友人のギタリストによると西海岸へ行くとギターアンプの音が一段良く聞こえ、なんだか自分も一段上手くなったような気になるという。筆者も西海岸には二度ほど出張したが、さすがにギターアンプの聴き比べまではしていないので、ほほう、そうなの?としか返答のしようがない。きっと電圧の違いや湿度など気候による影響なのだろう。

 

どハマり中のオノ・ナツメ作品を何冊か(何冊も)読んでみて、ようやく今の自分の心象が理解できたような気がする。もちろん作品によって方向性は異なるし、特に新しい作品ほどしっかりとストーリーを持ち、完成度は高まっている。筆者の心を捉えて離さないのは新旧問わずザラっとした雰囲気をもつ作品群だ。

 

その中に「レディ&オールドマン」という名作を発見した。舞台はLAで作品内では一言の言及もないのだが、カラッとした空気感と汗が噴き出す一歩手前のジリッとした温度感を感じる。名作というよりは、今の筆者の気分にピタリとハマったということなのだろう。コミックでこんな世界観を紡ぐ人がいるんだ!と驚嘆する。

 

映画で例えれば、そこまでグロくもなく、ヴァイオレンスでもないタランティーノ、トーンはバグダッド・カフェ、パリ・テキサスだ。そこはかとない虚無感、喪失感、疎外感を纏う作品にささくれだった自分の気持ちがフィットしてしまう。作品の空気感に触れ上述のギタリストの言葉を想い出した。