【作品#0973】ダイヤルM(1998) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ダイヤルM(原題:A Perfect Murder)

 

【概要】

 

1998年のアメリカ映画

上映時間は108分

 

【あらすじ】

 

仕事で破産目前に迫っていたスティーヴンは、妻のエミリーと不倫しているデイヴィッドに妻を保険金を目的に殺すように依頼する。

 

【スタッフ】

 

監督はアンドリュー・デイヴィス

音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード

撮影はダリウス・ウォルスキー

 

【キャスト】

 

マイケル・ダグラス(スティーヴン)

グウィネス・パルトロウ(エミリー)

ヴィゴ・モーテンセン(デイヴィッド)

デヴィッド・スーシェ(モハメド)

 

【感想】

 

アルフレッド・ヒッチコック監督の「ダイヤルMを廻せ!(1954)」のリメイク作品。

 

かの有名なヒッチコックの「ダイヤルMを廻せ!(1954)」のリメイクというかは、いつものマイケル・ダグラス映画になっている。マイケル・ダグラスの代表作の一部である「危険な情事(1987)」「氷の微笑(1993)」「ゲーム(1997)」を取り上げると、主導権を握っていたいが握れない男を演じている。部分的にはオリジナルの要素はいくつもあるのだが、ほとんど別物と言っても過言ではない。

 

また、これはオリジナルでも感じていたことだが、妻のエミリーが不倫していたからといって夫のスティーヴンがわざわざ殺害しようと思うまでのものは感じない。もちろんスティーヴンが仕事で投資に失敗し自己破産目前であることで追いつめられているというのは理解できる。ただ、だからといって殺す、あるいは殺させるまでいくかな。しかも、エミリーの不倫相手デイヴィッドが過去の犯罪を隠してエミリーに接近していたとかこれも都合が良すぎる。もし過去に犯罪も犯していない相手だったらスティーヴンはどう判断したのだろうか。

 

そして、スティーヴンはデイヴィッドの情報を調べ上げたうえで、妻のエミリーを殺すか事情をバラされるかの二択でエミリーの殺害を50万ドルの報奨金付き(前金10万ドル)で選択する。そして、スティーヴンはデイヴィッドに防犯カメラの死角や鍵、エミリーの行動パターンなどを指南していよいよ犯行当日。ご丁寧にカメラはお手伝いさんが台所で肉用の温度計を洗ってシンクに置く場面が用意されている。「観客の皆さん、後で出てきますよ」とこんなにも過剰で分かりやすい場面を入れるかな。しかもお手伝いさんなんてそもそも数回しか出てこないわけだし。

 

いよいよ、覆面を被った犯人による犯行が行われる。圧倒的に犯人が有利な状況だが、どうしても首を絞めて殺したい犯人はエミリーの首を絞めている最中に上述の肉用温度計を首に刺されて返り討ちにあってしまう。仮に首を絞めて殺したいとしても、まずは相手が抵抗できないようなダメージを与えてからでしょう。まして台所という反撃に使えそうな道具があれこれある場所だし。せめて女性のエミリーが抵抗して何とかなる理由付けは必要だろう。

 

帰宅したスティーヴンは想定外の事態に驚きつつも警察が来る前に偽装工作を行い、デヴィッド・スーシェ演じるカラマン刑事らが同席のもと犯人の覆面を剥がすとデイヴィッドではなかったのだ。デイヴィッドは別の奴を雇ってエミリーを殺させようとしたのだがそいつが失敗したのだ。愛するエミリーが殺されないように馬鹿なやつを雇ったわけでも、エミリーが生き延びられるように嘘の情報を仕込んだわけでもない。ただ、雇った男が無能だったのだ。前金で10万ドルも渡せばこれくらいのことは想定できる。

 

そこからはスティーヴンとデイヴィッドの関係性も徐々に変わっていく。スティーヴンは偽装工作したことやデイヴィッドとの関係から嘘に嘘を重ねていく。この辺りはなかなか面白さを感じるのだが、肝心のデイヴィッドはただスティーヴンをゆすって金を持ち逃げするという何の捻りもない行動をして最終的にスティーヴンに殺されてしまう。メインキャラクター3人がそれぞれ嘘をついているわけだから、相手のついた嘘に乗ったり、カマをかけたり、いろいろできるはずなんだがデイヴィッドの行動が物語の面白さを削いでしまった印象だ。また、「名探偵ポワロ」ですっかりお馴染みのデヴィッド・スーシェが刑事役を演じているというのに、彼がスティーヴンらを追い詰める描写がまるでないのは逆に意外性があった。

 

最終的に嘘のバレたスティーヴンがエミリーを殺そうとしてこちらも返り討ちに遭ってしまい、映画は終わる。ここまでくると、エミリーがスティーヴンをやっつける以外のオチはないのだが、ラストにかけて主人公が完全に理性を失ってしまうので行動が直線的になりすぎてしまい、物語としては尻すぼみになってしまった印象だ。

 

やっぱりこれをヒッチコックの「ダイヤルMを廻せ!(1954)」のリメイクだと言われても微妙で、翻案がいいところ。結局、いつものマイケル・ダグラス映画になってしまった。

 

【関連作品】

 

ダイヤルMを廻せ!(1954)」…オリジナル

「ダイヤルM(1998)」…リメイク

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語/アラビア語)

 

【ソフト関連】

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語/アラビア語)

├日本語吹き替え

音声特典

├アンドリュー・デイヴィス(監督)、マイケル・ダグラス(スティーヴン役)、パトリック・スミス・ケリー(脚本)による音声解説

├ダリウス・コンジ(撮影)、ピーター・マクレガー・スコット(製作)、エレン・マイロニック(衣装)、デブラ・シャット(セット装飾)、フィリップ・ローゼンバーグ(プロダクション・デザイン)による音声解説

映像特典

├もうひとつのエンディング

├アンドリュー・デイビス監督が語るもうひとつのエンディング