イギリスの経済保障 | ロンドンつれづれ

ロンドンつれづれ

気が向いた時に、面白いことがあったらつづっていく、なまけものブログです。
イギリス、スケートに興味のある方、お立ち寄りください。(記事中の写真の無断転載はご遠慮ください)

 

IMFで発表した2018年度の世界のGDP(2019年報告)では、日本は3位である。 そしてイギリスは5位。 

 

 

https://www.globalnote.jp/post-1409.html

 

 

そして、GDPパーキャピタ(ひとりあたりのGDP)では、かなり下がって26位。 一方、イギリスは22位である。

 

 

https://www.globalnote.jp/post-1339.html

 

イギリスの税金は、日本に比べると高い、というのがイギリスで長年働いてきた私の印象である。 所得税は、12500ポンド(年収、170万円程度)までは、無税、それ以上は20%である。 年間5万ポンド、日本円で670万円以上の収入のある場合は所得税は40%だ。 そして、カウンシル・タックスと呼ばれる住居のある地方行政に収める税金も、かなり高い。

https://www.jetro.go.jp/world/europe/uk/invest_04.html

 

英国と日本では、GDPもGDP per capitaもそれほど違いはないが、確かに個人の負担している税率はイギリスの方が少し高い、と言える。 

 

VATという日本の消費税のような付加価値税については、基本20%である。 もっとも、子供洋品やベビー用品は無税。 食品も、酒、ソフトドリンク、お菓子やテイクアウトの食品を除き、食パン、卵、ジャガイモやニンジン、肉、ミルクのような必要不可欠な食品、またペットの餌などについてほとんどVATはついていない。 スポーツ・教育などのアクティビティは無税、美術館、博物館などは無料のところがほとんどであるが、美術館やバレエ団などは、チャリティ組織が運営していることが多く、チャリティには税はかからない。   

 

レストランなど外食は20%のVATの上、12-15%のサービスチャージをつけられるから、メニューに載っている金額よりもかなり高いことになる。

 

つまり、外食や旅行、ぜいたく品の購入などのゆとりのある階級の人々は高いVATを支払うが、基本的な生活および教育を守り、社会的弱者からは税を取らないという部分は徹底している。 なので、VAT20%について、イギリス市民はほとんど文句を言わない。

 

https://www.gov.uk/guidance/rates-of-vat-on-different-goods-and-services#food-and-drink-animals-animal-feed-plants-and-seeds

 

 

ちなみに、イギリスでは基本、英国籍を持たない人でも英国に住んでいる人にはNHS(国営医療)の恩恵が与えられており、私も腫瘍切除のための手術入院を10日したが、医療費はびた一文支払わなかった。 これは私が高い税金を払っていたからではなく、日本からの留学生に対しても、登録さえしてあれば医療費は無料で対応してくれるのである。 (もっとも、医療費と年金をカバーするNISは税金とは別途、働いている人は毎月かなり支払う。)


 

なので、日本の港においてクルーズ船の中の感染者の治療費を外国人は出せ、と言っている人々がいることは、ちょっと恥ずかしいな、と思ったのである。 コロナの場合、日本でも今は全ての人に無料で対応をしているはずだ。 外国人だから実費を取れ、というのも情けない言い分なのである。

 

 

ところで、何を書こうと思っていたかというと、コロナ感染拡大による経済的保障の話である。

 

前にもご紹介したが、ロンドンでレストランを経営している方の、現地での経済的保障の実態である。

https://ameblo.jp/wasa5533/entry-12586994773.html

 

美穂さんによると、1年間のビジネス税金免除、そして返済義務のない一時金330万円ほど、スタッフを解雇しない場合、給与の8割(上限33万円ほど)を政府が補償、家賃未払による立ち退きの禁止(3か月)、政府提携銀行からの6億5千万円の貸与(1年間無利子)など、中小企業に対する手厚い保障を迅速に発表したそうだ。

 

さらに、数日前の美穂さんのブログでは、すでにそういった保障金、従業員の給与の振り込みが行われた、ということだ。

 

従業員のお給料、3月分と4月分を先週の月曜日に申請したところ、たった5日後にみんなのお給料が振り込まれたそうです。 お給料は、雇用者である美穂さんの分もしっかり入っていたそうです。 さらにこの保証は6月まで延長されるそうで。美穂さんは「やるぜ、イギリス。経営者としてありがたい。」と自分のお店の従業員の方たちの雇用を守れる安心感を書いてくれています。 詳細は美穂さんのブログでどうぞ!

https://ameblo.jp/wasa5533/entry-12592970729.html

 

こうやって、実際海外で仕事をしている日本人の方々のブログを読むと、ドイツであれイギリスであれ、迅速な補償対策の決定、発表で市民(あえて市民と。 国民でなくとも助けてくれるから)を安心させ、さらに申請があったら迅速な振り込みがある、という実態が見えてきます。美穂さんは税金をちゃんと支払っていて良かった、と思ったそうです。

 

 

なぜ、同じようなGDP、たいして変わらないGDPパーキャピタの英国でできることが、日本ではできないのでしょうか? イギリスの税金は確かに多少高いですが、VATに関しては0%の品目が多いんですから、実質払っている税金は同じぐらいでは?

 

小さい商店や居酒屋、レストランのオーナーがテレビで涙目で「やっていけない」「95%客足が減った」と言っているのを聞くと、胸がいたんで涙がでます。 つぶれてしまったお店、いなくなってしまったシェフや店員さんはなかなか戻ってこれないでしょう。 

 

どうして、いっそ、しっかり「全て休業!」を要請し、英国でやっているような保障をしないのでしょうか。 まずは、雇用維持のための、従業員の給与保障と300万円規模の休業補償で、この2,3か月の「自粛要請」を徹底し、感染を一気に抑えて、それから様子を見ながらロックダウンを徐々に解除していった方が、ビジネスの復活は早いと思うのですが。

 

アーティストさんやフリーランスの人々への保障は、ドイツが優れていましたが、イギリスでも収入の8割の保障をしています。 文化が死に絶えてしまわないよう、各国ではどういう対応、補償をしているのか、どこ部分の予算を使って切り抜けようとしているのか、情報をシェアし、良い方法があれば、応用してみてはどうでしょうか。

 

 

イギリスも、初動が遅れたことを政府は批判されています。 また、医療現場でのPPE(医療防御具)の供給が間に合っていないことも。 私の知り合いの看護師の方は、「いくら毎週木曜日に拍手して感謝してもらっても、マスクや防護服がない現場で働く私たちにとってはなんの助けにもならない。 とにかく早くPPEを!」と叫んでいる。 

 

昨日、イギリスでは感染して死亡した医療従事者のための黙とうをした。 スペイン、イタリアでも多くの医療従事者が感染して亡くなった。 日本でも色々な事情で辞めていく看護師さんたちがでてきているらしい。 武器を持たずに戦場に出ていくようなことをさせてはいけない。 

 

結局、今日も東京では165人の感染者の確認がありましたね。 要するにたくさん検査すれば、たくさんの感染者があがる、ということですね。 

 

都心では人がいなくなっても、通勤圏内の生活圏で、人々はたくさん出歩き、スーパーは混みあっているようですね…。 

 

「自粛」が長引けば、人々も疲れてきますし、効果も薄れてくるでしょう。 経済的に困窮する人が増えてくれば、社会も荒れてきます。 すでに人々はお互いに指差しをして、批判を始めています。 前線で命をかけて働いてくれている人々に対し、感謝どころか差別をする人もいるようです。

 

 

一刻も早く、国民が安心して今日を送れるよう、ディシジョン・メイカー(決定する人=政治家)たちの能力と責任が問われるところです。

 

ところで、コロナのワクチン研究のオックスフォード大学と、英国製薬会社のアストラゼネカが協力をきめたようですね。 (The Guardian)

 

大学のウイルス学の専門知識と大手ファーマシューティカルの資金とグローバル・マーケッティング能力が合わされば、鬼に金棒。 ワクチンの大量生産と世界への輸出が可能になります。

 

早い実用を期待しています。