アニバーサリー | ロンドンつれづれ

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羽生結弦さん、プロ転向後1年のアニバーサリーにあたって、心より祝福をさせていただきます。

 

ちょうど昨年の今日、ファンはドキドキしながらあなたの会見を待っておりました。

 

何を発表されるか、長年のファンにはもう予測はついていながらも、「競技生活を修了し、プロのアスリートとして出発する」という決意表明には、様々な思いが胸を去来いたしました。

 

「引退ではない」との力強い言葉に胸をなでおろすと同時に、もう競技会でのあの雄姿を観ることは無いという虚無感と、その決断にいたる原因を作ったと想像される大きな権力に対する怒り、などなども混ざり、しかし自由の羽を大いに羽ばたかせて飛翔するであろう羽生選手の将来への希望なども大きく、アンビバレントな気持ちでした。

 

それから1年。

 

それまでもドラマティックなアップダウンのローラーコースター状況の羽生結弦選手号から振り落とされないように乗ってきた我々ファンは、プロのアスリートになった羽生さんに、さらにスピードアップしたローラーコースターを提供してもらい、目まぐるしい情報や新たな感動をいただきながら、感謝の1年を過ごすことができました。

 

プロローグ、GIFT、ノッテステラータと羽生さんのソロや座長アイスショーはもとより、SoIやFaOIといったこれまでのアイスショーへの出演も含め、休むことをしらないかのようなプロ元年。 28歳という、演者としてまさに旬の羽生さんの成長はもちろんですが、既存の常識を破ったアイデアや構成とともに、ファンもアイスショーの質や可能性、ということを共に学ばせてもらったような気がします。

 

残念ながら、私は羽生さんのソロ・座長のショーを生で見ることはかないませんでしたが、ライブ放映、サブスクでの放映などで、すべての演技を観ることはできました。そして、SoIとFaOIは、現地で観ることもかないました。

 

チケットを手にすることができず、プロローグもノッテステラータも諦め、GIFTに至っては父の葬儀の翌日にライブ配信を観たのですが、無理をしてでも観て良かった、と思いました。 数か月にわたる末期がんの自宅介護に疲れた私の心の中に染み入るように入ってきた「あの夏へ」は、私にとって特別なプログラムになりました。

 

 

 

 

下は、ISUの公式解説者のマーク・ハンレッティ氏の言葉です。 GIFTを観た後、「あの夏へ」の動画クリップを彼に送り、「父を亡くして疲れ果てていた私の心に入り込んできた演技。どれほどこのプログラムに救われたかわからない」と言うコメントをつけました。

 

 

「これほど多くのチャンピオンが世界中に生まれたとしても、それこそが彼(羽生選手)がここまで突出したスケーターだという理由だと思う…。(この演技は)まさに競技時代よりもますます素晴らしい!」という返事がマークからは届きました。

 

 

「人の心に届く演技」というステレオタイプの表現ではたりない。 

 

たった一つのプログラムで、観る人の人生を変えるかも知れない演技。 また見たい、なんどでも観たいと思わせられる、そんな演技は、ひとつの芸術作品なのだ。

 

 

音楽があり、振り付けがあり、高難度のエレメンツがあるのがフィギュアスケートのプログラムだが、そこに命を吹き込むことができるのはそれを演じているスケーターなのだ。

 

 

 

羽生選手の演技は、ジュニアのころから「伝えたい」思いに満ち溢れていた。「僕を見て! 僕の伝えたいものを受け取って!」、と叫ぶような演技だった。一目見て、「この子はなにか違う。他のスケーターとは違う」と思わせるものを持っていた。

 

 

震災を経て、また思春期を通り越して、2度のオリンピックの経験を得て、今、彼は「見てくれる人のために」滑っている。 伝える思いの溢れるような作品を作り出している。ひとりよがりの天才ではないのだ。

 

 

プロとしての責任感と人を幸せにしたいという優しい強さを持って、羽生結弦というプロ・アスリートは、プロフェッショナリズムと社会性・公共性を備えた一流の芸術家として君臨している。彼の作り出すアイスショーは、「来たかいがあった」と思わせるだけの価値を備えているのだ。

 

そもそも、たった一人で35,000席もある会場をフルハウスにし、さらに「チケットが手に入らない!」という状態を作り出せるようなスケーターが今までいただろうか。世界にひとりでも?

 

 

1年前には不安があった、と彼はいうが、あの決意表明に不安を抱いたファンは少なかっただろう。 「彼ならきっとこちらの想像以上のものをアチーブする」。そう信じていたファンの方が圧倒的に多かっただろう。 そして彼はその期待以上のものを提供した。

 

かつて、英国にいたジョン・カリイという天才スケーター、アイスキングという映画にもなったが、彼も自分のカンパニーを作ってユニークなアイスショーを行っていたが、彼はメンタルが弱く長続きしなかった。そして彼は共に滑るスケーターたちをうまく管理することも苦手だったのだ。

 

 

羽生さんは、たった1年で、たった一人で、これほどの結果をだした。 いや、たったひとりではできなかった。 彼になら、自分の才能を惜しみなくさしだそうという異業種の天才が次から次へと現れた。 

 

それほど、羽生結弦は旬の素材なのだ。 しかし、「旬」でい続けるのは、本人の天才と想像を絶する努力がなければ不可能だろう。

 

 

次はなにを魅せてくれるのか。 次の1年も楽しみでたまらない。 が、心身のメンテナンスだけは怠らないよう、自分を大切にしてほしい。 

 

 

なによりも大切なのは羽生さん自身の健康なのだから…。

 

 

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羽生結弦

くんは本当に全世界の人から愛されていると思うので、羽生くんぐらいみんなに愛されるスケーターになりたいなっていうふうに思います。」