政治とスポーツ? | ロンドンつれづれ

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もうニュースが出回っているから、書いてもいいかな、と思い…。

 

先日ロシアで開催されたプルシェンコ氏によるアイスショーが、紛糾している…。 ロシア以外の国のスケーターやスケートファンからばかりでなく、出演したスケーターからも批判が出ているというのだ。 どうやらショーはかなり政治的にオーガナイズされ、ロシア軍兵士に手紙を書くブースまであって、まさにポリティカル・ラリーだったそうである。

 

今朝のニュースでは、出演者のひとり、トクタミシェワ選手が、「政治的なイベントとは知らなかった」として、以下のようなメッセージを「テレグラム」に掲載したという。

 

「スポーツは政治の外にあると本当に信じたかったが、今日はそうではなかった。私はフィギュアスケートが大好きです。自分のしていることを心から愛しています。大会に出場したい、スケートをしたい、新しいプログラムを滑りたい、アイスショーに参加したい。しかし、私はアスリートのパフォーマンスが思考の操作や説得の方法になることを望んでいません。混乱し途方に暮れています。どんなショーになるか、知りませんでした。誰も知らなかった。ごめんなさい」

 

 

参加したスケーターは、コストロナイア選手、ドミートリ・アリエフ選手、コンドラチェク選手、ステパノヴァ・ブーキン組、セメネンコ選手、トクタミシェワ選手ら。

 

始まるのが40分も遅れたというのは、事情をよく理解していなかった選手の間でもめたりしていたのかもしれない。

 

参加したトクタミシェワ選手が、後からこれを言うのはかなり勇気がいったことだろうが、すでにチケットには大きなZのマークがついており、どんなショーになるかは予測はついたかもしれない・・・。

 

コリヤーダ選手、ツルソワ選手、そしてミーシナ・ガリアモフ組も参加することになっていたそうだが、事情を察して急遽欠席したようである。

 

 

 

これまで「スポーツと政治を分けろ!」といって、ロシアスケーターたちの締め出しを散々批判してきたプルシェンコ氏だが、これをやってしまえばダブルスタンダードとのそしりは免れないだろう。まさにアスリートの政治利用である。

 

 

ロシアスケーターの中にも、今ウクライナで何が起こっているかを理解している人たちはいるはずだ。

 

重鎮たちが大騒ぎして、なんとかロシア人スケーターたちを国際的活動の場にねじ込もうとしているが、ウクライナではますます凄惨な市民の拷問や殺戮という現実がどんどん明るみにでている状況の中で、侵略している国のスケーターの権利を主張しても、国際的な理解は得られないだろう。

 

コリアーダ選手など、良識あるスケーターたちには本当に気の毒だが、ドーピングの一件もまったく無かったことのようにとぼけているロシアのスケート協会は、このプルシェンコ氏のポリティカル・ラリーのショーに出た選手たちにも、「問題ない」とお墨付きを与えていたそうである。

 

 

なぜかISUでは、今の国際的な情勢と空気をまったく読まずに、ロシアの公式試合参加を「投票して決める」と言っているそうだが、ちょっと良識と常識を疑う動きである。 それというのもISU副会長、フィギュアスケートのトップはラケルニク氏。 ロシア人だからか。 

 

ISUはロシアマネーなしではやっていけないから、という人もいるが、今の国際情勢の中で、他のスポーツに先駆けてロシア人アスリートを公式に受け入れるようなことをすれば、そちらの方がスポンサーが離れると思うが、どうだろうか。

 

あるいは、他の国のスケーターたちがボイコットするかもしれない。 スケーター個人には恨みはなくとも、ロシアという国家が、国際法違反の犯罪、人道上許すことのできない非道なジェノサイドを行っているのである。 しかし、何も悪くないスケーターたちが試合をボイコットしなくてはならないという状況こそ、本末転倒である。 学校にいじめっ子がいるのであれば、排除されるべきは被害者ではなく、加害者であるべきではないか。

 

いくらロシア国内で情報統制が行われているとはいえ、若い人たちはいくらでも世界から情報を集めるすべを知っているはずだ。 「犠牲者の写真も動画も、すべてウクライナと西側の作り上げているフェイク」などというロシアトップの言葉をうのみにしているのだとしたら、かなり認知的に問題があるというものである。

 

プルシェンコ氏はウクライナでのアイスショーも計画していると言い、タラソワ女史はそれを支持するといったそうだが、そんな無慈悲で無神経なことは本当にやめてほしい。 今ウクライナの人々がどのような生活を送っているか、夫、妻、子供、親や大切な人を殺された人たちが、どのような気持ちでいるかを考えることができないのだろうか。

 

ロシア軍は、最初のころの若い兵士たちではなく、今はシリアやチェチェンで経験を積んだ、残忍な古参の兵士を投入し、市民を恐怖でコントロールしようという戦略を発動しているため、レイプや拷問、殺戮が積極的に行われているというのだ。アイスショーどころではないということがわからないのだろうか。それとも、プロ・ロシアの市民たちが楽しみさえすれば良いというのだろうか。

 

爆撃で自宅を破壊され、逃げようとして集まった駅にミサイルを撃ち込まれ…。残してきた家財、家電から楽器までを、ロシア兵に盗まれて売られる。 拷問され殺された市民の指輪や携帯電話をベラルーシの郵便局からロシアの妻や家族のもとに送るロシア兵士の写真も出回っている。

 

 

 

昨日は、BBCニュースで繰り返し、ロシア軍の爆撃で12歳の娘を失った母親の言葉を放映していた。「娘の頭は取れて無くなっており、首から血が噴水のように噴き出していました。私は下の赤ん坊を抱えて逃げましたが、途中でロシア兵につかまり、400人もが閉じ込められている地下室に連れていかれ、そこで24日も過ごしました。医者もおらず、人々は次々と死んでいきました。死体は何日も周りに放置されていたのです」と。 

 

 

もし、銃があって目の前にいたなら、私はプーチンを殺す、と彼女は強い目で言った。

 

「私の腕はまったく震えないでしょう」と。

Ukraine mother: I saw my daughter killed, then was held captive in basement - BBC News

 

 

世界は、怒りに満ちている。 自分たちの悪行をすべて「ウクライナのせい」と言ってはばからないプーチンが嘘をついていることは、情報統制をしていることからも明らかだ。 ウソつきは、メディアをコントロールしようとし、市民の口をふさごうとする。 

 

 

今、世界中が本気で怒っているということを、ロシアのスケート界の重鎮たちは理解した方が良い…。 今、ウクライナはスケートどころではないのだ、ということを。 ロシアが、ロシアのアスリートが、なぜ制裁を受けているのか、よく考えた方が良い。

 

他国に入り込んで人々の暮らしを踏みにじり、日々の生活を破壊し、人の命、人の人権を蹂躙することと、アスリートが国際競技に参加できないということは、あまりにも重さが違い過ぎて、「選手に対する人権侵害」という言葉がまったく心に響いてこないということを理解した方が良い…。

 

 

コリアーダやトクタミシェワ、メドベーデワのような若いスケーターたちの方が、よっぽど良識も常識も正義感もあるということが、今度のことでよくわかったのである…。 

 

下は戦争前のウクライナを覚えておきたいという女性の投稿。

 

下は、破壊されてしまった現在の様子。 プーチンはウクライナに勝とうとしているのでなく、ウクライナという一つの国を滅ぼそうとしているのだろう…。 住民を皆殺すか追い出すかしてロシアに併合し、新たにロシア人を住まわせようとしているのだろう…。