【作品#0974】酔拳2(1994) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

酔拳2(原題:醉拳II/英題:Drunken Master II)

 

【概要】

 

1994年の香港映画

上映時間は102分

 

【あらすじ】

 

酔拳を体得したフェイフォンだが、酒癖の悪さにより父親から勘当されてしまう。国宝を盗んだと勘違いされたフェイフォンは英国領事の男たちから見世物にされてしまい…。

 

【スタッフ】

 

監督はラウ・カーリョン

音楽はウー・ワイラップ

撮影はチョン・イウチョン

 

【キャスト】

 

ジャッキー・チェン(フェイフォン)

ティ・ロン(ウォン・ケイイン)

アニタ・ムイ(リン)

ラウ・カーリョン(フク・マンケイ)

ロー・ワイコン(ジョン)

 

【感想】

 

16年ぶりに製作されたシリーズ2作目だが、主人公をジャッキー・チェンが演じている以外に共通点はほとんどない。当初の監督はラウ・カーリョンだったが、ジャッキー・チェンとの度重なる意見の衝突により降板し、ジャッキー・チェンが監督を引き継いだ。

 

当初のラストはジャッキー・チェン対ホスン・パクになる予定だったが、ホスン・パクが足首を痛めたために、ジャッキー・チェンのボディガードでもあったロー・ワイコンにトレーニングを課して彼がラストのジャッキー・チェンの相手となった。映画の最後の7分の撮影のために4ヶ月を要しており、ジャッキー・チェンは燃える石炭の上に落ちるシーンを2回撮影している。また、ジャッキー・チェンは父親を演じたティ・ロンより8歳だけ年下であり、また継母を演じたアニタ・ムイより9歳年上である。そして、アンディ・ラウは特別出演のために序盤に少し出番がある程度である。

 

映画内ですでにマンネリ化を引き起こしていた前作に比べると、カンフー映画をやらなくなった1980年代中盤以降のジャッキー・チェン映画で見られたような小道具やロケーションを生かしたアクションシーンがとにかく見応え充分である。カンフー映画でカンフーだけやるだけでも成立していた70年代後半から80年代前半のカンフー映画とは一線を画す出来である。それだけでも本作が製作された価値は大いにある。

 

ジャッキー・チェンは当時40歳手前くらいだが、見た目の若さと雰囲気からやはり舎弟のような位置づけがよく似合う。特に厳格な父親のもと隙を見てふざけるところは彼の十八番。さらにそれに拍車をかけるのが義母のリンを演じたアニタ・ムイである。ジャッキー・チェンとは三度の共演歴があり、本作のコメディリリーフとして見事な働きをした。

 

ジャッキー映画としても最高峰の作品の一つであることは間違いないが、カンフー映画の中でも最高峰の作品の一つであると考える。それは特にジャッキー・チェンがアメリカ進出失敗を受けて製作した「ポリス・ストーリー/香港国際警察(1985)」以降のアクションのリズム、スピード感、キレが本作にも引き継がれているからだと思う。

 

前作「酔拳(1978)」はまだまだジャッキー・チェンも駆け出しのころ。体のキレはあっても、アクションのスピード感や迫力はまだまだで、どうも「型」をやっているという印象は強かった。また、他のカンフー映画と似たような物語、似たようなアクションというところにどうしてもマンネリ化を感じてしまっていた。

 

そんな思いを吹き飛ばすのが本作。上述のように映画全体が躍動感に満ち溢れており、落ちた主人公が立ち上がるという定番のストーリーもツボを押さえており、印象的なサブキャラが映画を盛り立てている。ジャッキーと対立して降板したラウ・カーリョンも当時60歳くらいだが、ジャッキーとは異なる魅力を存分に発揮し、よき相棒として印象を残した。

 

さらに本作のアクションはジャッキー・チェンの酔っ払い具合でそのレベルがぐんぐん上がっていくところを観客も体感できる。シラフの状態でも強いのに、酒を飲んだらなぜか強くなっていく。厳格な父親と対照的な奔放な母親により酒を次々に飲まされ顔を真っ赤にしながら敵を圧倒していくところは圧巻。

 

また、それだけ凄いものを中盤までに見せておきながらクライマックスにはそれを上回るものを見せてくれる。そこでジャッキー・チェンが飲むのは工業用のアルコール。それがどれくらい凄いものなのかは分からないが、何やらやばいものを飲んでいることは十二分に伝わってくる。ジャッキー・チェンのアクションはさらにスピード感を増し、その超人ぶりはワイヤーアクションを交えて表現される。私はあまりワイヤーアクションは好きではないが、本作くらいの使い方なら作風を考慮して十分にありだと思える。

 

怪我をしたホスン・パクに代わってジャッキーの相手役を務めたのはロー・ワイコン。後のジャッキー映画でも「キック」と言えばロー・ワイコンというくらいの存在になった彼の最初の大きな役だろう。酒を飲んだジャッキーでさえも苦戦するのが伝わる足技の巧みさ、スピード、威力は他でお見掛けすることはない。この当時、「キック」と言えばジャン=クロード・ヴァン・ダムだっただろうが、本作を見ればロー・ワイコンの方が凄いと思えるはずだ。

 

そんな感じで怒涛のクライマックスを終えると日本版は戦いを終えたジャッキーが倒れこんだところで映画は終わる。いくら何でも雑な終わらせ方だなと思うものだが、香港公開版ではエピローグが存在する。後日、表彰に訪れたトン・ピョウ演じる署長が表彰に訪れると、ジャッキーは工業用アルコールの過剰摂取により失明して頭もおかしくなってしまったという非常にブラックなオチが付いている。酒を飲んだら罰が当たるという宗教上の理由らしいのだが、昔のヘイズ・コードが敷かれていた時代のハリウッドなんかも思い出す。ジャッキー映画だし、敵をやっつけたんだから明るいエンディングで良いじゃないと思ってしまうところだが、酒にまつわる話だししょうがないのか。

 

ジャッキー・チェンの映画では、このスピード感と体の切れ、作品時代の面白さなど総合的に見ても上位に来ること間違いなし。また、ジャッキー映画で傑作と言えるのもこの作品が最後かなぁ。

 

【関連作品】

 

ドランクモンキー 酔拳(1978)」…シリーズ1作目

「酔拳2(1994)」…シリーズ2作目

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(広東語/日本語)

 

【ソフト関連】

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(広東語/日本語)

├日本語吹き替え

 

<BD2枚組(アルティメット・コレクターズ・エディション)>

 

本編

├香港公開版(Disc1)

├国際公開版(Disc2)

├日本公開版(Disc2)

言語

├オリジナル(広東語/日本語)

├日本語吹き替え

    ├フジテレビ版

    ├ソフト版

映像特典

├プロモーションビデオ

├ジャッキー・チェンのインタビュー

封入特典

├ミニポスター

├ブックレット

├ミニロビーカード