集めてきたものです。資産価値的には東京23区内に1戸建てが買える位のものと言えば大凡の見当がつくでしょうか。その手元にあるブリキ自動車コレクションの中には火事や天災あるいは盗難にあって失われてしまったら二度と取り戻すことが出来ない、所謂、幻の逸品も含まれています。


★今回ご紹介するイチコー(一宏工業)の1961年日野コンテッサ900と1962年ニッサン縦目のセドリックの2台の構内タクシーのブリキは、何れもイチコーの工場・倉庫から発掘された市販はされなかった試作品です。
市販はされていない1点モノのため、ブリキ玩具のコレクションでは世界的に著名な横浜の北原照久さんの手元にも他のコレクターの手元にもない大変貴重な品物です。一期一会という言葉がありますが、良い出会いがあり、今、私の手元にあることに心から感謝しなければなりません。



【試作品の評価について】

(1) 通常に市販されたブリキ自動車の場合には箱の有無やボディカラーの人気度、箱と本体のコンディション等により、ある程度、現在の市場価値や評価をすることも可能ですが、今回ご紹介するような試作品の場合には世界中に他に同じものが全く存在しない、所謂1点モノのため評価は少々難しいものです。生産ラインで作られた市販品ではない半ば手造りの試作品は、モデリングのプロに依頼してそっくり同じコピーを造って貰っても価値は同じではないのか?あるいは、絵画や手塚治虫や宮﨑 駿さんのアニメの原画などと似たような性格の作家モノの一種であって工業製品とは全く異なるモノではないのか?との意見もあります。逆にメーカー試作品は金額を決めようがないほど市場価値が高いとの意見もあります。例えば、有名なところでは7桁越えの市場評価が見込まれるトミカ81-1番プレジデント試作品のように、です。

(2) 今回ご紹介する2台は、玩具メーカー「イチコー」の工場・倉庫から出てきた古い時代のモノであること、2台共に非常に凝ったギミックが付いていることなどから、試作品とはいえメーカーオリジナルの逸品として高い評価が出来るものと思われます。コンテッサ900構内タクシーの場合には、イチコーの1963年版カタログに掲載されながらも発売には至らなかった、カタログに掲載された写真の現物であることから、120~150万円程度の評価は出来るでしょう。カタログに掲載もされなかったセドリック構内タクシーでも80~100万円程度の価値評価は可能と思います。

(3) 日本車のブリキ玩具では今年2016年2月10日の「まんだらけ」のオークションで米澤玩具の市販製品1963年トヨペットクラウン「バットマン」箱付が237万6000円で落札されており、それとのバランスでも上記の評価額は妥当もしくはやや控え目ではないでしょうか。但し、あくまでモノの価値評価=市場価格は買い手が付いて初めて出されるものです。私が貴重な品物だと思っても、欲しい人がいなければ限りなく価値はゼロに近づいてしまいます。今後、余程経済的に窮しない限り、この2台のタクシーは私の人生の最後まで手元に残るだろうと思います。いよいよ死期が近づいたと観念した時には、価値が判る方にお譲りすることになるでしょうけれども、私が元気なうちに市場に出ることは恐らくないので、実際のところ市場価値は私が死ぬまで判らないのです。私が死ぬ頃には(人間、明日死ぬかいつ死ぬかは判りませんが、まだ当分先の話とした場合)、1960年代の自動車にノスタルジーや価値を感じる人が世の中に殆どいなくなり、ブリキ製自動車玩具全般の評価も大幅に下がって、この試作品2台もタダ同然で見知らぬ誰かに引き取られるといったことになる可能性もゼロではありません。

(4) 現に1950年代や1960年代に郷愁を感じる世代が既に高齢化して、年金暮らしなどお金を自由に使える年齢層ではなくなったこともあって、1960年代の大盛屋の国産ミニカーやバンダイ等のブリキ自動車は一時期に比べて大きく値下がりし、逆に仮面ライダーやマジンガーZなど1970年代以降のモノ、場合によっては1980年代のモノの方が現在では市場評価は高いケースもあると言われます。
要するに、そのモノに需要がなくなれば市場価値は急落し場合によってはゼロとなり、需要が多いものは例え新しいモノであっても市場価値は上がるのです。2016年7月に発売されたばかりのトミカ初回限定シビック黒(定価税抜450円)が2000円で売られているのは高過ぎるのではと思って見ていたら、数日経って某ショップでは6000円で売られているのを見かけて正直腰を抜かしましたが、需要と供給のバランスでモノの価格が変動することだけは確かなのです。



●イチコー 1/17スケール 1961年日野コンテッサ構内タクシー 試作品
全長23cm。一宏工業 品番4762-T。サイドモールがリア半分までの実車のスタンダードを模した1stモデルを元に造られた構内タクシー仕様。ルーフ前端の行先表示は回転式で「東京駅」「上野駅」「池袋駅」「新宿駅」「渋谷駅」と変るギミック付。このギミックにコストがかかり、生産が見送られたのではないだろうか。これは1980年代後半にイチコーからアンティーク市場に流出した。

【2016年 鑑定額】 イチコーの1963年版カタログに掲載されながらも発売には至らなかった、カタログに掲載されたモノの現物であることから、私見では120~150万円程度の評価。
コンテッサ(1)

コンテッサ(2)

コンテッサ(3)

コンテッサ(4)

ルーフの行燈上面には「STATION TAXI」の青文字と「交通安全」の赤文字。「イチコーのすばらしい玩具」のシールは市販製品と同じものが貼られている。
コンテッサ(6)ルーフ文字

実車通りにプリントされた運転席
コンテッサ(7)運転席


ルーフの行燈は回転式で、東京駅→上野駅→池袋駅→新宿駅→渋谷駅と変化する。試作品のためレタリングは全てプリントではなく手書きされている。

東京駅
コンテッサ(8)東京駅

上野駅
コンテッサ(9)上野駅

池袋駅
コンテッサ(9)池袋駅

新宿駅
コンテッサ10新宿駅

渋谷駅
コンテッサ11渋谷駅


1963年版イチコーカタログより。コンテッサタクシーとして品番やサイズは記載されているが価格の記載はないまま市販されずに終わった。
カタログ



●イチコー1/18スケール 1962年ニッサン セドリック構内タクシー 試作品
全長25cm。1961年秋にフロントグリルの意匠変更を受けた1962年型モデルをベースに造られた構内タクシー仕様。市販されたノーマルであっても1962年型は殆ど見かけず極く少ない。シャシー裏に単一電池を入れフロントウインド手前のスリットに硬貨を入れると走り出すギミック付。投入した硬貨はシャシー裏に落下し専用の蓋を開けると取り出せる。前輪も左右にステアする。これもギミックにコストがかかり過ぎて生産は見送られたのではないだろうか。このタクシーはイチコーが倒産した2000年前後にアンティーク市場に流出した。入手時にイチコー開発部の土屋氏という方が当時製作したものである旨の情報を得た。このセドリックもレタリングは全て手書き。

【2016年 鑑定額】 カタログにも掲載されなかったメーカー試作品ながら凝ったギミックもあり、私見では80~100万円程度の評価。
セドリック(1)

セドリック(2)

セドリック(3)


イチコー・コンテッサタクシーとセドリックタクシー試作品2台の並び
2台



●1960年代初頭の国産ブリキ構内タクシー4台
米澤製の大きな縦目のセドリック東京駅構内タクシー(左端)とバンダイ製の1961年初代観音クラウン最終型RS31東京駅構内タクシー(右端)の2台は通常に市販された製品だが、箱付ミント・コンディションは滅多に見かけない。特に米澤製の箱付は稀少。箱付ミントの評価額は米澤セドリックで50~70万円、バンダイ・クラウンで35~50万円程度。個人的には構内タクシーの黄色に青帯のカラーリングは何とも懐かしく感じる。この時代(1960年前後)のブリキの国産タクシーとしては他に光球商会がオースチンA50ケンブリッジの金型流用でリリースした初代310ブルーバード日本交通タクシーやバンダイのいすゞベレルタクシー(ハンドル・リモコン仕様のみ)がある。もう少し時代を遡れば、萬代屋(現バンダイ)がトヨペットマスターのタクシー仕様を出していた。
4台(1)

4台(2)



●米澤玩具1/12スケール 1963年トヨペット クラウン 「バットマン」
まんだらけZENBU73号より。全長40cm。2016年2月10日のまんだらけオークションにて237万6000円で落札されたモデル。このクラウン オープンのバットマン仕様には出品された赤以外に青、黒のボディもあり、もし同じ価格でカラーバリエーション赤青黒の3色を揃えるとなると712万円となる計算。この米澤のクラウン オープンにはバットマン以外に黄金バット仕様もあるが、それも殆どアンティーク市場に現れない激レアもの。
バットマン





※イチコー(一宏工業)の1960年代のブリキ自動車玩具の製品についてはこちらの記事をご参照ください。