こんな記事を読んだ。全文引用します。

「湯気の中で藍のれん 古町温泉「あおいの湯」68周年、新米農家と地域が染め上げる」

【古町区】

古町区の共同浴場「あおいの湯」で8月30日、開業68周年を記念した藍染めのれんの披露式があった。中心になったのは、地区で初めて藍を栽培する新規就農者の卯月颯太さん(25)。就農10カ月の若手を、番台一筋68年の深山キヌさん(82)や地区婦人会が支え、延べ23人がかりで3カ月かけて仕上げた大作だ。

颯太さんが藍を育て始めたのは昨年10月、畑を継いだ直後だった。父の代まで野菜農家だった畑の隅、2.3キロ先の実家から自転車で通う道すがら、荒れていた三畝を藍畑に変えた。「染物になるとまでは考えていなかった。ただ、誰もやらない作物をやってみたかった」と颯太さんは振り返る。

転機は7月14日深夜、発酵液を仕込む「藍建て」の夜だった。適温を保てず色が沈み始め、颯太さんが浴場の裏で湯加減を見ていた深山さんに思わず声をかけた。深山さんは甕に手を入れ、「湯と同じ、熱すぎても冷めすぎてもいけん」と一言。長年の勘で温度を探り当て、明け方には藍が鮮やかな青に戻った。「番台の勘が農業の役に立つとは思わなかった」と深山さんは笑う。

完成したのれんは幅2メートル、生葉約20キロを使った。制作費12万円のうち3万円は婦人会長の蓮尾トシさん(75)が古着の端切れを持ち寄って浮かせた。「昔は藍染めの仕事着があちこちにあった。若い人が畑から色を持ってきてくれるとは」と蓮尾さんは目を細めた。

この動きは隣区にも波及した。颯太さんの藍畑を見た隣区の若手農家、相良健太さん(30)は今年3月から自分の畑でも藍を試作し始めた。「1人で悩んでいた新規就農も、こういう形でつながれると分かった」と相良さんは話す。市農業委員会の熊谷奈々さん(38)によると、区内で藍を栽培する新規就農者はこの1年で0人から3人に増えたという。

あおいの湯は1958年の開業当初、年間延べ利用者が約4万人に上ったが、2025年度は9500人まで落ち込んでいる。それでも披露式当日の来場者は126人と、前年同日比で3倍を超えた。」

共同浴場の68周年記念で、新規就農者が育てた藍で染めたのれんを披露した、という記事を読んだ。発酵液の温度が沈み始めたとき、68年番台に立ってきたおばあちゃんが甕に手を入れて「湯と同じ、熱すぎても冷めすぎてもいけん」と勘で温度を探り当てたくだりが良かった。

畑と浴場、一見関係ない場所の勘がつながる瞬間があるんだな。