こんな記事を読んだ。全文引用します。
「空き家のパン工房、潮風の坂に再始動 若葉町・貝殻浜地区、隣の廃屋は解体順番待ちのまま」
【若葉町】
8月20日、若葉町貝殻浜地区で、11年間空き家だった元漁師住居を改装したパン工房「浜風舎」が開業した。手がけたのは商店主の潮田早苗さん(48)。焼きたてのパンの香りが石段沿いの路地に漂うようになった一方、店の壁一枚を隔てた隣家は町の「特定空家」指定を受けたまま、行政代執行による解体の順番待ちが続いている。
潮田さんは3年前まで隣町でパート勤務をしていたが、亡き祖父が営んでいたこの家を継ぐ形で改装を決意。空き家バンクを通じて借り受けた建物は築62年で、改修費は当初見積もりの480万円から水回りの傷みが判明して610万円に膨らんだ。開業前日の7月19日夜、台風接近に伴う強風で隣の空き家の庭に自生していた高さ約8メートルの木が倒れ、開業準備中だった店先の看板と自転車置き場を直撃する騒ぎがあった。「あと数分早く外に出ていたらと思うと、今も肝が冷えます」と潮田さんは振り返る。
隣家に長年住む漁師の出浦儀助さん(76)は「持ち主の息子は県外に出たきり。屋根が落ちても誰も直しに来ない家を、毎日横目で見ながら暮らしてきた」と話す。町建設課空き家対策係の鴨井拓海さん(41)によると、隣家は2023年に特定空家に指定されたが、代執行を担う職員は町内で2人だけ。年間の解体対応件数は3件が限度で、順番待ちは現在17件に上るという。「危険性は認識しているが、予算も人手も追いつかない」と鴨井さんは説明する。
総務省の住宅・土地統計調査では、2023年時点の全国の空き家数は約900万戸と過去最多を更新した。灘見大学の早瀬桂子教授(地域政策)は「行政代執行は費用回収が困難なため自治体が及び腰になりやすく、特定空家に指定されても実際に解体まで進む物件は全国的に1割に満たない。若葉町のように商店が先に動き出す例は珍しくないが、隣接する危険家屋の問題を個人の努力だけで解決するのは無理がある」と指摘する。
潮田さんの夫で会社員の年男さん(52)は休日ごとに開業準備を手伝ってきた。「早苗が焼くパンで坂の空気が変わった気がする」と話す一方、「隣が崩れてこないか、正直まだ心配は消えない」とも漏らす。潮田さんは9月13日に貝殻浜地区の秋祭りに合わせて焼き菓子の出張販売を予定しており、来月には近隣の漁協直売所との共同企画も準備している。ただし隣家の解体時期は、鴨井さんによると「早くて再来年度以降」としか示されていない。」
11年空き家だった元漁師住居を改装してパン工房を開いた、という良い話の記事だったんだけど、壁一枚隔てた隣家がずっと「特定空家」指定のまま解体の順番待ちをしている、という後半が引っかかった。台風で倒れた木が開業前日に看板を直撃したエピソードもあった。
全国の空き家は約900万戸で過去最多、特定空家に指定されても実際に解体まで進む物件は1割に満たない、という数字も出ていた。パン屋の開業と隣の危険家屋、同じ町の同じ路地で起きていることだと思うと、なんとも言えない気持ちになる。