ウンザリする?ロイヤルメンバー | ロンドンつれづれ

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1月10日。

 

かねてより話題になっていた英国王子、プリンス・ハリーの「暴露本」が本国イギリスで出版された。 内容はロイヤルファミリー、彼の父親や兄王子、その配偶者などとの軋轢に関するということで、発売前より英国民の間でも賛否両論。

 

1日早くスペインでフライングで発売されてしまったため、ガーディアン紙などのメディアでその内容を紹介した記事が出ており、物議を醸していたが…。

 

 

ガーディアン紙によると、王室のメンバーとの軋轢を悪化させるのは、特に以下の6点だという。

 

1.ドッグボウル・ファイト

ヘンリー(プリンス・ハリー)によると、2019年、彼の住居であるノッティンガム・コッテージにおいてウイリアム王子がメーガン妃を「気難しくて礼を知らず、不愉快」と批判したという。ヘンリーによると、その後ウイリアムは彼の襟をつかみ床に押し倒したためネックレスが切れたと。その際、床にあった犬の皿が割れて自分は背中に傷を負ったとしている。


2. ホルモン異常?

メーガンによると、ヘンリーとの結婚式の際、メーガンと皇太子妃のキャサリンの間でいざこざがあったという。式のリハーサルについてのキャサリンの意見を「出産後のホルモン異常」と言ったメーガンにキャサリンはいたく気分を害した。ウイリアムはメーガンに(式に関して)英国ではそのようなやりかたはしない、と指摘をしたという。さらに、本ではケイト妃はシャーロット王女のフラワーガールの衣装が大きすぎるといってメーガンを泣かせた、と書かれている。

3. ナチの制服事件

2005年にヘンリーがナチのコスプレをしてパーティに行ったことに関し、彼は皇太子と皇太子妃にも責任がある、と書いている。彼はパーティに行く前に兄夫妻に衣装を見せて、どう思うか聞いたというのである。その際、夫妻は大笑いして、いいんじゃないの、と言った。そしてその衣装の写真がメディアに放出されてしまった、と。

4. タリバン兵の殺害 

ヘンリーはアフガニスタンでの戦いで、アパッチのヘリコプターの副操縦士として25人の人を殺したと本の中で暴露した。6回の飛行任務中での殺害について、彼は誇りにも思っていないが恥じてもいない、チェス盤の上の駒を殺したようなものだとしたが、これを暴露したことは彼の身の安全を脅かすことになるかもしれない。

5. パブの裏庭で

ヘンリーは、あるパブの裏庭で、乗馬の好きな年上の女性を相手にむしろ屈辱的な状況で初体験を得た、と書いている。「彼女が私の尻を叩き押さえ付けた後、急いで彼女の上に乗ったんだ。パブの裏でことに及んだのは間違いだった」としている。

6.ドラッグ
プリンス・ハリー(ヘンリー)は、コカインやマリワナ、マジックマッシュルームなどのドラッグを俳優のコートニー・コックスの家で10代のころに使ったことを告白している。「もちろん、それ以降もちょくちょくそのころコカインは使っていたよ。ハンティングの週末に誰かの家とかで、勧められればね。それほど楽しくもならなかったし他の人たちのようにハイにもならなかったけれど、変わった気分にはなったからやっていたんだろうな。別の人になれるような感じ。」

 

Drugs, sex and killings: six explosive revelations from Prince Harry’s book | Prince Harry | The Guardian

 

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生まれた時から「スペア」=予備としての立ち位置にいたことへの不満。ヘンリーの自叙伝にはそれが溢れている。

 

 

Heir and spare(エア アンド スペア),世継ぎと次男、という言い方は英語では普通にあるが、王室でなくとも資産をたくさん持つ貴族階級の家庭などで、長男と次男、あるいは長子とそれ以外の子どもたちの間には軋轢があるのかもしれない。

 

しかし、長男であり、王室の世継ぎであるウイリアムには、これまで気楽に自由を楽しんできたヘンリーには理解できない悩みもあっただろうに。

 

Princes Harry and William watch a flypast to mark the centenary of the RAF, 2018

The enduring anguish of being the royal 'spare' - BBC News

 

昨年12月のネットフリックスのドキュメンタリー、Harry and Meganを見たが、やはり予想通り、この二人の側からだけ見た「英国王室」への批判がちりばめられており、王室メンバーだけでなく、多くの英国民の心を傷つけた。

 

世論調査では、メーガンが「2022年にあなたがうんざりしている有名人」ランキングで1位になったと1日の英紙「デイリーメール」が報じた。2位はヘンリーだそうである。

 

メーガンは昨年3月に、アメリカのテレビ番組のインタビュー番組で英王室で人種差別された、と訴えるなどしてメディアを使って英王室批判を展開している。ネットフリックスのドキュメンタリーでもそれを繰り返していたので、英国で大変に評判の悪かったオプラ・ウインフリーとの対談の反省や後悔は無いようである。ヘンリーにしても、暴露本の内容を見る限り、父王や兄である皇太子との和解の努力をするよりは、50億円とも言われる印税の方を取った、とみている人が多いようだ。

 

今やヘンリーの人気度は昨年の11月から7ポイント下がり、26ポイント、これまでで最低だそうである。 英国民の間ではメーガンの言動のファクトチェックが行われ、数々の疑問点が指摘されて批判の声が相次いでいる。
 

メーガン妃が世論調査で2022年「うんざりしている有名人」1位に 2位はヘンリー王子 | 東スポWEB (tokyo-sports.co.jp)

 

BBCでは、ヘンリーの自叙伝本の出版にあたり、複数の王室評論家などの懸念の言葉を報道。

 

BBCのラジオ4では、チャールズ国王をインタビューしたこともあるディンブルビー氏は「暴露するといって、童貞を失う話や薬物使用のこと、そしてアパッチで人を撃ったことなどを話しているが、これは全てBクラスのセレブリティが暴露しそうなことだ。ヘンリーは母親を事故で失うという悲劇的な事件が出発点になったナラティブを作り上げようとしているのだと思うが…、チャールズ国王はこういったことにひどく傷ついており、早く終わりにしたいと思っているだろう。」と話した。 それでも戴冠式にはヘンリーを招待せざるを得ないだろう、そうしなければさらに火に油を注ぐだろうから、と付け加えた。

 

Prince Harry revelations ‘like those of B-list celebrity’ | Prince Harry | The Guardian

 

しかし、王室のゴシップは、英国民の大好物であり、メディアが見過ごすわけはない。ヘンリーとメーガンは、英メディアを敵に回して訴訟を起こしたりしてはいるが、アメリカのメディアは利用して莫大な利益を得ている。 共依存と言ってもいいかもしれない。

 

今現在、「スペア」は英国アマゾンの売り上げナンバー1だそうである。Waterstoneなどの大手の書店でも、店内の一番目に付くところにヘンリーの本を平積みにして積み上げている。

 

兄であるウイリアム皇太子との喧嘩や、父王にカミラと再婚しないでくれと兄弟で頼んだこと、コカイン使用などが、人々の興味を引くのである。

日曜日のITVのインタビューで、ハリーは「これまで王室の他のメンバーだって、いろんな情報をリークしたり印象を植え付けたりして来ているんだから、彼らだって暴露本を書いてきたようなものだ。そうして僕や僕の妻がこの国にいられなくなるほどいろんな言葉を使ってきたんだから」といって暴露本を出したことの自己弁護をしたのである。

 

アマゾンや大手の書店では、プレセールで予約したお客には正価28ポンドの半額、14ポンドで本を売っている。ロンドン、ピカデリーのウオーターストーン書店では、過去10年でも、一番たくさんの予約が入った書籍だ、と話している。おそらく、2023年のベストセラーになるだろう、としている。


しかし、小さな個人書店ではプレオーダーもそれほど入っておらず、人々の関心はそれほど高くないそうだ。「うちでは、この本はコアな売れ筋ではありません。 それに多くのメディアが本の内容をほとんど書いてしまっているので、今から本を買って読もうという人がいるのかどうか」と書店主は話している。「ボブ・モーティマーやリチャード・オスマン、エリー・グリフィスと比べても、スペアの予約はそれほど入っていませんよ」

 

来週の火曜日には、英国でのスペアのセールスの情報がニールセンによって報告されるそうだ。

 

Prince Harry’s memoir hits No 1 on Amazon, predicted to be one of year’s bestsellers | Books | The Guardian

 

 

それにしても…。

 

「素晴らしい。これで君は私にエア(後継者)とスペアを与えてくれた。私の役目はこれで終わりだ」。第2子の自分が生まれた時、父チャールズ皇太子(当時)はダイアナ妃に、冗談でそう告げたのだという。英王室のハリー王子は、回顧録でそう書いているが、赤ん坊だったヘンリーが自分でそれを覚えているはずはない。 

 

誰かが後から彼に伝えたとしても、チャールズは本当に余計なことを言ったものだ。 それを聞いたダイアナ妃はどう思っただろうか…。

 

Prince Harry with his mother, 1987
Diana's absence is biggest presence in Harry's memoir - BBC News

 

 

 

暴露した内容には、つかみ合いの兄弟げんかや嫁同士の軋轢など、どんな家族でもあり得るような内容もあって、新聞記事についたコメントも「こんな男兄弟の喧嘩なんか別になんてことない」「結局、地位もお金も、自由も欲しいというわがままな、かまってちゃん」といったようなものもあった。

 

 

しかし、生まれながらに「予備」として周りが扱うという環境は、やはり地位と権力を持ったファミリーならではのことだろう。 それを感じながら育ったという一人の男性の葛藤は本人の口からきいてみたいと思う人もいるのではないだろうか。

 

 

以下、BBCの書いた記事が面白いのでこちらに引用したい。

 

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ハリー王子は、自分は家族によく「スペア」と呼ばれていたと書いている。

「うちの家族は特に善悪の判断なく、僕をそう呼んだ。あけすけに。僕は影、脇役、プランBだった。 ウィリーに万一何かあった場合のために、僕はこの世に生を受けた」と、ハリーは書く。 「後継ぎと予備」という言い方は、貴族階級の間でしばしば使われてきた。称号や所領の継承には後継ぎが必要で、長子が自分の子供を持つ前に万が一のことがあった場合には、代理としての弟妹が必要だからだ。

「予備」と呼ばれることに、ハリー王子はいらだったに違いない。だからこそ自著のタイトルに使ったのだろう。さらに、王家の代役候補という不安定な立場の難しさ、財力と特権はあってもこれといった使命や目的のないまま存在することの難しさを、この言葉は表している。

「立場があるようでないに等しい」。ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校の現代王室研究センターに所属する王室専門家、ポーリーン・マクララン教授はこう言う。

「大勢と握手して、にこやかにする以外、明確な役割がない」のだと、教授は話す。

あてのないぜいたくな暮らしにも、それなりの退廃的な魅力はあるのかもしれない。しかし、そこには満たされない思いや、とりとめのない方向性のなさという深刻なリスクも伴う。

だからこそ、現代のスリム化した王室は、こうした「予備」の役割をもっと明確に定義するか、あるいは継承順位が低ければ王族としての役割を果たすことを期待するのをやめた方がいいと、マクララン教授は言う。

各国の王室史に詳しいエド・オーウェンズ氏によると、そうして王室を「ダウンサイズ」して縮小した好例が、スウェーデンやデンマークだという。両国の王室では、継承順位の低い「スペア」は、「王族としての責務に妨げられず」に一個人としての生活を送れるのだという。

 

オーウェンズ氏は、いかに第2子が重圧にさらされるかの典型が、故エリザベス女王の妹マーガレット王女だったと話す。

 

2002年に亡くなったマーガレット王女は、マスコミに私生活を「ばらばらにされた」と、オーウェンズ氏は言う。君主本人や直接の跡継ぎならば、マスコミもそこまでのことはしないだろうというほどに、マーガレット王女は取り上げられたと。

 

Princess Margaret and Queen Elizabeth II at the Badminton Horse Trials, 1973

 

おとなしく「二番手」として控える以上の役割を期待されていない第2子は、君主や直接の継承権者と異なり、大衆紙などのからかいの対象となり、「ふざけた見出し」をつけられ、マスコミの詮索(せんさく)からも君主ほどには守られないと、オーウェンズ氏は指摘する。

 

「王位から遠い王族は、どう扱ってもいいとマスコミに思われている。直接の継承権を持つ王族の尊厳は認められても、若い王族は軽くあしらわれてしまう」

 

「スペア」は「予備で、気晴らしで、気を紛らすもの」に過ぎないのだと、ハリー王子も書いている。

 

アンドリュー王子も、役割探しがあまりうまくいかなかった王族の1人だ。本人が否定する性的暴行疑惑が公になる以前から、しきりに海外に出かけることから「エアマイル・アンディー」というあだながつけられていた。

その一方で、成功例もある。恥ずかしがりで、決して王位を望んでいなかった国王ジョージ6世は、エドワード8世の弟だったが、子供のない兄が退位した後に即位し、第2次世界大戦中の指導者としてその役割を果たした。

その父ジョージ5世も、第2子だった。1892年に兄王子が28歳でインフルエンザで死去したため、弟が即位することになったのだった。

「スペア」を二番手に置く継承の原理とは別に、家族の関係性という視点から見るのがいいと、マクララン教授は言う。いわゆる「2番目シンドローム」で、自分より地位が上で責任も多く与えられている長男や長女に、下の子は反発しがちなのかもしれないと。

 

Princess Margaret with Diana Princess of Wales, and princes William and Harry, after the Trooping the Colour ceremony in June 1988

王族でなくても、これは兄弟姉妹の間にあつれきを生みかねないと、教授は話す。年長の子供は、年下の子供に責任感が不足しているといらだつようになりがちだという。これは、継承の仕組みだけでなく、心理面でも火種になりやすい。

若い王族が年長者の権威を脅かす、不見識で素行不良なライバルとして否定的に描かれるのは、歴史的にも前例がたくさんある。

たとえば、1973年のディズニー映画「ロビン・フッド」は、12世紀の兄弟間の権力闘争を、悪いジョン王と良いリチャード王の争いとして描いた。

 

しかし21世紀になった今、もはや「スペア」王族を制約する必要も、否定的になる必要もないのだと、歴史家のサー・アントニー・セルドンは言う。

ハリー王子とメガン妃は今後、数々の善行を行うことができるはずだとサー・アンソニーは言い、「賢い思いやりを優先させるなら」、今後ただその力を消耗させるのではなく、王室にとっても「素晴らしい未来」の原動力になり得ると話す。

「誰かが、大人らしく振舞わなくてはならない。兄と弟がそれぞれ深い傷を負っているのは、とても理解できる。このままいけば、これは果てしなく続き、深刻な害をもたらすようになる」

「まだ回復可能だが、兄弟はお互いを認めあって譲り合わなくては。今のこの争いに、勝者はいない」と、サー・アントニーは警告する。

 

 

【解説】 イギリス王室の「予備」として……いつまでも続く苦悩 - BBCニュース

 

The enduring anguish of being the royal 'spare' - BBC News

 

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英王室にメーガンが嫁ぐと聞いた時、多くのイギリス人は喜ぶと同時に、「大丈夫か?」という反応を示した。

 

それはメーガンが黒人の血を引いていたからではない。

 

アメリカの文化、それもハリウッドのセレブリティ文化を持ち込んでくるのではないか、という杞憂であった。

 

そして、それは当たっていたように思う。

 

英国の中でもことさらに英国文化と伝統を重んじるしきたりのあるファミリーに、女王陛下を「あなたのおばあちゃんなんだから、会ったらハグすればいいでしょう?」と言ったというメーガンが馴染むわけはないのだ。

 

自分は王室なんか恐れていないということを言いたくてわざと言ったのかもしれないが、それは王室ファミリーの破壊につながる態度だったのだ。そして英国民はそれを望んではいない。

 

英国民は伝統を頑なに守る王室を、ちょっとおかしいと思いながらもそのまま保っておきたいと考える人種なのである。

 

ケンブリッジ大学が、相変わらず黒いガウンを着て毎週金曜日の夜に「フォーマルホール」のディナーを行うのを、学生たちが楽しんでいるのと同じように。

 

そのエスプリというか、英国らしさを楽しめない人は、特に王室には向いていないだろう。

 

結婚式の件では、シャーロット王女の衣装のオーバーサイズだけでなく、タイツをはかずに素足でとメーガンが主張して、ケイト妃が「英国ではフォーマルな場では素足はダメ」と言ったこともメーガンの気にいらなかったようである。

 

ハリーも元々色々な不満があっただろうが、今は愛するメーガンさんと子どもたちとアメリカで裕福な暮らしをしているのだから、もう自分の幸せを確立することだけに目を向けていればいいのに。イギリスの家族とは、自然に疎遠にしていけば、「スペア」の人生を送る必要もないのだ。順調にいけば、次の王はウイリアムであり、その次はジョージ王子が国王になる。ハリーが王になることはほとんどないのだ。

 

もう、ハリーもメーガンも、自分の生活に集中し、インタビューや書籍で自分たちが捨ててきた家族の悪口を言い続けるのをやめた方が良い。そう思っている人は大勢いるだろ。

 

しかし、ネットフリックスも高い視聴率を上げ、出版元のペンギンランダムハウスも今笑いがとまらないだろう。 二人に入ってくるギャラや印税も、莫大なものになっている。

 

やはり、この二人はこの先もずーっとこうやって収入源を保っていこうとするのだろうか…。

 

ウイリアムやキャサリンの受難は続くのだろうか…。