こんな記事を読んだ。全文引用します。

「漂着した手作りボート、部活動救う 漁具店主、思わぬ助っ人に」

【桐生野村】

桐生野村で七月二十日、桐生野中学校に今春発足した「カヌーポロ部」の練習用ボートが強風で浜に流され、修理を頼まれた漁具店主が部の窮地を救うことになった。部員はわずか五人、正規の競技艇は二艇しかなく、廃部の危機にあった部活動に、思いがけない助っ人が現れた。

カヌーポロ部は今年六月、県内でもほとんど例のない競技に挑もうと、二年生の早坂まどかさん(14)が顧問の蓮尾大輝教諭(29)に掛け合って発足した。だが正規艇は一艇十五万円もし、村の予算では二艇しか買えなかった。練習中、早坂さんが漕いでいた手作りの補助ボートが突風で流され、たどり着いた先が「塩谷造船具店」裏の浜だった。

店主の塩谷武蔵さん(65)は元は漁船の修理を専門にしてきたが、後継者もなく仕事は年々減っていた。流れ着いたボートを見て「これは直せる」と直感し、早坂さんたちに声を掛けたのが八月三日のことだった。「うちの奥に眠っとる廃船なら三隻ある。エンジンを外して、パドルで漕げるようにすればええ」。塩谷さんは材料費約八万円で三隻を改修し、部員たちに使い方を教えた。

早坂さんは「まさか漁具屋のおじさんが助けてくれるとは思わなかった。おかげで週三回、五人全員が同時に練習できるようになった」と声を弾ませる。祖父で元漁師の早坂喜一さん(73)は「わしが乗っとった船が、孫の部活に使われる日が来るとはな」と目を細めた。蓮尾教諭も「予算がなく諦めかけていた。地域の人の手があって初めて成り立つ部活動だと痛感した」と話す。

この出来事は村内の商店にも波及した。魚市場を営む中村勝也さん(58)はブイと網を無償で提供し、隣の駐在所の警察官も休日に安全確認を買って出るようになった。部員も発足時の四人から五人、九月には新入部員が加わり六人に増えた。

塩谷さんの店先には今、改修待ちの廃船がもう一隻運び込まれている。「来月、村の漁協青年部との練習試合が組まれとる。うちの船で、あの子らがどこまでやれるか楽しみでならん」。塩谷さんはそう言って、作業着のポケットから軍手を取り出した。」

発足したばかりのカヌーポロ部の手作りボートが強風で流され、たどり着いた先の漁具店主が「これは直せる」と部員たちを救った、という記事を読んだ。廃船3隻をエンジンなしの手漕ぎ艇に改修して、部員全員が同時に練習できるようになったらしい。

「わしが乗っとった船が、孫の部活に使われる日が来るとはな」という祖父のコメントがいい。予算がないところに、たまたま技術を持った大人がいた、という偶然の強さを感じる話だった。