スケートアメリカとロシアカップののSPが終わりました。
今日は1日座り込んで、スケートアメリカとロシアカップを見て、スケート三昧でした!
イギリス時間あと少しで、アメリカでは女子フリーが始まりますが、その前に感想を。
まずスケアメの女子。 結果は以下に。
https://ijs.usfigureskating.org/leaderboard/results/2020/29710/index.asp
https://ijs.usfigureskating.org/leaderboard/results/2020/29710/CAT002SEG003.html
マライア・ベル選手、76.48でトップで発信です。 3点ちょっと下回って、ブレイディ・テネル選手。
予想通り、アメリカ人ジャッジを揃えてあるので国内戦なみのインフレスコアですが、それだけではなく。
前回も書きましたが、テネル選手とベル選手の採点が気になりました。 かなりの部分をクロスオーバーなどで漕いでスピードを出し、長いセットアップをしてジャンプに入っているベル選手の方がジャンプのGOEもPCSも高い、という現象。
ジャンプにフォーカスして、準備滑走を長く取ることは選手の技術や個性ですから構わないんですが、それがスコアに反映されないことが問題です。
マライア・ベル選手のSP. 素敵なプログラムですが、エレメンツの間は、主に両足滑走のクロスオーバーと比較的簡単なターンでつないでいます。 ベル選手のジャンプはほとんどが長い準備滑走のあとに実行されます。 ステップシークエンス以外のところで、いわゆる, masterly of one-foot skating、PCSの採点基準でもある片足走行による見事な技術、というものはほとんどありません。 ロシア女子などはジュニア、いやノービスでももっと複雑なことをしています。 こういう部分がPCSにも、GOEにも反映されていない。 いくらルールでジャンプ前の難しい入り、というのが規定として無くなったとしても…。 ジャッジが見落とし続けるから無くなったんでしょうね、きっと。
動画は感謝してお借りします。
ベル選手のプロトコル、トランジションがわずかに低いですが、PCSの他のコンポネンツはすべて9点前後です。 ちょっと高すぎないか?
テネル選手もロシアの選手などに比べると繋ぎは薄い方ですが、それでもステップシークエンス以外にも難しい足さばきを入れようという努力は見えます。スピード感もあり、スピンもセンターがしっかり取れています。 クロスオーバーが少ないということは、それだけ音楽を表現する動きをしているということ。
コンビネーションは後のジャンプがURで残念でした。3Fの入りは難しいステップのあと跳んでいます。上半身の動きも、ベル選手よりは複雑です。 が、PCSは全て8点台です。 より複雑なプログラムをスピードをおとすことなく滑ることは、トランジションだけでなくスケーティングスキルも必要ですし、音楽の解釈という点でもスコアに反映されるべきです。
下は、ロシアのアナスタシア・ゴリアコワ選手。 彼女はジャンプ前にそれほど難しいステップを入れているわけではありませんが、クロスオーバーで漕いでスピードを出してばかりいるわけでもありません。 プログラムを通し、音楽を常に表現しています。 彼女のスコアは69.26です。 アメリカとロシア、別々の競技会ですから一概に比べられませんが、どちらもナショナル・インフレの悪評があるという点では一緒です。 彼女の演技が、アメリカのベル選手より7点も低いようには見えないのです。
彼女のプロトコルを見ると、ジャンプなどのエレメンツの難易度は上記のアメリカの選手とほぼ同じ構成です。 注目は、ステップシークエンスがレベル2になっているところ。 そして、トランジションが7.80と他のコンポネンツに比べて低いところです。 彼女の演技を実際に見てみると、ベル選手のトランジション8.55に比べ、つなぎが薄いとは思えません。 また、ステップシークエンスもこれがレベル2なら・・・マライヤは??という印象です。
下の動画は、スケートアメリカ男子のイリヤ・マリニン選手です。 まだ15歳。
彼は、クワドジャンプを2本、3Aを入れてきました。 スコアは76.75です。アメリカがジャンプさえ跳べればよい、というのなら、マライヤ・ベル選手とクワドを2本、3Aを降りたこの選手と点差が0.27しかないというのはなんかおかしいではないでしょうか?
もちろん、彼のPCSはまだ大変に低いものです。 が、ここで問題にしたいのは、たとえばベル選手とテネル選手のようにレベルが同じぐらいで技術が拮抗している場合に、プログラムの難易度やフットワークの難易度、身体全体の動きなどがきちんとGOEやPCSに反映されていないような印象を受けることです。
そのシーズンにISU,あるいはスケート連盟、あるいは審査員が勝たせたい選手がいて、そのアジェンダに従ってGOEやPCSで操作しているのでは、と勘繰りたくなるような一貫性の無さです。 ジャンプさえ跳べばPCSも高くなる、というなら、どの選手も皆リンク半分をクロスオーバーでスピードをつけ、のこり半分をセットアップに使ってジャンプを確実に跳ぼうとするでしょう。 しかし、それをするとこうやって、PCSを6点台にされる選手もいるわけです。
こちらではジャンプをクリーンに跳べればPCSも上げ、あちらではジャンプが跳べていてもPCSをうんと抑え、あるいはスカスカのプログラムでも努力をしている選手とほとんど変わらないトランジションやコンポネンツ、スケーティングスキルのスコアをつける、という。 例えば高難度ジャンプを跳ばないジェイソン・ブラウン選手の演技の質の高さやトランジションの見ごたえは秀逸だと思うのですが、彼のスキルにとても及ばないスケーターが、彼と同じぐらい、あるいは彼よりも高いPCSを与えられたりしています。
日本人選手も基礎力が高いですから、難しいつなぎを滑りこなしてエレメンツに入っていく選手が多いですが、さすがにロシアスケーターのスケーティング力はすごいですね。 ほとんどクロスオーバーなしに片足走行でターンを繰り返してスピードを落とさずにエレメンツを繋ぎます。 ジュニアでもそれができています。 特に、フリースケートでその質の高さを見ることができるでしょう。
ロシアカップ、SPをトップで折り返したのが、ダリア・ウサチェワ選手。 この選手のつなぎの濃さ、ステップシークエンスの難しさをご覧ください。 この選手に限らず、ロシア選手の演技はほとんどが、演技を通しての身体のムーブメントのレンジのバラエティ、片足滑走の多さ、身体の柔軟性があります。 それにしても、3A無しでこの点数はやはり爆盛りすぎてるだろ、とプルシェンコ氏が言っているようですが、この濃さで78.41。
ベル選手とスコアは1点しか違いません。 ルッツでエッジコールをとられたとはいえ、プログラムの難しさが違うレベルだということは、演技を見ればわかると思います。 複雑なトランジションからエレメンツへの難しいインとアウト、なのにウサチェワのPCSは、9点を超すのはコンポネンツだけ、トランジションでさえマライヤに比べ、わずかに高いだけです。 つまり、ウサチェワのPCSの方が、マライヤより低いのです! ここからもアメリカのスコアがどれほど爆盛りか、うかがえます。
ロシアカップのリザルト
https://fsrussia.ru/results/2021/3etap/index.htm
今回うるさく言う理由は、スケート・アメリカは曲がりなりにもISU公認のGPS、国際大会というくくりで行っています。 その競技会で、たとえ選手のほとんど、そしてジャッジのほとんどがアメリカ人だとしても、こういう採点の仕方をしてしまうのは、問題があると感じます。 勝たせたい選手を決めて、GOEやPCSでいくらでも調節ができる、そういう採点をしているのではないか、という疑惑をスケートファンに持たせてしまうことは、このスポーツにとってなんの得にもならないと思います。
今後ロシアでもGPSのロステレコムが行われますが、アメリカが良識の感じられないスコアをつけるようなら、きっとロシアも同じようなことをしてくるでしょう。ロシアとアメリカが、自国のイチオシの選手に爆盛りのスコアをつけてオリンピックに向けてアピールしてくる可能性があります。
さて、文句はこのぐらいにして、フリーを楽しみにすることにします。
男子は、ロシアのコリアダ選手、やっぱり戻ってきてくれて、本当に良かったです!
そしてアメリカのネイサン・チェン選手のSPは好きです! シーズン通してまだ良くなりそうです。しかしスコアは、やはり盛りすぎだと思います…。
スケアメ男子SPプロトコル
https://ijs.usfigureskating.org/leaderboard/results/2020/29710/SEGM001.html
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ロシアカップ情報ページ
Russia Cup Stage 3 リザルト
https://fsrussia.ru/results/2021/3etap/index.htm