特にやることもないので、自転車で北へ南へ、東へ西へ走り回っている。しかし未整備(と言うか整備不全)な道が多くなかなか快適な道は少ない。が、犬も歩けばなんとかでようやく自転車にぴったりな道を見つけた。聞けば北東にある隣街へ続く旧道のバイパスらしい。

 

田畑の中を一直線に貫き(土地の収用が容易だったのだろう)、上下合わせて6車線、歩道も1車線分はある。整備も古くはなく舗装もそれほど痛んでいない。他の幹線道路と時々交差するだけなので信号も少ない。もちろん歩行者も皆無なので、安心してノーブレーキでいける。

 

街中を走る際は自転車乗りの基本として、ハンドルを握る指先は常にブレーキレバーにかけているのだが、その作法から外れることができるので解放感がたまらない。本当に久しぶりにギアをアウター(ペダル軸についた大小2つの内、大きい方のギアで重く、スピードが出る)に入れる。街中ではもっぱらインナーで走るのでこれも快感だ。

 

左右のバーンと抜けた田畑の景色を楽しみながら、結構なスピードで走る。砂利や段差を避けたり追い抜かれる自動車の気配に集中し動物的な勘だけを働かせ、ただただ無心で走るので余計な悩み事からも一時的に解放される。荒川の河川敷とは比べるまでもないが、いい道だ。

 

10キロ程走ったところで、あっけなく広い道は終わった。歩道はなくなり古い2車線の道路になった。これが旧道なのだろう。若い頃は往復50キロ、100キロを走ったので物足りないと言えば物足りない。仕方なく引き返すが往復20キロ、今の筆者には十分なロングアンドワインディングロードだ。故郷に帰り喪失感ばかりに苛まれていたが、ようやく新しいものを発見した。