★1960年(昭和35年)のマツダR360クーペ、1962年(昭和37年)のマツダキャロル、1964年(昭和39年)のマツダファミリアと順を追って上級クラスに進出した東洋工業(現マツダ)は更なる上級車種として1966年(昭和41年)8月にマツダ・ルーチェを発売した。1963年秋の第10回東京モーターショーに初めてルーチェの名で試作モデルが出品された後、1965年秋の第12回東京モーターショーにデザインを大幅にリファインして再度出品されたモデルの市販化であった。その後、1995年12月に5代目が生産を終了するまで29年間に亘ってマツダの上級セダンとして親しまれたルーチェの登場である。
★初代ルーチェは1500ccながら他車よりやや大きいボディの6人乗り4ドアセダンで登場した。その最大の特徴は、ベルトーネに在籍していたジョルジェット・ジウジアーロによる極めて美しく品のあるスタイリングにあった。細いピラー、前後のシンプルなデザイン、全体のプロポーションの何れをとっても、また、どの角度から見ても破綻のない美しさを持っていた。車格的なコンセプトはルーチェ発売から2年遅れて1968年(昭和43年)に相次いで登場したハイオーナーカーと言われたトヨタコロナマークⅡ、日産ローレルの先駆的なクルマであった。
★ルーチェ発売の翌年1967年(昭和42年)6月にはツインキャブのスポーツ仕様「SS」、1968年(昭和43年)12月には排気量をアップした「1800」を加えた後、1969年(昭和44年)10月にはセダンのデザインコンセプトを踏襲したロータリースペシャリティ「ルーチェ・ロータリークーペ」も登場した。1972年(昭和47年)11月に2代目ルーチェが発売されるまでの6年強に亘りマツダ製最上級乗用車として生産された。
なお、初代ルーチェは広い室内空間をセールスポイントにして初期より営業車仕様の設定もされた。
初代ルーチェは現在の目で見ても非常に美しく内容的にも優れたクルマであったが(私自身、このクルマの美しさに惹かれ既に旧車となった1980年代に購入を検討したこともある)、国内販売は競合他車には敵わず販売台数では伸び悩んだ。むしろ、日本国内よりもクルマに対する審美眼の確かな欧州市場での人気が高かったと言われる。
●車名の由来: ルーチェ=LUCEは、イタリア語で「光」「輝き」を意味する。
【主要スペック】1966年 マツダ ルーチェ デラックス(型式SUA-DX型)
全長4370mm・全幅1630mm・全高1410mm・ホイールベース2500mm・車重1050kg・FR・水冷直列4気筒SOHC1490cc・最高出力78ps/5500rpm・最大トルク11.8kgm/2500rpm・乗車定員6名・コラム4速・最高速150km/h・販売価格695000円
●1966年7月発行 マツダ ルーチェ 発売案内パンフレット (24×24cm・3つ折)
●1966年8月発行 東洋工業広報誌 マツダ ルーチェ特集 (B5判・16頁)
●1966年8月発行 マツダ ルーチェ 簡易カタログ (30×28cm・2つ折)
●1966年8月発行 マツダ ルーチェ 本カタログ (30×28cm・28頁)
厚手の表紙で紙質も良い豪華なカタログ。最上級車ルーチェに賭けるメーカーの意気込みが伝わってくるようだ。
※中頁から
スタンダードグレードはサイドウインカーも付かず非常にシンプル
※スペック+ボディカラー掲載頁
●1967年6月発行 マツダ ルーチェSS専用カタログ (26×32cm・8頁+)
ツインキャブ86ps・最高速160kmのスポーツバージョン。室内にはタコメーター、3本スポークのステアリングホイールを備え、前輪ディスクブレーキが付いた。
※中頁から
●1968年1月発行 マツダ ルーチェ 本カタログ (26×32cm・18頁)
※中頁から
●1968年9月発行 マツダ ルーチェ 本カタログ (26×32cm・16頁)
1969年の法規改正に備えてハザードランプ、シートベルトを標準装備。表紙の女性がいかにも60年代的。
※中頁から
●1968年9月発行 マツダ ルーチェSS専用カタログ (26×32cm・3つ折)
SSは白ボディに黒のレザートップが標準となった。1970年前後に大流行したレザートップの標準設定はこのルーチェSSが日本初。
※中頁から:標準色は黒のレザートップに白ボディ
●1968年12月発行 マツダ ルーチェ1800 本カタログ (26×32cm・34頁)
外観は変えずに1800㏄100psエンジンを搭載し、最高速は165km/h。分厚く豪華なカタログで翌年登場のルーチェロータリークーペの白い本カタログと対をなす。
※中頁から
●1970年2月発行 マツダ ルーチェ1800/1500 本カタログ (26×32cm・24頁)
同時期のいすゞ117クーペの篠山紀信氏によるカタログと同様に極めて美しい写真で構成された傑作カタログ。クレジットはないが有名写真家によるものかもしれない。
表紙には1800とだけ印字されているが1500cc車も掲載されている。
※中頁から
●1971年3月発行 マツダ ルーチェ1800 本カタログ (26×32cm・24頁)
1500がラインナップから落ち1800のみとなった初代最終カタログ。ボンネット左右に醜悪なプラ製の飾りが付いたが、その他はオリジナルデザインが保たれている。夫婦が古都京都を旅する物語的な構成の、これも傑作カタログのひとつ。
※中頁から
●1968年2月発行 マツダ ルーチェLPG/ガソリン営業車カタログ (26×32cm・8頁)
初代ルーチェは室内の広さを生かし、生涯を通じてタクシーとしても販売された。
※中頁から
★オマケ(その1): 一宏工業(イチコー) 1/15スケール 1966年 マツダ ルーチェ
★オマケ(その2): 三共ポリマー 1/32スケール 1966年 マツダ ルーチェ デラックス プラモデル
当時定価150円。モーターライズ仕様。