★1955年 ダットサン110型セダン 初の戦後型 日産乗用車 ~ 自動車カタログ棚から 110 | ポルシェ356Aカレラ

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★前項の昭和20年代のダットサン・セダン(DBおよびスリフト系)の後継車、ダットサン110型セダンは、トヨペット・クラウンRS型と同じ1955年(昭和30年)1月にデビューした。それまでのダットサンが1932年(昭和7年)からの戦前シャシーに戦後の木骨手叩きボディを載せたものであったのに対して、新設計のシャシーとプレス化されたボディを持つ初の日産の戦後型乗用車である。ブルーバード等のペットネームが付く前の時代であり、ダットサンに型式名を加えた「ダットサン110型セダン」が正式名称であった。日産社内ではD計画と言われ1949年(昭和24年)3月頃から戦後型乗用車110型の開発が始められていた。

★ダットサン110型セダンは、同時にデビューした戦後型小型トラック「ダットサン120型トラック」と共通の梯子型フレームに前後サスペンションは固定の従来と変わらぬ保守的な設計ではあったが、当時の日産自動車造形課長であった佐藤章蔵氏によるボディデザインは、ハモニカ型グリルにマイナーチェンジされた1956年(昭和31年)の112型が、「戦後の日本の貧乏を肯定した無駄がなく健康的で実に優れたデザイン」として毎日新聞社が日本の工業デザインの向上を目的として1955年(昭和30年)に始めた毎日工業デザイン賞(産業デザイン賞)を受賞した。クラウンRS型も最終選考に残ったが、一般大衆の心に響き、物真似ではないオリジナリティの高いデザインという点からダットサンに軍配が上がった。多分に日本的とはいえアメ車の匂いのしたクラウンよりはダットサンの方が日本的情緒がありデザイン的な独創性は高かったと言える。

★ダットサン110型セダンは同時期にデビューしたトヨペット・クラウンRS型と共に戦後の画期的な日本製乗用車としてタクシー需要を中心にヒットしたが、110型のエンジンは戦前の設計を基本とした昭和20年代のダットサンと同じD-10型(SV860cc25馬力)が搭載されていた。ボディについては日産自社製の110型は関東以北への出荷車両のみで、名阪地区等には中日本重工(三菱重工)製ボディのルーフを一周する雨どいから所謂「鉢巻ダットサン」と呼ばれたA110型が出荷された。また110型デビューの1955年には、2ドアボディにルーフと取り去った「K110型コンバーチブル」も少数が生産された。コンバチは当時の日本には時期尚早に過ぎたが日産の戦前からの趣味性の高さを示したバリエーションだった。
ダットサン110型はデビュー1年後の1956年(昭和31年)1月にフロントグリルをハモニカ型に変更しテールライトを縦長方形から丸型に変更した112型、1956年(昭和31年)6月に変速機をフロアシフトからコラムシフトに変更し全生産車を日産製ボディとした113型、1957年(昭和32年)10月にグリルを変更しフロントウインドを曲面ガラスとした114型、1958年(昭和33年)10月にウインカーをフェンダー上からフロントパネルに移した最終の115型へと進化・変遷した。

1957年(昭和32年)10月110型のボディに新開発されたOHV 988cc 34馬力のC型エンジンを搭載した210型「ダットサン1000セダン」がデビュー。210型は、当時の需要の大半を占めた小型タクシーが料金体系の排気量上限を1000ccに拡大されたこと及び同年7月に初代トヨペット・コロナ(ST10型)が1000ccエンジンでデビューしたことへの日産としての回答であった。
新しいC型1000ccエンジンは、当時の日産がノックダウンしていたオースチンA50ケンブリッジのエンジンのストロークを縮めて開発され、当時の日本製エンジンとしては異例とも言えるショートストロークの高回転型であったが、低速域の弱いトルクは、ファイナルギア比の適正化等で補われた。電装系は210型より従来の6Vが12Vに変更された。

★1958年(昭和33年)6月には日産乗用車としては初の対米輸出が210型ダットサンで始められ、また、同年9月に開催されたオーストラリア・モービルガス・トライアルには、宣伝課長であった片山豊氏の発案でAクラスに富士号、桜号の2台が出場しクラス優勝(総合24位)の快挙を遂げた。
1958年10月にはフロントグリルがシンプルかつ完成されたデザインに変更されると共にウインカーがフェンダー上からフロントパネルに移されリアウインドウも拡大された 211型 にマイナーチェンジした後、翌1959年(昭和34年)7月に初代ブルーバード310型にダットサン小型乗用車のバトンを渡した。
1950年代後半、西欧の乗用車では全輪独立懸架が一般的になりつつあった時流の中でダットサンのセダンは前後輪共にトラックのようなリジッドアクスル/半楕円リーフのサスペンションであり、欧米のジャーナリズムからは「今時珍しい馬車のようなサスペンション」と好奇の目で見られたとも言われる。しかし、日々酷使されるタクシー需要が大半を占め、一級国道でさえも舗装路の少なかった当時の日本の国情には適したクルマだったと言える。

【主要スペック】 1955年 ダットサン110型セダン 
全長3,860mm・全幅1,466mm・全高1,540mm・ホイールベース2,220mm・車重890kg・D-10型SV860cc・最高出力25ps/4000rpm・最大トルク5.1 kgm/2400rpm・変速機4速フロアMT・乗車定員4名・最高速85km/h・販売価格67万5000円

●モーターマガジン1955年8月創刊号 (B5判198頁) 
表紙はダットサン110型セダン
$1959PORSCHE356Aのブログ-モーターマガジン

●1955年1月発行 ダットサン110型セダン 簡易?カタログ (24×24cm・2つ折)
$1959PORSCHE356Aのブログ-55年1月緑表紙

※中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-55年1月緑中頁

※裏面スペック
$1959PORSCHE356Aのブログ-55年1月緑スペック

●1955年1月発行 ダットサンA110型セダン 簡易?カタログ (24×24cm・2つ折)
上のカタログと基本的に同じだが、表紙や本文にA110と記載されている。しかし、写真は全く同じものが使用されており、三菱製の鉢巻ボディの写真は1枚もない。
$1959PORSCHE356Aのブログ-55年A110表紙

●1955年1月発行 ダットサン110型セダン 本カタログ (24×24cm・6つ折)
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※中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-55年1赤中頁

●1955年6月発行? ダットサンK110型コンバーチブル+W110型ワゴン 専用カタログ(B5判・4つ折)
$1959PORSCHE356Aのブログ-コンバチ表紙

※中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-コンバチ中頁

●1956年2月発行 ダットサン112型セダン 本カタログ(B5判・16頁)
$1959PORSCHE356Aのブログ-112表紙

※中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-112中1前
$1959PORSCHE356Aのブログ-112中2後

●1956年5月発行 ダットサン113型セダン 簡易カタログ(B5判・2つ折)
表紙はリモートコントロール・コラムシフトを強調したイラスト
$1959PORSCHE356Aのブログ-113簡易

●1956年12月発行 ダットサン113型セダン 本カタログ(A4判・16頁)
表紙はとてもモダンでお洒落な女性がコラムシフトを操作しているイラスト
$1959PORSCHE356Aのブログ-113本1表紙

※中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-113本1中頁

●1957年2月発行 ダットサン113型セダン 本カタログ(A4判・16頁)
上の1956年12月発行版と内容は殆ど同じカタログ
$1959PORSCHE356Aのブログ-113本2表紙

※中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-113本2中頁

●1957年9月発行 ダットサン113型セダン 本カタログ(横30×縦10.5cm・16頁)
恐らくダイレクトメールで郵送された変形カタログ。スペックの掲載がありカタログの体裁ではあるが、毎日産業デザイン賞の選評や歌手の三橋美智也さん他の113型愛用者の記事などグラフ誌的な内容。
$1959PORSCHE356Aのブログ-113横表紙

※中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-113横中頁

●1958年5月発行 ダットサン114型セダン 本カタログ(A4判・4つ折)
表紙の女性は石原裕次郎と結婚する前の北原三枝さん
$1959PORSCHE356Aのブログ-114表紙

※中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-114中頁

●1958年6月発行 ダットサン1000セダン210型 本カタログ(A4判・12頁)
$1959PORSCHE356Aのブログ-210表紙

※中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-210中頁

●1958年10月発行 ダットサン1000セダン211型 カタログ(A4判・4つ折)
表紙は日産横浜工場玄関前の撮影。
$1959PORSCHE356Aのブログ-211写真表紙

●1958年12月発行 ダットサン115型セダン リーフレット(A4判・表裏1枚)
旧弊なSV860ccの最終型。通常のカタログは未発行?生産の主力は1000に移行していた上、初代ブルーバード310型のデビューする1959年夏までの僅かな期間しか造られなかった稀少車。
115表

裏面スペック&図面
115裏


●1959年3月発行 ダットサン1000セダン211型 本カタログ(A4判・12頁)
$1959PORSCHE356Aのブログ-211本表紙

※中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-211本中頁リア4灯火

●1958年発行 ダットサン1000セダン 輸出用英文カタログ(A4判・2つ折)
左ハンドルの210L型。和装の女性はこの時代の輸出用カタログのお約束。
$1959PORSCHE356Aのブログ-58年英文赤

●1958年発行 ダットサン1000セダン 英文カタログ(A4判・2つ折)
NISSAN FOREIGN TRADE DIVISION 発行ではあるものの掲載車両は国内向けと同じ右ハンドル車のカタログ。
$1959PORSCHE356Aのブログ-58年英文黒

●1959年発行 ダットサン1200セダン 輸出用英文カタログ(A4判・2つ折)
左ハンドルのP211-U型。輸出向け最終型には初代ブルーバードに搭載された1200ccエンジンが搭載された。
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●1958年10月発行 オーストラリア1周ラリー優勝パンフレット(横10×縦17.5cm・蛇腹6つ折)
$1959PORSCHE356Aのブログ-ラリーペラ表紙
$1959PORSCHE356Aのブログ-ラリーペラ蛇腹

●1958年10月発行 オーストラリア1周ラリー優勝記念 小冊子(B5判・24頁)
フルカラーでオーストラリア・モービルガス・トライアル優勝までのダットサンの戦いを詳しく記録した冊子。510ブルや240Zの日産のラリーカーで有名な赤ボディはこの時に始まった。
$1959PORSCHE356Aのブログ-ラリー冊子表紙

※中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-ラリー冊子中頁


★オマケ(その1): 日産オフィシャル 1/40スケール1956年ダットサン112型セダン 置物
112型の刻印はないので、外観が同じ113型がモデルかもしれない。
$1959PORSCHE356Aのブログ-112置物(1)前
$1959PORSCHE356Aのブログ-112置物(2)

★オマケ(その2): 日産オフィシャル1/25スケール1958年ダットサン210+1959年ダットサン211セダン シガレットケース
左側1958年210、右側1959年の211。桐箱入り。顧客等に配られ応接間などに置かれたアンチモニー製のシガレットケースは各社が出しているが、1950年代のダットサンは総じて現存数が少ないようだ。
$1959PORSCHE356Aのブログ-シガレット(1)2台
$1959PORSCHE356Aのブログ-シガレット(2)2台

★オマケ(その3): 萬代屋(現バンダイ)1/28スケール1958年ダットサン1000(210型)
品番593。当時定価 90円。萬代屋からはマイナーチェンジ後の1959年211型も発売されたほか、1958年オーストラリア1週ラリー出場の富士号・桜号の日産特注品もリリースされている。
$1959PORSCHE356Aのブログ-バンダイ210

★オマケ(その4): 三和模型(サンワ模型) 1/14スケール程度 1957年ダットサン113型セダン 木製組立キット
プラモデル登場以前の木製キット
$1959PORSCHE356Aのブログ-サンワ木製キット

★オマケ(その5): 和工樹脂1/25スケール1959年ダットサン1000 プラモデル
当時定価350円。1958年12月発売。国産プラモデル黎明期の傑作。同金型でマルサン7002番としても発売された。
$1959PORSCHE356Aのブログ-和工(1)プラモ
$1959PORSCHE356Aのブログ-和工(2)プラモ

★オマケ(その6): インターアライド1/43スケール1958年ダットサン1000 富士号・桜号
これは当時物ではなく2001年発売製品。
$1959PORSCHE356Aのブログ-富士号桜号ミニカーインターアライド
$1959PORSCHE356Aのブログ-富士号桜号(2)

★オマケ(その7): ます美の幼児保育えほん「のりもの」
古藤泰介画伯による表紙画は、1959年ダットサン1000セダン(211型)とニッサン582型トラック。
$1959PORSCHE356Aのブログ-絵本211表紙

★オマケ(その8): 1958年オーストラリ1周ラリー日産制作記録映画
1958年8月20日~9月7までの「1958 Mobilgas Trial」の日産自動車制作の貴重な記録映画。
YOU TUBEに8分割してUPされています(これは1/8)。