1/19(土)行きますアルマス泊まります ゲストハウスを訪ねる長崎の旅 1日目〜その3~ | ちいたろうのお出かけ日記

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 14:30になり、軍艦島シンフォニーという、軍艦島が現役だった当時の様子を紹介するプロジェクションマッピングのショーが始まりました。横30mというのは伊達ではありません。なにしろ、小学校によくあるプールよりも長いのです。思わず、テーマパークにでも来たのではないかと錯覚してしまいます。
 ガイドの方は、中学生まで30号棟の3階に住んでいたという元住民の男性。流れるような喋りでよどみなく解説していきます。現在は廃墟となった無人島ですが、当時はそこに人々の生活があったことを一枚一枚の写真が物語るのです。
 エレベーターがなかった時代の建物。
「9階にあった幼稚園には、みんな階段を上って通っていました」
 ガイドさんがそんなことをおっしゃいました。子どもたちが階段を上がるのなら、先生方もまた、階段を上がって通勤していたはずです。
「みんなタフだったんだなぁ」
 9階まで階段で上がる。そんなことをやろうなんて、普段は考えません。いや、一日限りならあるかもしれません。例えば観光地に行って、山の中腹にある寺社仏閣を訪れるのに長い石段を上がる。そんなことはあるでしょう。けれど、毎日それをやるかといえば、気が遠くなります。
 そんな生活が軍艦島にはあったのです。そこに人が暮らし、人が生きていた。そのこと残すためには、このミュージアムを作った意義はあると感じます。


 ふと、これを広島でできないかと考えてしまいました。失われた街での人々の姿を紹介する。そして、失われた街をCGで再現し、そこを見学者が訪れる。平和記念資料館が本物を展示し、デジタル技術で広島を語るような施設があってもよいのではないかと思うのです。
 それこそ、高額な料金を払って本物の被曝遺構を上から見下ろし、折り鶴を落とすためにさらに料金を払わなければいけないような施設を作るのであれば、そこにこんな設備があればいいのにな個人的には思うのでした。
 ガイドの方の話によれば、この軍艦島で有名な鉄筋コンクリート造のアパート、30号棟も崩落が始まってしまったとのこと。いつまでも現在の軍艦島を残すことはできません。軍艦島ツアーなんていうのもありますが、見学できるのは島のほんの一部であり、波が高くて上陸できないということもあるようです。だからこそ、島の様子をCGで再現したり、ドローンで撮影した映像でVR体験させることは有効な展示方法でしょう。
 本物には本物のよさがあります。でも、本物が伝えられないところをこういった技術を活用して伝えるのもまた、一つの方法だと思うのです。世界にアニメーション文化を誇るのであれば、こんなところにその技術を活用してもよいのではないかと思ったのでした。


 ミュージアムを出て、お土産やさんが並ぶ坂を大浦天主堂の入り口まで上がります。


「昔はこんなに高かったかなぁ」
と思いながら、1,000円と書かれた拝観料を見上げ、遠くから写真を撮っただけで「大浦天主堂に来たんだ」と言い張ることにしました。


 それよりも気に入ったのは、天主堂の脇を上がる祈念坂という細い坂道。歩いていくと、向こうに猫の姿が見えました。私と目が合うと、猫はこちらにやってきます。首輪をしていないところを見ると、野良猫なのでしょう。なのに、ずいぶんと人に慣れています。私が立ち止まると寄ってきて、逃げるそぶりも見せません。


 きっと、観光客によくしてもらっているのでしょう。厳しい環境で生きていくためにはどうかと思うのですが、この猫にとっては幸せなことかもしれません。


 南山手レストハウスまで上がってひと休み。ここからすぐそこにあるエレベーターに乗れば、グラバー園のゲートに行くことができます。


「グラバー園の入園料も上がっているのかなぁ」
 調べてみると、こちらは大浦天主堂よりも良心的な620円。
「あっちは国宝だし、世界遺産だからなぁ」
 その付加価値が400円ほどの差なのかと無理矢理自分を納得させます。もちろん、払えない額ではありませんが、銭湯が開く時間はもうすぐです。
「少しぶらぶらして、そのまま銭湯に行ってしまおう」
 天気がすこぶる良ければ違ったかもしれません。グラバー園から見る長崎の港と稲佐山は、お気に入りの景色。けれども、今日はあいにくの曇り空。初めて訪れる場所であれば違うのかもしれませんが、長崎は何度も来ている街。天気によって、行きたい場所も変わるのです。


 グラバー園の下まで来たら、乗りたいものがあります。それは、斜行エレベーター。グラバースカイロードという名前がついていて、グラバー園に行くには裏口といった風情です。
 まずは、とりあえずこれで下まで降りてみます。


 ボタンを押して待っていると、ジョギング中らしい男性がやってきました。
「残念。貸切ではなくなってしまった」
 私のための施設ではないので当然なのですが、ひとり占めできると思っていたものがそうでなくなると、なんとなく損をした気分になってしまうのです。ともあれ、男性と一緒に乗り込みました。
 男性は観光客ではなく、地元の方のように見えるのですが、下に向いて開いている一つだけの窓にかぶりつき、ずっとスマートフォンで撮影しています。こうなると、
「あそこから見える景色を私も見たい」
と思ってしまい、さらに不満がたまります。
 動画配信サイトなんかを探せばきっと、そんな動画は上がっていることでしょう。けれども、自分の目で見たいと思ってしまうところがよくないところ。それならもう一度、上まで乗るしかありません。
 大浦天主堂の拝観料を高いと感じ、グラバー園の入園料に「今日は行かなくてもいいや」と思う。極め付けは、無料なのをいいことに、グラバースカイロードにもう一度乗る。つくづく、自分の貧乏性に呆れてしまうのでした。