頑張れ、ハーバード! | ロンドンつれづれ

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トランプが大統領に就任してから、とても民主主義国家とは思えない独裁者の身勝手を平気で見せつけているアメリカの政権だが、大学という自由と挑戦の機会を与えられるべき場に対する言論統制や、憲法違反とも言える権力の誇示は、あまりにも目に余る。 

 

ここでも「留学生」というアメリカ人にとって「外の者」をターゲットにして、また「エリート」を狙い撃ちにすることで、アメリカ社会の分断を招こうとしているように見える。つまり、ハーバードのような大学に入ることのできないグループの人たちの妬みや嫉妬心を刺激しているのである。

 

嫉妬心と言うのは強い感情で、人々の行動を決定するからだ。同じ戦略を「多様性」を攻撃することでトランプは使っている。つまり、Us vs Them, 「俺たちとあいつら」というくくりでマイノリティ、少数派を相手に二項対立させることで、多数派の有権者を自分の味方につけようという魂胆である。

 

トランプの大学攻撃は、エリート対非エリートという構図なのだ。そしてアメリカには小学校5年生の知的レベルの市民が6割近くいる、という研究報告も先日このブログに書いた。

 

ここではエリートの殿堂であるアイビー・リーグの大学がターゲットになっているが、そのような越権行為に屈する大学があったのには驚いた。 が、さすが名門ハーバードは、学問の府としての理念と教育者としての矜持をしっかりと見せている。

 

 

以下、ウイキペディアより。

 

ハーバード大学はアイビー・リーグの中でも名門中の名門だが、イギリス植民地時代にアメリカ最古の大学として、1630年にマサチューセッツ州ボストン近郊のケンブリッジに私立大学として設立された。当時ニュー・タウンという町名だったが、本国イギリスのケンブリッジのような大学都市にしたいという望みから、ケンブリッジと言う町名にしたという。

 

学部生・大学院生の数は2万5千人を超え、教員数も約2万人に達するという。大学が行ってきた投資と寄付による基金の残高は、、500億ドル(約7兆5千億円)と全米最大の規模だ。校名は創設初期の献金者だった牧師ジョン・ハーバードの名前にちなんでいる。

卒業生は政財界から学術分野まで幅広い分野に広がっており、2018年時点で8人のアメリカ合衆国大統領、160人のノーベル賞受賞者(世界1位)・14人のチューリング賞受賞者・48人のピューリッツァー賞受賞者が出ているほか、32人の元留学生が母国で国家元首となっている。

 

以上、ハーバード大学はアメリカのエリート中のエリートを養成する教育機関だということが分かる。また、「英国ケンブリッジ大学のある大学都市のように」という希望があったということから、リベラルだということは間違いない。ケンブリッジ大学で国際関係学を学んだ私だが、大変にリベラルな教育をする大学だった。

 

もっとも、多くの教育機関は多様性を推進し、批判的思考を教育し、学内での自由な発言を推奨する、つまりリベラルな土壌が保たれているはずだ。そうでなければ、しっかりと自分の頭でモノを考えられる人間は育てられない。

 

アメリカの軍では、士官の部屋には”Think!’(考えろ!)と、そして一兵卒の部屋には”Don't think!”(考えるな!)と書かれた額が飾ってあるとどこかで読んだが、要するにトランプは権力者の言うことに逆らわない一兵卒ばかりを育ててほしいんだろう。

 

多様性や自由な発言の排除とは、要するに少数派に対する差別の容認と、権力者に対する批判の封じ込めだ。リベラルな考え方を許すと、自分の地位が危うくなるので権力者はそれを嫌うのである。しかしそうすることで、国力が落ちるということには目を向けない。なぜなら彼らの目的は自分の力の維持であって、国家の力ではないからだ。

 

トランプのやっていることはまさにそれだ。自分の支持基盤のご機嫌を取るために、イスラエルのネタニエフ政権のやっていることを支持したい。パレスチナ人の苦境を見て見ぬふりをしている保守派・右派の福音派キリスト教徒たちの票を確保しておきたい。だから、学生たちの「戦争反対」「パレスチナ人を救え」という動きは封じ込めたい。そういうことなんだろう。

 

トランプ政権は、大学内で行われたプロ・パレスチナのデモなどが、反ユダヤ的だとして弾圧することに決めたようだが、そのデモでは案外多くのユダヤ人が参加しており、イスラエルのネタニエフ政権に反対の意を唱えていた。イスラエルには「シオニスト」と呼ばれる人たちがいて、ユダヤ正教の人たちとはちょっと違うのである。

 

トランプを選挙で勝たせた支持基盤は、福音派キリスト教徒の人たちと白人至上主義者たちだが、福音派はクリスチャン・シオニストである。つまり聖書に描かれたことを文字通り信じている人たちだ。彼らはイスラエルの現政権を同じシオニストと言うことで支持している。イスラエルは約束された地、そして非キリスト教徒は「最後の審判」で全滅するということを信じているのだ。

 

だからイスラエルにとって邪魔になるガザや西岸は、パレスチナ人に出て行ってもらって綺麗なイスラエル国家を完成したい。それに反対する連中は皆テロリスト、ということになるのだ。トランプはこのシオニズムの考えをそのままアメリカ国内で実行しているのである。

 

しかし、対テロと言えば何でも通るわけではない。 英国ではロンドンで同時多発テロがあった時に、警察権力を強め、道を歩いている市民(観光客含む)を警官が疑わしいと思っただけで簡単に拘束できるような法を通そうとしたが、貴族院がこれに対し「何百年もかけて培ってきた人民の自由と民主主義を一晩で覆すことはしてはならない」として通さなかった。

 

いくらトランプが大統領だからといって、彼の宗教的(というよりは彼の支持基盤の宗教)信念を、アメリカのすべての大学に押し付けていいのか。 アメリカの裁判所がハーバード大学の訴えに対し、どのような判決をするのか…。

 

しかし、最高裁判事もトランプが自分の息のかかった人物を過半数送り込んでいるので、あまり希望は持てないかもしれない。これまでも、堕胎禁止法など、トランプと支持者の喜ぶような判決を何度も出しているのだ。

 

政治家に過剰な権力を持たせると、愚かな国民が愚かな政治家を選んでしまい、勘違いをした愚かな人物が独裁的になって自分の私利私欲のために人民を踏みつけにするということを始めるのだ。

 

そして周りの人間はその権力を分けてもらおうと思って、おべんちゃらの競争になる。誰も「良くないことは良くない」、と言わなくなるのだ。そうなると権力者は違法行為をしようと何をしようと、野放しになってしまう。

 

そのために三権分立があるが、日本でもかつて首相の立場の人物が、検察庁のトップを自分の息のかかった人物で押さえておこうとしていた事実がある。

 

間違った人物に権力を持たせてしまうことは、本当にアブナイのだ。〇チガイに刃物という言葉があるが、本当に要注意である。

 

おそらくアメリカ人も、トランプがこのような振る舞いをするようになるとは、想像がつかなかったのではないだろうか。しかし、いったん権力を持った暴君はそれを手放そうとしないだろう。

 

現に彼は、自分の任期を永久に伸ばそうと色々画策を始めているではないか…。

 

 

 

以下はブルームバーグ誌の記事。

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サマーズ氏「専制政治の所業」と非難-ハーバード大巡る米政権の決定

(ブルームバーグ): 米ハーバード大学名誉学長のサマーズ元財務長官は22日、同大の外国人留学生受け入れ資格を剝奪するとしたトランプ政権の決定を強く非難した。「これは専制政治の所業だ」だとし、「ハーバード大はまず抵抗することから始めなければならない」と語った

サマーズ氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「これは悪質で違法で、愚かであり、非常に有害だ」と発言。「米国で学びたいと望む6000人もの非常に優秀な若者たちにその機会を与えないことに、いったい何の意味があるのか」と論じた。

国土安全保障省は「安全とは言えない学内環境」に言及してハーバード大に外国人留学生の受け入れを認めないと通告するとともに、同大が中国共産党に協力しているとも主張した。在籍中の留学生は他校に転校しない限り滞在資格を失うことになる。

外国人留学生の交流の機会を断つことは米経済や国家安全保障に打撃を与え、米国のような民主主義国家の原則にも反するとサマーズ氏は指摘。「この種の行為を検討する政権が存在することにがくぜんとしている」と述べ、「ホワイトハウスからそのような違法な命令が出る政権の一員であったなら、私は直ちに辞任していただろう」と話した。

サマーズ氏は、外国人留学生がハーバード大にとどまることができるよう法的措置が講じられるよう望んでいるとコメント。同大で学ぶ機会を「人生を通じて夢見てきた」国外の学生たちを標的にするのは不公平であり、「彼らにとってハーバード大は米国の最善の象徴だった」と語った。

一方で、トランプ大統領の行動は、外国人留学生がもたらす有望な市場を狙う世界各国には恩恵となる。「われわれは英国の高等教育、オーストラリアの高等教育、ニュージーランドの高等教育を助けるために、国家として最善を尽くしていることになる」とサマーズ氏は説明した。

その上で、米国は「この国の誇り」を奪い、それを自ら壊しているとし、「これは壊滅的で自ら招いた傷だ」と述べた。

 

Larry Summers Slams Trump for Ban on Foreign Students From Harvard - Bloomberg

 

サマーズ氏「専制政治の所業」と非難-ハーバード大巡る米政権の決定

 

 

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ハーバード大「譲歩の余地はない」と徹底抗戦、トランプ政権の圧力への「試金石」に

 

【ニューヨーク=金子靖志】米連邦地裁は23日、トランプ米政権によるハーバード大の留学生受け入れ停止措置を一時差し止める決定を下した。徹底抗戦の構えの大学側と、大学への統制を強めたい政権との対立は一段と先鋭化しており、着地点は見えていない。

「政権が教育内容や教職員、学生への違法な統制を押しつけようとしている」。ハーバード大のアラン・ガーバー学長は23日、政権の措置に強い懸念を表明した。「全米の留学生にとっても深刻な警告だ」とも述べ、訴訟を通じて対抗する姿勢を鮮明にした。

一方、政権側は、パレスチナ自治区ガザ情勢を受けた学生の抗議活動を巡り、反ユダヤ主義への対応が不十分だとして、「反ユダヤ主義対策」の名目で大学の学内統制の強化を進めようとしている。大学側はこれを「表現の自由の侵害だ」として断固反対しており、双方の主張は平行線をたどっている。

政権は4月以降、同大に対する補助金の凍結を段階的に進め、凍結額は30億ドル(約4300億円)近くに達した。今回の措置は、大学の財政を支える柱である留学生の締め出しを狙ったものと受け止められている。

政権は、アイビーリーグと称される米北東部の名門大を中心に、補助金を凍結するなどして圧力を強めているが、中でもハーバード大の動向は「試金石」として注目を集めており、同大は政権の要求に「譲歩の余地はない」との立場を貫く考えだ。

 

ハーバード大「譲歩の余地はない」と徹底抗戦、トランプ政権の圧力への「試金石」に