昨日、MINAMATAという映画を観た。 ジョニー・デップ氏の主演で、日本の水俣病をテーマにしたものである。
しばらく前に観た、Dark Watersという映画を思い出した。
それはアメリカ、ウェストバージニア州の農場主からの訴えを受けて、ある企業弁護士が調査を始める話で、大手化学メーカー、デュポン社の産業廃棄物によって汚染された土地で200頭近い牛が病死した、というものであった。 (デュポンはテフロン加工の鍋を製造していたが、その原料となるPFOAが有害物質ということが今は分かっている。)
巨大企業を相手取って、畜産農家の訴えを取り上げることを彼の法律事務所は反対した。 しかし、調査を進めるにしたがって、デュポン社は発がん性のある有害物質の危険性を40年間も隠ぺいし、それを土壌や大気中に垂れ流していたことが分かったのである。 弁護士は、7万の住民を原告団とする集団訴訟に踏み切ったが、強大な権力と資金を持つ巨大企業との戦いに勝てるのか…。 これは実話に基づく映画である。 日本でも12月に封切りになるようだ。
そして昨晩観た映画が、MINAMATA。 これは、9月23日に日本でも封切りになっているようだが、内容は、上の映画に酷似している。 企業の垂れ流した産業廃棄物に苦しむ人々。 言い逃れようとする企業、そして訴訟…。 企業の良心はいったいどこにあるのか。 地元の議員はだれを代表しているのか…。 力のない一般市民は、どうやって自分たちを守ればいいのか。
(実際のユージンとアイリーンさん)
これは、ジョニー・デップが水俣病を世界に伝えた写真家、ユージン・スミス氏に扮し、その妻、アイリーン・美緒子・スミスと共著の写真集、「MINAMATA」を題材にした実話。 1971年、アル中になっていたユージンは、アイリーンと名乗る女性から熊本県水俣市のチッソ工場が海に廃棄している有害物質により病気になっている人々の撮影を頼まれる。水銀に冒され歩くこともできない人々。町の人々は分断されており、水俣病患者や工場の写真を撮るユージンのスタジオは放火された。しかし、病に冒された人々の真実の姿をアメリカのLIFEマガジンに掲載したことで、世界が衝撃を受けたのである。 ビル・ナイ、真田広之らが共演、坂本龍一、音楽。
映画『MINAMATA―ミナマター』公式サイト (longride.jp)
Tomoko Uemura in Her Bath, 1971 photograph by American photojournalist W. Eugene Smith.
アメリカのデュポン社もそうだが、チッソも地元で大勢の人が働いていた。自分たちに毒を与える者の手から、糧を差し出してもらって生きているのだ。 映画の最後には、様々な産業廃棄物汚染に苦しむ世界各地の人々の様子が写真と共にテロップで流れる。
チッソはメチル水銀を工業排水として1968年まで36年間、海に流し続けた、という。原因が正式に判明するのに36年かかった、ということだろうか。
巨大企業の罪と責任。
地域で雇用を生み出し、地域の政治家や警察まで掌握してしまう権力を持つ。 害毒を垂れ流されて、知人や身内が苦しんでいてもなお、巨大権力に逆らえない地元の人々の悲しみが映画からよく伝わる。
映画に対して、水俣市長が制作段階で「負のイメージが広がらないように」などと議会で注文をつけ、先行上映会の後援を拒否する状況もあった、という。
水俣病をめぐっては、いまもチッソや国を相手取った裁判が続いており、症状がありながら患者と認められない人たちも多く、被害の全容は明らかになっていないそうだ。
いまだに症状に苦しんでいる患者がおり、2歳で発症した田中実子さん(68)は、1956年からいままで、言葉も、自由も失ったままだそうである。
そうした状況にもかかわらず、安倍晋三首相(当時)は2013年、「水銀による被害とその克服を経た我々」と発言し大きな反発を集めた。国も、県も、ずっと逃げようとしている、と患者のひとりは言う。
公式確認から65年。水俣病はもう終わったと思っている人たちがいるからこそ、ハリウッドで映画になったことは大きい、と被害者たちは感じている。
映画やその背景を伝えるANN ニュース。
水俣病に関する最新の法律が以下。
平成二十一年法律第八十一号
水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法
「水俣湾及び水俣川並びに阿賀野川に排出されたメチル水銀により発生した水俣病は、八代海の沿岸地域及び阿賀野川の下流地域において、甚大な健康被害と環境汚染をもたらすとともに、長年にわたり地域社会に深刻な影響を及ぼし続けた。水俣病が、今日においても未曾ぞ有の公害とされ、我が国における公害問題の原点とされるゆえんである。
水俣病の被害に関しては、公害健康被害の補償等に関する法律の認定を受けた方々に対し補償が行われてきたが、水俣病の被害者が多大な苦痛を強いられるとともに、水俣病の被害についての無理解が生まれ、平穏な地域社会に不幸な亀き裂がもたらされた。
平成十六年のいわゆる関西訴訟最高裁判所判決において、国及び熊本県が長期間にわたって適切な対応をなすことができず、水俣病の被害の拡大を防止できなかったことについて責任を認められたところであり、政府としてその責任を認め、おわびをしなければならない。
これまで水俣病問題については、平成七年の政治解決等により紛争の解決が図られてきたところであるが、平成十六年のいわゆる関西訴訟最高裁判所判決を機に、新たに水俣病問題をめぐって多くの方々が救済を求めており、その解決には、長期間を要することが見込まれている。
こうした事態をこのまま看過することはできず、公害健康被害の補償等に関する法律に基づく判断条件を満たさないものの救済を必要とする方々を水俣病被害者として受け止め、その救済を図ることとする。これにより、地域における紛争を終結させ、水俣病問題の最終解決を図り、環境を守り、安心して暮らしていける社会を実現すべく、この法律を制定する。」
詳細は以下で。
水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法 | e-Gov法令検索
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