ISU総会 | ロンドンつれづれ

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以下のビデオは、今プーケットで行われているISU総会のブランチセッションの会議である。

 

この中で、1時間13分あたりから立ち上がって発言している男性がいるが、彼の言っていることは面白い…。

 

 

  • warns of danger of simplifying PCS
  • says that as an ISU referee, it's "not nice" having to write in his reports that he suspects judges of basically cheating
  • says that current PCS and GoE system easily allows judges to "place" skaters
  • says that current PCS system is fine, and judges are competent and know what they are doing. What leads them to abuse the system ("place" skaters, or cheat) is the fear of being punished for stepping outside of the expected scoring (instead of staying within the pre-defined "corridors" for certain skaters)

 

彼は、まずPCSを単純化することの危険について話し、自分もISUのレフェリーとして、審査員が実際のところ不正を行っているという報告書を書かなくてはならないという状況はよろしくないと思っていること、だが、現在のPCSとGoEのシステムは審査員がスケーターの「順位付け」をすることを簡単に許している、と指摘。 

 

現在のPCSのシステムは十分に良いものであり、審査員は能力もあって自分たちが何をしているのか、知っているはずだ、と。  彼らがこのシステムをアビュース(悪用、つまりスケーターの順位付けをしたり不正をしたり)するのは、期待されたスコアリングをすることから(つまり、ある一定のスケーターのために定められた回廊から)逸脱することで罰を受けることを怖がっているからだ、とした。 

 

彼は要するに、採点のシステムに問題があるのではなく、採点をしているジャッジたちや、彼らにそのような採点をさせているフィギュアスケート界の「腐敗」を指摘したのではないだろうか?

 

 

 

 

こうやって、観客だけでなく、実は選手たちも、コーチたちも、そしてISUに指名されているレフェリーでさえも、現行の審査員による採点に対し、その正確さや正当性に強い疑念を持っており、はっきりとそれを口にする勇気のある人たちもいる、ということだ。

 

何回ルールを改定しても、どのように採点の基準を限りなく細かくしていっても、現場で運用するテクパネルや審査員が、それらを悪用するのであれば、何の意味もない。

 

これも、観客であるフィギュアファンの私たちが繰り返し、指摘してきたことだ。厳しいルールがあっても、恣意的に一部の選手にはそれを適用し、「選ばれた」選手たちに対しては、見て見ぬふりをする。

 

 

このレフェリーの指摘に関して、ISUの上層部がどういった対策を取ることを約束するか、実に興味深い。

 

どの国にも、その国のスケート連盟に「選ばれた」と思われる選手がいることは、なんとなく感じているファンは多いと思うが、国際試合のレベルでも「選ばれた国」あるいは「選ばれた選手」がいて、彼らはベストの演技をしなくとも、明らかに高いGoE,そしてPCSを手にすることができる。

 

自分の背後には、ジャッジたちがついていると自覚することすら、その選手のアドバンテージになるだろう。だって回転不足があっても、チートな踏切をしたジャンプでも、テクパネルはそれを見逃し、ジャッジからはGoEの+4や5がもらえるのである。

 

裏を返せば、どんなに良い演技をしても、ジャッジたちからは低いGoE,あるいは低いPCSしかもらえない、と分かっている選手は、メンタルがかなり強くなければやってられないだろう。同じようにギリギリのエッジで踏み切っても、自分は必ずエッジコールを取られるが、ライバルは見逃してもらえると分かっていて試合に臨むとしたらどうだろう。

 

観客が採点にクレームをつけると、必ずと言っていいぐらい「プロである審査員に言いがかりをつけるなら、お前が資格をとってジャッジになればいいじゃないか」というような理屈で黙らせようという連中がでてくるが、それは明らかな論点ずらしである。

 

どのスポーツも、審査や採点が気に入らないというファンが口を出してきたことで、採点はどんどんフェアになってきているのだ。 選手本人が言いずらいのであれば、なおさらのことである。 金を出して競技を見に行く顧客である我々が、質の高いフェアな審査を求めるのは当たり前のことだ。

 

 

 

それにしても、このように、ISU内部にも問題点をきちんと指摘できる人がいることは、救いである。

 

ISUの内部にも、正義感のある人がいて、ちゃんと問題提議をしてくれているということだからだ。

 

 

 

ドーピングしかり、不明瞭な採点しかり、スポーツ競技が競技として成立するための基本と言える、「フェアネス」がなくなってしまっては、オリンピック競技としていったいいつまで残れるのか、わからないではないか。

 

ISU上部が、このしごく真っ当で、良識ある指摘に対して、どのような態度をとるのか、私たちはしっかり注視していく必要がある、と思うのである。