こんな記事を読んだ。全文引用します。
「「たんぽぽ食堂」開設30年、ガラス戸の前で 古町区西口、踏み出せない一歩と続く見守り」
【古町区】
古町区西口「さつき通り」商店街の一角にある居場所カフェ「たんぽぽ食堂」が8月31日、開設30周年を迎える茶話会を開いた。区立古町西高校の部活動「つばさ部」顧問、神代篤志さん(57)と生徒たちが30年分の来場者の手紙を並べた特別展示を企画したが、会場のガラス戸の前で足を止めたまま中に入れなかった一人の来場者の姿が、支援の届く限界を映し出した。
その人物はひきこもり歴15年になる皆川亮太さん(38)。母の久美子さん(66)によると、亮太さんは開始5分前に自宅を出て徒歩6分、480メートルの道のりを歩き、ガラス戸に手を伸ばしかけた。だが中から歓声が上がった瞬間、踵を返して帰ってしまったという。「あと少しだったのに」と久美子さんは声を落とした。
神代さんが顧問を20年続ける「つばさ部」の生徒たちは、毎年欠かさず手作りの便りを地域の郵便受けに配ってきた。部長の結城美咲さん(17)は「返事が来なくても、誰かが読んでいるかもしれないと信じて続けてきました」と話す。30年前に食堂を開いた沢井とし子さん(79)は「あの子がガラス戸まで来てくれただけで、今日は十分な一日だったのかもしれない」と静かに語った。
内閣府の2023年調査では、ひきこもり状態にある人は全国の15〜64歳で推計146万人とされる。常盤大学の逢坂誠一教授(60、社会学)は「地域の居場所は当事者が『いつか行ける場所』として機能する意味が大きい一方、実際に足を踏み入れる一歩を後押しする制度的な支援はまだ乏しい」と指摘する。
区福祉政策課の火野雅代課長(46)によると、区内で支援が必要とみられる世帯は推計84世帯だが、実際に相談機関とつながっているのは21世帯にとどまる。今年度の相談件数は58件で5年前の34件から増えたが、食堂の年間運営費210万円のうち区補助金は65万円にすぎない。「予算も人員も、需要の伸びに追いついていません」と火野さんは認める。
茶話会が終わり、片付けられた30年分の手紙の束を見つめながら、神代さんはぽつりと言った。「あの子が次に来られる日は、来るんでしょうか」。誰も、その問いに答えられなかった。」
居場所カフェの開設30周年の茶話会で、ひきこもり歴15年の38歳の男性が、開始5分前に家を出てガラス戸に手を伸ばしかけたところで、中から歓声が上がった瞬間に帰ってしまった、という記事を読んだ。「あと少しだったのに」という母親の言葉が切ない。
相談が必要な世帯の推計84世帯のうち、実際につながっているのは21世帯だけ、という数字も出ていた。