Menuhin Competition | ロンドンつれづれ

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皆さんは、Menuhin Competitionという音楽のコンクールをご存知だろうか。



これは、世界の若い才能を伸ばそうという試みで、今年は4月にはいってすぐにロンドンで開催されるものである。



ここに2014年の日本からの参加者の演奏があるので まずごらんいただきたい。Rennosuke Fukudaさんという参加者であるが、あまりのすばらしさに鳥肌が立つようである。ジュニアの部門のファイナルでの優勝者である。当時14歳。





今年は世界中から308人の応募があり、その中から44名がロンドンにて演奏を行い、審査を受けることになる。 

昨晩、このコンペティションの審査員の一人であるジョージ・ハットリ氏のお話を聞き、夕食をご一緒する機会を得た。

彼によると、このコンペティションはコンクールとして勝者を決めるというよりは、若い演奏家のこれからを応援していくフェスティバルのようなもので、選考しなくてはいけないのは本当はとても嫌だというのである。


「音楽とは、芸術とは、演奏家を比べて上下をつけるものではなく、一人ひとりの個性を楽しむものだから。演奏に技術的な完璧を求めることも理解できるが、テクニカルがパーフェクトでなくとも、インスパイアリングで創造性があって、感動的なアーティストも大勢いる。聞きながら涙の出るような演奏をする人がいる。そういう人にどんな点数をつけたらいいんでしょう?誰が1位、2位、ということに重きをおくより、誰がどんな風によかったかわかるようなそんな賞をつくりたい」と。


機械やコンピューターの演奏ではないのだから、パーフェクトであることよりも感情に訴えることのほうが大切。どんなストーリーを自分が作り出して相手につたえることができるか、聞いている人に何を伝えるかが一番大事なのでは。


彼は8歳のときに日本からオーストリアにご両親とともに移り住み、以来ヨーロッパを拠点に音楽活動を展開している。


ハットリ氏のトークのタイトルは、King of all trades.

Jack of all trades という言い回しは、器用貧乏と訳されることもあり、なんでも一応こなすけれども…というニュアンスもある。しかし、彼は、King of all tradesになれ、という。

彼自身、バイオリンだけでなく、指揮もこなし、そしてウイーンで日本レストランを経営するビジネスマンでもある。

音楽家として、音楽だけやっていても人間の幅は広がらないというのが彼の自説。

政治や経済のことを知り、人として経験をつむことは、どんな芸術を作り出す人間にも実は大変に大事なのだという。 たしかに音楽は、もともとはソーシャルリレーションシップとして始まったはず。それぞれのもつ言語のイントネーションがそれぞれの文化の音楽に現れている。

そもそも、芸術、とくにパフォーミングアートは人にストーリーを伝えることが目的で始まったのだから、人間的に浅い人には相手にメッセージを伝えられるだけの力量がないかもしれない。


しかし、冒頭の演奏を聞くと、14歳の少年にこれだけの伝えるパワーがあるとは。技術だけでこれだけ感動させるのは難しいだろう。


メニュヒンのコンペティションは、アメリカ、日本、韓国、中国からの参加者が多いという。バイオリンはチェロやオペラ歌手とちがって、小さいときから特訓しなくてはできない楽器だから、親が音楽教育に熱心なアメリカ、日本、韓国、中国の子供たちが多く選ばれるけれど、ヨーロッパの子供たちも入っているそうである。




選ばれた44人の子供たちは滞在期間中、お互いに交流することで、自分たちの世界を広げる。ソリストのバイオリニストは、結構孤独なので、そんな子供たちが自分と同じような境遇の子供たちと出会い、数日を一緒に過ごし、仲間をつくることは;あんがいとても大事なのだ。


今年は、7人の日本人キッズが参加。演奏ビデオは見つかったものだけをご紹介します。

Ria Honda, 15 years old



Hina Maeda, 13 years old



Kevin Miura, 13 years old



Mahiru Moriyama, 15 years old

Takumi Taguchi, 14 years old



Coco Tomita, 13 years old



Asako Fukuda, 19 years old


すばらしき、若き才能に乾杯!



最後に、もう一度、Rennosuke Fukuda君のロンド・カプリチオーソを。こちらは、昨年の10月。かなり成長した彼が見られます。





もうひとつ。