引越しに向け2年前に倉庫代りの実家に放り込んだままの荷物の選別を始めた。実家の唯一良い点は音が出し放題なところだ。iPhoneの最大音量で作業を進める。BGMは70、80年代のロックだ。それにしてもiPhoneのどこをどうしたらこんな音が出るのだろうか?小型の携帯スピーカーなど足元にも及ばない程良く聞こえる。

 

読者諸賢は配信用に販売される音源とCDで販売される音源が別物であることをご存知だろうか。配信用音源はイヤホンで聞くことを前提に高域と低域を強調し音圧を高め、迫力がある風に改変されている。厳密に言えばアーティストが最終的にマスタリングルームでOKを出した音とは波形の異なる似て非なる音源ということだ。

 

もっとも、もっと細かいことを言えばCDさえ似て非なる音源なのだから許容範囲ということなのだろう。それにしても気楽に聞く分にはこれでいいのではないかと大型スピーカーを荷物に加えるか悩んでしまう。音楽好きを自称する人で口径30センチ以上のスピーカーで聞く人はどれくらいいるのだろうか。おそらく1%にも満たないだろう。

 

手軽にそこそこの音質で再生出来るのだから、もはや大型アンプや大型スピーカーは自己満足でしかないのかもしれない。日本の住宅事情を考えれば当然の帰結である。CDがレコードに取って代ってから久しいが、人類はやがて豊穣な倍音の世界を忘れていくのだろう。