近隣の倉庫の搬出入の騒音に耐えかね早々に引越しすることにした。入居時にもある程度の騒音は覚悟していたが、その予想をはるかに上回る騒音だった。朝から晩まで大型トラックのふかす音やフォークリフトの発する警告音で窓など開けていられない。引越しと言っても新居は同じ敷地内の別の棟だ。住所も変わらない。今度は窓を開け放ち惰眠を貪ることができるだろう。ついでに言えば陽当たりも良く、プチ空中庭園の復活だ。

 

部屋の広さは一回り狭くなり、以前長らく暮らした部屋の半分程になってしまう。荷物もまた処分せざるを得ない。そこで断腸の思いで今まで聖域であったコンテンツ系にも手をつけた。DVDBOXはスリムケースに入れ替え、VHSで保存不要なものは処分し、LDもと思ったがほとんどが見本盤なので業者も引き取ってくれず処分しようがない。これには困った。ダンボール箱にして数箱分スリムになったところで行き詰まってしまった。

 

そこで引越あるあるなのだが、名作のLDを取り出し観始めてしまった。何回か書いてきたが筆者は千夜一夜物語の長年のファンである。岩波のマルドリュス版をコンプリートし、ガラン版にも手を出す程だ。その千夜一夜物語を69年に虫プロが長編アニメ映画として制作した。筆者は子供の頃にこの作品をTVで観て一発で気に入った。大人の鑑賞に耐えうる、子供向けと言うよりは大人向けの作品だ。

 

主人公のアラジンは運命に翻弄され七転八倒するが「小せえ、小せえ」とおそらくは八転目を目指して飄々と歩き去る。筆者はディズニー版のアラジンを散々売りさばいたが、マンガ誌に例えればあちらが品行方正な少年誌とすればこの作品はエロ描写あり、ロックサウンドありの青年向け劇画誌といったところか。昨今は原理主義ばかりがフォーカスされるイスラームの世界だが、筆者が後に触れて驚嘆するラテンアメリカ文学の饒舌さと同様の豊穣な民話/説話的世界を内包しているはずなのだ。アラビアンナイトを拾い読みしながらまどろむ長閑な日は近い。

 

千夜一夜物語 虫プロ/日本ヘラルド 1969

 

<予告編>