本当にもう黙った方がいい | ロンドンつれづれ

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ロシアのフィギュアスケート界の重鎮たちが恥ずかしい…。

 

モンペリエで行われた世界選手権大会について、さんざんB級大会だの、優勝者について20年前のスケートだのと中傷した上に、アイスダンスのチャンピオンのパパダキス・シゼロン組の女性の言った言葉に噛みついたのが、タチアナ・タラソワ女史。

 

これまでもタラソワ女史には??な発言は多かったが、ロシアのウクライナ侵攻以降の自国アスリート締め出しに関し、ただ感情的になって(あるいはプーチン仕込みのプロパガンダか)、恥ずかしい言葉を連発し過ぎている。

 

 

ガブリエラ・パパダキス選手は、今回参加しなかったロシアのアイスダンスチーム、シニツイナ・カツアラポフ組について質問され、

「今回の世界選手権でロシア人選手たちが不在だったことは、とても特別だと感じています。彼らはウクライナ情勢とドーピング問題によって、他のスケーターたちの信頼を著しく損ないました。疑いの目を向けられる彼らがいなかったので、余計な緊迫感はなかったと思います」

 

と答えたそうだ。(私はフランス語がわからないので、この翻訳が正確かどうかはわからないが、正確だということを前提に引用させてもらう。)

 

ガブリエラが言っていることは、まったく真っ当で、別に何ひとつ攻撃的なことはない。

 

(パパダキス・シゼロン、2018 World Championships - Gabriella Papadakis & Guilllaume Cizeron (phantomkabocha.com)

 

事実、北京オリンピックでロシア国籍の選手はそれ以前の国を挙げてのドーピングに対する罰として、ROCという妙な肩がきで参加していたのだ。にもかかわらずロシアのフィギュアスケーターから新たにドーピング陽性の結果がでていた。 そのため、日本を含め、多くの他国の選手が未だにメダルももらえていないという迷惑をこうむっている。

 

ドーピング疑惑のある選手をオリンピックでの個人競技に参加させたIOCも批判されるべきだったが、その後の世界選手権への当該選手の参加をOKしていたISUにも問題があると思って見ていた。 ウクライナへのロシアの侵略が始まってから、世界中のスポーツイベントからロシア選手は締め出されることになり、やっとISUも同じ態度を示したのだ。

 

おそらく、アスリートの間では、戦争の影響もだが、ドーピングという汚い手を使って試合に勝とうとするアスリートのいる競技会で戦うことの方が耐えられないのではないだろうか。

 

ロシアの侵略戦争が始まって以来、ロシアのスポーツ界重鎮は自分たちが迫害を受けているような言葉を連ねてきているが、彼らの国を挙げてのドーピング疑惑についての説明は一言もないばかりか、ドーピング陽性の判定がでている選手を世界選手権の期間にぶつけて開催した国内試合に参加させ、絶賛しているのだ。これを見てもロシア国内ではドーピングはなんら非難されるべきことではないという判断をしていることが分かる。

 

国を挙げて、国策ともいえる形でドーピングを行い、それを隠してきたロシア国内のアスリート、特に若い人たちには、Noというチョイスはなかったかもしれないし、北京でのドーピング発覚した選手はまだたった15歳。 選手本人も知っていたかもしれないが、知らずに「サプリメント」として飲まされていた可能性も否定はできない。 それを思うと、若いアスリートの健康を損なってまでも一時の栄光を掴ませて国威発揚に悪用しようとしているプーチン政権こそ(いや、実はソビエト時代から)あくどいと言わざるをえない。大人はみな、それを知っているはずではないのか。

 

 

ウクライナ問題に関しては、「スポーツと政治を関連付けるな」というのがロシアスケート界重鎮たちの言い草だが、スポーツやアスリートを政治に一番利用してきているのがこれまでのロシアである。 そうでないというなら、なぜプーチンの催したウクライナ侵攻の正当化を強調するイベントに、北京オリンピックのメダリストたちがZの印章をつけて参加したのか。 くだんのパパダキス選手のインタビューで聞かれたロシアのアイスダンスのメダリストたちも参加していたのである。 

 

Putin holds pro-war rally with Russian Olympians at Luzhniki Stadium in Moscow (insidethegames.biz)

 

 

 

 

さらに言うなら、プーチンのウクライナ侵攻は、最初から「政治」ですらない。 あれは、国際法違反の犯罪であり、一般市民を無差別に殺戮している重大な人権侵害問題なのである。彼は、ICC(国際司法裁判所)に個人として訴追されており、ロシアを出れば逮捕される可能性が高い。 それはそうだろう。普通なら、たった一人を殺害しても20年経っても警察に追い回され、罰をうけるのだ。他国を侵略し、何千人、何万人の市民、子ども、赤ん坊までを人の手を使って殺戮し、市民を何千人も拉致して自国に連れ帰り、強制収容所に入れて労働させるような人物がなぜ無罪なのだろうか。

 

 

いまウクライナではスケートどころではない、連日の爆撃で住まいを追われ、食べるものも水も無く、自分や家族の命を守るのに精いっぱいだというのに、そのウクライナの地でロシア主催のアイスショーを開きたいと言っている人までいるようだが、その無神経さと配慮の無さには、スケート界でも呆れているのではないか。 何が何でも自国の正しさを主張し、他国に理解することを強要し、被害者である人々に「悪いのはお前たちだ」という態度は、プロパガンダにしても度が過ぎており、国際的理解は得られないだろう。


タラソワ女史は、ガブリエラに対し、「シェルバコワから学びなさい!言葉はいずれ跳ね返ってくる」と言ったそうだが、その言葉はそのままタラソワ女史に返した方が良い、と思った人は多いのではないだろうか。 

 

18歳のアンナ・シェルバコワ選手は、インタビューで「この国内大会は世界選手権とはまったくの別物なので比べないでほしい。選手もお客さんも楽しめたことが何より嬉しいし、意義があると思います」と語ったそうだが、確かに聡明さがにじみ出る言葉だと思う。

 

それにひきかえ「私たちにはオリンピック王者のアンナがいる。フランスの王者にはまず、アンナから物事の考え方を学びなさいと言いたい。考え方が分からないならば、黙っていなさい」という75歳のタラソワ女史の言葉。 自分は色々言うくせに、人には黙れというダブルスタンダード…。 

 

人間の成熟とは年齢を重ねるだけで得られるものではないんだなあ、と改めて思うのである。その言葉がブーメランとなって自分に返ってくることは考えなかったのだろう。 たしかに18歳のシェルバコワの方が思慮が深い。

 

If you cannot say anything nice, just say nothing.

(いいことを何も言えないのなら、黙っていなさい)

 

これは、親がよく子どもにいってきかせる言葉である。

 

ロシアの重鎮たちには、かねがね、上の言葉を言いたいと思っていたが、逆に言ってくるとは片腹痛い。

 

 

世界選手権にわざわざ国内戦をぶつけて、「ロシアの国内戦の方が見る価値がある!豪華なスケート選手ばかり!」と大騒ぎしていたロシアの重鎮たちこそ、若くて賢いシェルバコワから学んだらどうだろうか…。

 

(2019年、シェルバコワ選手、2019 Grand Prix Final - Anna Shcherbakova (phantomkabocha.com)

 

 

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「シェルバコワから学びなさい!」北京五輪金メダリストの“ロシア勢批判”に露側が猛反発!「言葉はいずれ跳ね返ってくる」(THE DIGEST) - Yahoo!ニュース