ソ連兵「接待」証言99歳死去、佐藤ハルエさん | ロンドンつれづれ

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4日前に、以下のようなニュース記事を読んだ。

 

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敗戦直後、旧満州(中国東北部)で開拓団を襲撃から守るため、旧ソ連兵に「性接待」したと証言した岐阜県郡上市の佐藤ハルエさんが18日、老衰のため死去した。99歳だった。

 

 5日に誕生日を迎えたばかりだった。年明けに体調を崩して一時入院した後、自宅に戻り亡くなった。通夜は20日午後7時、葬儀は21日午前11時から、郡上市白鳥町恩地394の1、セレモニーホール天昇。喪主は長男茂喜さん(70)。

 

 旧黒川村(現白川町)の出身。一家で黒川開拓団として旧満州に入植した。開拓団や遺族会の記録などによると、戦後の混乱期、暴徒の襲撃に遭い、近くに駐屯していた旧ソ連兵に警護を依頼した際、開拓団幹部の指示で、ハルエさんら17〜21歳の未婚女性たち約15人は「性接待」を強いられたという。帰国後はいったん黒川に戻ったが、いづらくなり、郡上市内の開拓に参加し、苦労を重ねた。

 

 2018年、岐阜市で行われた集会では「『夫が兵隊に行かれた奥さんには頼めん。あんたら娘が犠牲になってくれ』と言われた」と団幹部の要請だったことを赤裸々に語った。

 

 証言は新聞、テレビにも報じられ、大きな反響があった。茂喜さんによると、「本当にあったことだ」と証言を後悔している様子はなかったという。茂喜さんは「母が生きて帰ってきたおかげで、戦後僕ら4人の子どもが生まれ、孫も曽孫も生まれた。母が満州で死んでいたら僕らはいないんです」と語った。

 

 ハルエさんらの証言が注目されたことなどを機に、黒川開拓団の遺族会は18年、町内に詳細な碑文を設置し、後世に伝える努力をしている。会長の藤井宏之さん(71)は「二度と悲惨なことを繰り返さないよう、証言してくれたんだと思う。私たちも引き継いでいきたい」と語った。(伊藤智章)

 

 

 

この記事の中では、ハルエさんらは、「団幹部に頼まれて、性接待を行った」というが、ソ連兵の機嫌を取るために差し出された女性たちだったというわけだ。

 

彼女たちがどうしても嫌だったのなら「断ることもできた」と言う人たちもいるかもしれない。 しかし、その時は、その要請を受け入れざるを得ないような状況にさせられていたのだろう。

 

しかし、後から考えれば、それは「性接待を強いられた」という表現が正しいと思ったのだろう。そして、故郷では「いづらくなった」というのだから、人々から「性接待」を行ったことを中傷されたのだろう。

 

 

 

 

動画を見ると、彼女らがどれほど長い間、このつらい体験を黙って抱え続けてきたか、自分たちの犠牲が、他の人らの命を助けたという事実があったとはいえ、結局中傷されたという二次被害にもさいなまれつつ、ということがわかる。

 

 

 

ところで、今、話題になっている芸人M・Hの一件は、最初は「不同意性交」があった、という報道だったが、それに対しては本人が「事実無根」としている。 「不同意性交」の「不同意」の部分か「性交」の部分か、あるいはすべてを否定しているのか、それは裁判にならないとわからない。

 

 

しかし、もし飲み会の後に「性的行為」があったのだとすれば、M・H氏が「同意があった」としても、女性はあとから「強いられた」と思うかもしれないだろう。上記のソ連兵を相手にした女性たちのように。

 

「有名人が来るから、飲み会においで」といって誘われて、楽しい思いをしたあとに、「性接待」を勧められる。 これはなかなか断ることが難しい状況になりはしないか。 

 

VIP芸人の機嫌を取るために集められた女性たちは、まさに「性接待」のためにそこに集められたのだ、とそこで理解するだろう。 その状況で今更断ることは、なかなか勇気がいるかもしれない。

 

訴え出ている女性たちはネットで「不同意じゃないんだろ」とか「どうしても嫌だったら断ればよかったのに」とか「8年も前のことをなんでいまさら」「なぜ警察じゃなくて文春に」などという中傷を受けているようだが…。 ソ連兵に性暴力を受けた女性たちは何十年も経ってやっと口に出すことができた、と言っている。

 

いわゆるM・H氏に対する「性接待」は、様々な地方で複数の女性が声を上げているようで、要は地位の低い芸人がVIP芸人の機嫌を取るために、行く先々で女性を集めて「性接待」を行っていたのならば、権力者におもねるために女性を差し出すという点で、本質的には上記の新聞記事の「ソ連兵に性接待」と大して変わらないのである。

 

暴力や監禁をして性加害を行っていたなら言語道断の犯罪だが、たとえ犯罪でなかったとしても、上記のような状況を作り出して女性があとから「強いられた」という声を上げるというのは、まさに性接待に他ならない。

 

ジャニー喜多川の被害児童が、翌日お小遣いをもらっていたからといって、「同意があった」、あるいは「金目当て」などと中傷されるのもひどい話だが、どうして日本では繰り返し、被害者に対し、このような中傷が行われるのだろうか。

 

接待の相手がソ連兵だったら「ひどい話」で、人気芸人だったら、なぜ女性が悪いといわれるのだろうか。 実際、このVIP芸人が差し出された女性を「食っちゃって」いるんだとしたら、不同意でなかったとしても、かなり問題だ。

 

雑誌によると『女性セレクト指示書』というまで出てきており「H・Mのために女性を集める後輩芸人に対するもので、女性のタイプや好みの職業などが詳細に記されおり、NG項目も書かれていた」そうで、格安航空のCAさんはNGになっていたそうである。

 

なんの精神的つながりもない相手と性行為をする。しかも、女性は風俗のプロではないわけだ。(プロだとしても日本では売買春は違法である) たとえ強姦でなかったとしても、シロウト相手に人を人として扱わない、ひどすぎる話ではないだろうか。

 

これで女性にお金を渡しているのなら、とりもった人は売春法違反となるだろうし、お金を渡していないのなら、まったくタダで女性を性のはけ口に利用しているだけということになる。

 

被害女性だけではない。自分の妻や子どもに対しての誠実さにも大いに問題があるだろう。そのような振る舞いを家族が喜ぶわけはないのだから。

 

ついでに言わせてもらえば、金を払ったプロだったらいいのか、という話でもない。なぜ女性がそのような仕事をしなくてはならないかをよく考えれば、なぜ売春が違法になっているのか、その理由もわかるだろう。

 

もっともここまで書いたのは、「雑誌で取りざたされているVIP芸人が、(たとえ不同意でなかったとしても)不特定多数の女性相手にその場限りの性行為を実際に行っていた」ということが前提である。 

 

最近の文春は売上さえ伸びればいいとばかりに、ジャーナリズムの倫理観もへったくれも無いいい加減な記事を平気で乱発しているように見えるので、この件も疑いの目を持って見ている人はいるだろう。

 

なので、これが裁判で覆された場合は、もちろん彼は批判の対象ではない。

 

しかし、各地方でそのような場を設け、性行為が本当にあったのだとしたら...。そして彼を擁護する声がかなりあるということは...。

 

これはいち芸人の話というより、日本社会全体の問題なのではないか。

 

下にリブログさせていただいたのは、「月草の詩」のnanohana-sakuraさん。

 

戦争という狂気に駆られた状況でなくても、女性を物として扱う文化がまだまだ残っている日本」という一文に、はっとさせられた。