デヴィッド・サンボーンもロジャー・コーマンも亡くなった。

何度も触れているが慣れ親しんだアーティストの死は辛いものがある。それはある意味、自分自身の人生もほんの少しずつ損なわれていくことにも繋がる。

 

そんなに辛ければ自分のフェイバリットアーティストのリストに新しい才能を補充すれば良いではないかと思わない訳でもないのだが、寄る年波には打ち勝てず感受性がどんどん鈍感になっており、そうそう毎日のように新たな発見に喜ぶこともない。

 

そんな中、自分にとっての新たな(と言ってもすでにかなりのキャリアを築いているが)才能との出会いがあった。漫画家のオノ・ナツメだ。好きなアニメの漫画原作者であり、ようやく原作のコミックを読んだところ、すっかりハマった。一般にアニメ作品は起伏に富み、ある種のわかりやすさも必要なため、時として原作とかけ離れることもある。

 

氏の作品の魅力は作品にもよるがなんと言っても、極端に少ない線と有り余るほどの「行間」だ。ストーリーは起伏に富まず淡々としている。それゆえ読者の好き嫌いがはっきり別れるだろう。今の筆者にはこの「間」がなんとも心地よい。コミックを10冊も買い込んで読破してしまった。3作のアニメ化作品はアニメ化のために(良い意味で)その間が埋められてしまっているが、好きな作品であることに変わりはない。

 

なかなかに人生の厳しさが増す折、期せずして新たに好きなものと出会う僥倖に恵まれた。少しでも明るい方向に歩みを進めるしかない。

サンボーンもコーマンも鬼籍に入り歴史となってしまった。自分もそれ程時間を空けずそちら側の歴史に仲間入りするのだと思えば、辛さも少しは和らぐ。

 

RIP David Sanborn

RIP Roger Coman

 

not simple   オノ・ナツメ 2004