クッキーハウスの演奏はここでひと段落。鍵盤ハーモニカデュオのための曲集01から、「♪夕日に吠える」をトオルおにいさんとツネおにいさんで演奏します。
この曲を演奏するときのお二人は、いつもながらキリッとしています。会場からも、「おおっ」という声が上がりました。
ツネさんもMCでおっしゃっていましたが、クッキーハウスさんたちは「子どもの頃にやっていた楽器をこんな風に楽しめるよ」とずっと伝え続けてきました。おこがましいことを承知のうえで言えば、私とU氏が子どもたちに対してやろうとしたことと思いは共通しています。
小学校の子どもたちにとって、鍵盤ハーモニカやリコーダーは魅力的な楽器ではないかもしれません。学校でやらされる、苦しいものかもしれません。
これらの楽器を「教育楽器」と呼ぶことがあります。楽器というからには、何か楽しみがあるはずです。大人たちはその楽しみをきちんと子どもたちに示しているでしょうか。何よりも「面白そう」「やってみたい」と子どもたちに思わせなければ、教育は始まらないはずなのです。
そんなことを「突き詰めたらこうなりました」という触れ込みで、ツネおにいさんがリコーダー奏者の中村 栄宏さんを紹介しました。少し照れ笑いをしながら、中村さんが登場します。
「喋るんですね」
開口一番、中村さんが言います。キッチリと決まったプログラムではなかったのか、それともこのアットホームな雰囲気だからなのか。けれども、そんな普通の雰囲気が心地よいと感じられるライブです。
MCの途中でも、音楽室の中をカメムシが飛びます。この音楽室に入ったときからカメムシがたくさんいて、楽団四想の方々がその都度捕まえてくれていたのですが、一向に減る気配はありません。
中村さんもカメムシが近くまで飛んできたことに驚きながら、
「方言で、『ガイザ』って言うらしいんですよ」
と紹介していました。
一曲目はトオルおにいさんのピアノで「♪Summer」を演奏。二曲目の「♪めぐり逢い」は、古い音楽のピッチの話をして、現代の楽器よりも半音低い楽器であるヴォイスフルートも使いながら演奏しました。
中村さんのリコーダーは、呼吸そのものだと感じます。それも、私たちが普通にする呼吸でなく、例えるならブルース・リーやジャッキー・チェンが闘うときのような、呼吸そのものに力がこもっているような、そんな気がするのでした。
「『やらなくていいんじゃない?』と交渉したんですよ」
と言いながら、リコーダーによる現代曲として「♪テナーリコーダーのためのララバイ」を紹介。こちらは、ピアノも何もなく、中村さんのリコーダー1本での演奏です。それでも、会場の誰もがその音に引き込まれていきます。中村さんの音は、何かを語る言葉のような力さえ感じるのです。
演奏が終わり、大きな拍手が鳴り響く中、クッキーハウスのトオルおにいさんとツネおにいさんが登場。
「中村先生にクッキーハウスの編成に入っていただきます」
と言いました。
トオルおにいさんが鍵盤ハーモニカ、ツネおにいさんがユーフォニアム。そして、ミワコおねえさんの位置に中村さんが入ります。
「先生に振り落とされないように頑張ります」
そう言って、「♪チャルダッシュ」を演奏。ミワコおねえさんもそうでしたが、中村さんの指さばきにも大きな拍手が送られていました。
ちなみに、クッキーさんたちも今日の参加者も、中村さんのことを「先生」と呼びます。というのも、中村さんはミワコおねえさんのリコーダーの先生でもあるのです。
師弟競演といったところで、次の曲は「♪みかんの花咲く丘。二人のぴったりと息の合った演奏にみんな大満足なのでした。
最後の曲は、「♪この道」。ツネおにいさんもオカリナで参加します。
もちろん、アンコールもアリ。
「♪マツケンサンバⅡ」は、金色の衣装を身にまとった楽団四想のケンさんが登場し、最後に楽団四想と共演した「♪Buffalo Soldier」では、ケンさんはマツケンのまま鍵盤ハーモニカを吹いて配信ライブは終了しました。
いよいよお楽しみのバーベキューです。中村さんもライブ中のMCの中で、「バーベキュー、バーベキュー」と何度か言っていました。
会場へ向かうとすでに準備ができていて、ビールもたくさん用意されています。
「かんぱーい!」
それを合図に、みんなで美味しいお肉をいただきます。
今回のミュージックキャンプでは、ずっと鍵盤ハーモニカを首からぶら下げて歩いていました。いつでも、どこでも吹けるように。
それを見た中村さんが、
「それいいなぁ。ぼくも持ってこよう」
と言って、プラスチックのソプラノリコーダーを片手に登場。なんと、即席で「♪情熱大陸」を一緒にやることになりました。
ところが、中村さんはこの曲をご存知なかったようで、ちょっとずつ細かいところを確認しながら進めます。
その間に、クッキーハウスさんたちも楽器を持ってきて、トオルおにいさんも一緒になりながら3人での遊びが始まりました。
メロディは、リコーダーの中村さんに任せればよいのです。鍵盤ハーモニカ2人は伴奏にまわり、和音を奏でたり対旋律を探ったりする。楽譜にはない、ここでしかできない音楽を作り上げるのは、いつもとはまた違った楽しみがあるのでした。