ケリーアン・コンウェイ | ロンドンつれづれ

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Kellyanne Conway
 
ワシントンポスト紙によると、トランプ大統領の悪名高いモスリム・バンを正当化しようとして、彼の顧問であるケリーアン・コンウェイ女史は、ありもしない「イラク人による虐殺事件」を例に出し、「その際のオバマ大統領のイラク人に対する入国拒否と同じ。この事件はニュースにならなかったから、皆知らないでしょうけど」とトランプをかばった。
 
しかし、彼女が例にだしたボーリング・グリーンの事件では、実際には虐殺などは起こらず、ボーリング・グリーン出身の二人のイラク人はアルカイダに資金と武器の供与を試み、イラクで米軍の兵士に簡易爆弾装置を使用したということである。 またその後、オバマ前大統領はイラクからの難民の受け入れ中止やイラク人の入国禁止を命じたことはないという。
 
ボーリング・グリーン市では公式にこの間違いを指摘し、ケリーアンはツイッターで「虐殺じゃなくて、テロリストと言おうとして間違ったのよ」と言い訳した。さらに、その事件はニュースにならなかったどころか90件以上の報道があったことがわかった。またか・・・。
 
そしてトランプの顧問、スティーヴ・バノンの古巣である「ブライトバート」のオンラインニュースでは「オバマはこの事件の後、イラク難民に対して6か月の入国禁止をした」と書いたが、それも「なかった事実」である。ヴィザの審査を厳格にしたため、審査に著しい時間がかかったことは確かだということだが。 トランプ陣営は、大手の新聞社などのメディアをいつも嘘つき呼ばわりをしているが、これをどう説明するのであろう。
 
このケリーアン・コンウェイ女史は先日も、トランプの就任式に「オバマの時よりおおぜいの人が集まった」という誤った報道をしたスパイサー報道官の言葉を「オルタナティヴ・ファクト(代わりの事実)」という妙な言葉で説明して物議を醸した人である。 事実は一つであって、代わりの事実などがあっていいはずがないではないか。それを一般には「嘘」というのである。
 
© AFPBB News 提供 ドナルド・トランプ米大統領の就任式に先立ち米首都ワシントンの教会を訪れたケリーアン・コンウェイ
 
 
今回も、世界中から批判を受けているトランプの移民政策を正当化するために、嘘を言って言い抜けようというのだろうか。大統領本人だけでなく、側近も顧問も、嘘も言い続ければ真実になる、とでも思っているのだろうか。 そもそも、トランプ陣営は選挙キャンペーン中から誤った情報をソーシャルメディアで垂れ流し続け、それを信じた愚かな人々の投票で勝利を得たのである。 あとから、「ああ、あれは違っていた」と訂正しても、嘘の害はすでになされたあとである。 愚かな人たちは、嘘をきいて行動をとり、その後の訂正は耳に入っていないのである。 人心の動きをよく読んだ、確信犯、と言えよう。
 
こんな良心の無い人たちが舵を握っている大国とは、どちらに向かうのだろう。そしてその害毒は、世界中にまき散らされるのだろうか。 毎日、アメリカから流されるニュースを聞いて、信じられない思いでいる。
 
トランプや、トランプ陣営に好き勝手をさせている共和党は、その甚大な被害に対して責任を取るべきだし、 トランプの勝利を許した民主党も、負けたクリントンも、その責任を取るべきだ。 なぜこういうことになったのかをよく考えてもらいたい。 
 
貧困や格差を縮める努力が足りなかった。貧しくて社会の底辺で苦しむ人々の声に耳を貸さなかった。 子供たちが新聞を読むこともしないような教育をしてきた。 ソーシャルメディア上の暴言や嘘を野放しにしてきた。 金持ちはますます金持ちになり、富の再分配がきちんとなされていなかった・・・
 
こういう社会になることを警告してきた人たちの言葉を聞く耳を持たなかった。 トランプだけを責めても、きっと第二、第三のトランプが現れるだろう。こんな政治をしているトランプに、アメリカの国民は、いまだに半数の人が賛成をしているのである。 それが私を絶望させる。
 
 
私は若い人たちと政治の話をする機会が多いが、イギリス人も日本人もヨーロッパ人も、そしてアメリカ人も、まじめで賢い若い人たちは、みなブレクジットとトランプ現象に、すっかり幻滅して希望を失っている。 こんな世の中を若い人たちに手渡していっていいのだろうか。
 
絶望している若い人たちの顔を見ながら話をするのは、本当になさけなくて、申し訳がない。汚染された地球、一触即発の軍事的紛争の起きそうな地域の増加、多様性に不寛容な社会、貧しい人を顧みない政治、正義感や良心より、自分の国、自分たちだけが良ければいい、という国の首長や人々。
 
今40代、50代、60代、70代の人たちは、若い人たちに申し訳ないと思わなくてはいけない。
 
大人は手をこまねいて、世界が危険で住みにくい、不愉快な場所に変わっていくのをただ見ていてはいけない。 ひとりひとりにできることは必ずあるはずだ。
 
「終末時計」の科学者たちが私たちに呼びかけたように、私たちもソーシャルメディアを使って、トランプのような人たちに対抗することができるはずだ。
 
ソーシャルメディアは、有効なツールなのだ。使い方次第で素晴らしい道具にも、人類を滅ぼす凶器にもなるのだ。 悪意のある人たちだけに利用させている手はない。極端なノイジーマイノリティばかりがソーシャルメディアで大暴れし、サイレント・マジョリティはなにも発言しないのでは、まるで存在しないかのようだ。
 
声をあげることは、パワーになる。たくさんの声を集めて、パワーにすることは、普通の人にも、自宅からでもできるのである・・・。
 
目を開き、耳をすませてアンテナをはり、自分たちの周りで知らないうちにおかしなことが起こり始めていないか、注意することだ。
 
危険なカビは、空気中に知らないうちに充満し、気がついた時にはすべてのものを毒してしまう。
 
そうなる前に、何とかしなくてはいけない。 事態をあまくみて油断している場合ではないのだ。 日本だって、対岸の火事ではないはずだ。
 
リメンバー、ヒットラーは権力を奪い取ったわけではない。当時のドイツ国民が、民主的に選んだのである・・・。