あらしさんの黄緑さんをモデルにした妄想BLです。
ご注意ください。
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寝室のドアを静かに押し開けて室内に入る。
部屋の中央にあるベッドには、こんもりとした山が見えて、ただそれだけなのに、心底愛おしい。
そっと近付いて、その脇に身をかがめた。
俺が風呂に向かったときのまま、微動だにしていないようだ。
うつ伏せて眠るその顔の半分近くが枕に埋もれていて、あらわになった白い頬だけが明かりを絞った間接照明に照らされている。
隠れたその顔がもっと見たいと思い、息を殺して顔を寄せた。
見慣れているのに、見飽きることがない。
意外に長いまつげも
すっと通った鼻筋も
少し上がっている口角も
薄くて平行な眉毛も
ぷっくりとした耳たぶも。
光の当たり方ひとつで、なんでこんなに新鮮に見えるんだろう。
もう長い付き合いだから、まじまじと顔なんて見ないし、たとえ見ようとしてもめちゃくちゃ嫌がられるだろうしで、これだけじっくり眺めるなんてことは、何年もしていない。
キレイな顔をしてるな、と思った。
起きているときのこいつは表情が豊かで、キョロキョロとよく動く瞳が印象的な分、キレイというよりも愛嬌がある顔立ちに見える。それにいたずら好きな性格も加わり、可愛いと言われることが多い。
だが、表情が消えているときと、眠りにつくなどして雄弁な瞳が隠れているときは、がらりと印象が変わる。こんな風にキレイという言葉がピタリとはまってしまうんだから不思議だ。
しばらく眺めていると、普段から寝息をあまり立てないこいつが、まるで陶器でできた人形のように思えてきて、心臓が跳ねた。
だから、生きていることを知りたくて。
その存在を確かめたくて。
俺はすべらかな頬に、指を伸ばす。
てのひらに小さな吐息を感じ、続いて薄い肩がほんのわずかに上下するのを確認すると、俺はやっと安心した。
つい先ほどまで、お互いの熱を分け合っていたというのに。
何度この腕のなかに閉じ込めても、何度こいつのなかにわけ入っても、一つになれる時間は夢だったんじゃないかと思うくらい短くて。
どうして終わってしまうのか、どうしてこのまま溶け合えないのかと、無意味な憤りと寂しさを覚える。もっとも幸せなその瞬間に。
だが、幸せのなかに混ざる一抹の不満も、今となってはほんの少し心地いい。もちろんこれはMっ気があるとか、そういう話ではなくて。
なにしろ親友であり仕事仲間でもあるこいつに、恋人という名目が加わるようになって以来、俺の心に巣食っている感情だから。
そうした負の部分も含めて、まるごとこいつが愛おしいんだ。
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