★ユーミン のコバルトアワーで歌われた、いすゞベレットはラック&ピニオンの鋭いステアリングとスウィング・アクスルによる独特な後輪独立懸架による優れた操縦性をもったスポーティー・サルーンとして1963年11月にセダン、翌1964年4月に日本初のGTとして1600GT(通称ベレG)がデビューした。
欧州車贔屓でアメ車と日本車には厳しいと言われた小林彰太郎さんが編集長時代のカーグラフィック(CG誌)が高く評価していた稀有な日本車の1台でもある。
★上記の通り、ベレットの美点は後輪スウィング・アクスルによる優れた操縦性にあったのだが、その少々クセのあるステアリング特性は普通のクルマに乗りなれたユーザーに敬遠される場合もあり、その対策としてデビュー3年後の1966年11月に後輪サスペンションを常識的なリジット・アクスルに変更した「ベレットBタイプ」が発売された。フロント角型ヘッドライトと大幅にデザイン変更されたリア周りとで通常のベレットとは大きく印象の異なる外観となって売られたが、ベレットの美点である後輪独立懸架をメーカー自ら否定したとも言えるBタイプの販売は不調で1969年初頭までの僅か2年強の生産で終焉を迎えた。1960年代後半、自動車大好き少年だった私は街を走る普通のベレットやベレGはよく見かけたけれど(1966年のベレットの年間国内登録は2万6238台で決して稀少車ではなかった)、Bタイプに限っては当時の路上で見た記憶がない。
★ベレットにはデビュー当初から1800ccのディーゼル車が主にタクシー用として生産されていたが、Bタイプではディーゼル車に加えてLPG車がラインナップに登場した。都内で見かけることは皆無だったけれど、地方都市では1800ディーゼルやBタイプLPGをタクシーとして使用した事業者が存在したようだ。
①1967年5月発行 ベレットBタイプ1500 LPG タクシーカタログ
(いすゞカタログナンバーPC-3013、型式PR40:G150エンジン/63ps)
※同上、中頁から
②1967年1月発行 ベレル・ベレットBタイプ タクシーカタログ
(いすゞカタログナンバーPC-3011、ベレット型式PRD30:C180エンジン/50ps+型式PR30:G130エンジン/58ps)
※同上、中頁から
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③1965年10月発行 ベレル・ベレット ディーゼル カタログ
(いすゞカタログナンバーPC-2002、ベレット型式:PRD10/C180エンジン/50ps、表紙の写真はタクシー仕様で行灯を付けている)
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④1966年5月発行 ベレル・ベレット デイーゼル カタログ
(いすゞカタログナンバーPC-3005、上の③と一見同じように見えるが、ベレットは1966年4月のマイナーチェンジ後の車両に差替えられている。型式等は③と同一)
※③と④の中頁比較(下③・上④、ベレルは③④共に起死回生を狙ったものの失敗に終わった1965年10月の縦目フロントに大幅マイナーチェンジ後の最終型)
⑤1966年11月発行 ベレットBタイプ 簡易カタログ
(いすゞカタログナンバーPC-4019、ホテルニューオータニ前での撮影、このBタイプのリアスタイルを当時の路上で見かけた人は少ないはず)
⑥1966年11月発行 ベレットBタイプ カタログ
(いすゞカタログナンバーPC-3010、このBタイプの角型ヘッドライトは1968年には通常のベレットにも採用された)
⑦1967年7月発行 ベレットBタイプ カタログ
(上の⑥と中頁を含めて内容は大幅に異なるが、裏面記載のいすゞカタログナンバーは何故か⑥と同じPC-3010)
※※通常のベレットやベレットGT(ベレG)については、機会を改めてご紹介します。