2000年前後だったろうか、Smooth Jazz と言われるライトでやたら耳触りの良いジャンルを聴いていた。iTunes にプリセットされたネットラジオ局を愛聴したものだ。新しい部屋で音楽再生環境も整え、さて聴くかとなり、80年代のクロスオーバーやフュージョンの曲を聴いている内に久々に Smooth Jazz に辿り着いた。

 

どうやらまだ一ジャンルとして存在しているようで Youtube にも無数にプレイリストが存在する。しかしまあ演っている本人達(及び好きで聴いている皆様)には申し訳ないが、軽めの毒にも薬にもならない感覚が堪らない。堪らないとは堪え難いという意味だ。音色やアレンジはお上手でとてもオシャレだ。おお、懐かしいジャンル!と聴き始めたがすぐに飽きた。

 

無意味かつ無駄に生まれ故郷を睥睨し、間接照明がホンノリと照らすアーバンでメロウ(笑)な筆者の部屋にはピッタリなのだが、その無個性、無署名感溢れる演奏には聴いている内に自分は何が聴きたいのか、何をしたいのよくかわからなくなる病的な催眠作用を感じる。古いと言われればそれまでなのだが、ジャズってのはもっと、こう、魂を削りながら演るもんじゃないんかい?

 

鬱々とし始めたところでプレイリストの隅っこにあったウェザーリポートに救われた。筆者的には御大マイルス・デイビスの音楽的行方不明で生じたジャズ界の空白を埋めて余りある存在だ。70年代後半の名盤を何枚も聴き漁り、なんじゃこりゃ!と衝撃を受けたものだ。筆者は20歳前後で10年遅れで聴いていたのだが、当時文京区の小石川図書館はレコードライブラリーが充実しており散々世話になった。

 

そこまでいくのは稀なケースだが、その音色を一聴しただけで演奏者を特定できるプレイヤーがいる。ジャコ・パストリアスのフレットレスベースも間違いなくその一例だ。

そう言えば散々聴いた Smooth Jazz は気に入ったアーティストの過去のアルバムを辿って聴いたこともないし、そもそもアーティスト名を誰一人知らない。

 

A Remark You Made Weather Report   1977