【タイトル】
ファイヤーウォール(原題:Firewall)
【概要】
2006年のアメリカ/オーストラリア/カナダ合作映画
上映時間は105分
【あらすじ】
銀行のコンピューターセキュリティを担当しているジャックのもとへ、ビル・コックスという男がやってくる。すると、彼は家族を人質に取っており、銀行のセキュリティを破るように脅しをかける。
【スタッフ】
監督はリチャード・ロンクレイン
音楽はアレクサンドル・デスプラ
撮影はマルコ・ポンテコルヴォ
【キャスト】
ハリソン・フォード(ジャック・スタンフィールド)
ポール・ベタニー(ビル・コックス)
ヴァージニア・マドセン(ベス・スタンフィールド)
メアリー・リン・ライスカブ(ジャネット・ストーン)
ロバート・パトリック(ゲイリー・ミッチェル)
ロバート・フォスター(ハリー・ロマノ)
【感想】
ハリソン・フォードにとっては「ハリウッド的殺人事件(2003)」以来の映画出演となった本作は、約5千万ドルの製作費に対し、約8千万ドルの売り上げと低調なものに終わってしまった。
何とも生温い映画。タイトルの「ファイヤーウォール」という言葉はパソコンが普及してセキュリティ対策の一環で知られ始めた言葉だと思うが、非常にアナログな映画という印象である。ラストは男たちの殴り合いだし。それに、パソコンには全く強そうには見えないハリソン・フォードがキャスティングされているのも違うかと。しかも、まだ小さな子供がいるという設定も60歳を過ぎたハリソン・フォードが演じなければならなかったのか。せめてあと10歳から20歳くらい若い役者が妥当だったと思うわ。
というか、冒頭の時点でジャックは何者かにIDを乗っ取られて賭けに利用されて業者から請求されている。自分のIDが乗っ取られたことにセキュリティのプロが気付けていない時点で「おいおい、大丈夫かよ」と思ってしまう。そんなポンコツさ加減を見込まれて犯人側から目をつけられたのかな⁉
それから犯人のビル・コックスらは家族を人質に取るのだが、顔を見られている時点で「すべてが終わったら殺される」のは目に見えている。映画的には犯人がずっとマスクを被っているわけにもいかないという事情は分かるが、人質には顔を見せるべきではないかな。それから、人質に取ったというのにジャックが出社することになってからは家の中では基本的に家族らは自由行動みたいになっている。かと思えばかかってきた電話を誰が取るかで揉めている。電話がかかってきた場合は誰が取るのか、誰かが家を訪ねてきたら誰が出るのかとか、犯人側が何も考えていないことがよく分かる。他にも描かれていないが子供たちの学校とか買い物とかどうするつもりだったんだろうか。しかも、この一家は一時的に逃亡して外に出るところまでは成功する。何人も見張りがいるのに逃げられるってアホすぎるでしょ。
そして、ジャックはペン型カメラと盗聴器を仕込まれた状態で会社に出社させられる。カメラに映らないようにパソコン画面にメールで助けを呼ぼうとすると、そのメールの文章は消えてしまいビルの書いたであろうメッセージが表示される。これでジャックは助けを求めるのを止めてしまうのだが、手書きのメモでいくらでも助けを求めることはできただろうに。というか社内のサーバーに侵入してジャックのメールまでいじれるってビルがすごいのか、それともこのセキュリティ会社のセキュリティがガバガバなのか。もうこの映画のリアリティラインはさっぱり分からない。
ジャックの行動を予想してか、ビルはジャックのオフィスに現れサーバールーム内に入り込む。ところが、会社合併に伴い端末をすでに移動させていたためどうにもできない状況になる。これはビルの想定外だったらしいが、なんとも詰めの甘い犯人たちである。ただ、映画的にはただの尺伸ばしにしか見えないのが残念。そして、iPodとスキャナを使って情報を読み込むことにするのだが、セキュリティのプロだからこそできる技って感じでもない。
そこからはビルの偽装工作によってジャックが金を持ち出した犯人みたいな描写もあるのだが、別に犯人と間違われて逃げるとか捕まるといった描写もない。ジャックからすれば「このままいけば俺が犯人と思われるかも」レベルであり、そうはなっていない。空港の銀行にいる職員にもジャックが家族を人質に取られていると信じているし。
そして、ビルはお金を受け取ると手下一人をジャックの家に残してどこかへ行ってしまう。家に帰ってきたジャックはその手下を殺してビルと連れ去られた家族を追いかけるのだが、そこで役に立つのは犬の首輪に装着されているGPSである。犬なんか家に置いて行けばいいのに…。しかもノートパソコンで犬の位置を追いかけるのだが、2006年という時代のネット回線で位置情報をリアルタイムで表示できるほどのことができたかな。地図なんて今の時代でもちょっと回線の通信速度が遅いと表示されにくいぞ。
クライマックスはジャック対ビルの戦いとなる。もうここまで来たらファイヤーウォールとか云々は関係ない。3年ぶりの映画出演となった60代前半のハリソン・フォードが自身の健在ぶりをアピールするかのように、30代後半のポール・ベタニーを格闘の末にやっつける。
本作の出来を見るに、別にセキュリティ対策に一石投じる作品というわけでもないだろう。ただ、本作を見ると、セキュリティのプロ自身のIDが乗っ取られて金を請求されるまで気付かなかったり、セキュリティ会社のサーバーに侵入されてメールを勝手に操作されたり、脅されたとはいえ会社とは無関係の人間をサーバールームに入れたりと、こんな人間も、こんな人間を雇っている会社どう考えてもやばい。でも、情報管理の杜撰さは昔からあるわけだし、こんなレベルのセキュリティ会社があったとしてもおかしくないのかな。
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語)
【ソフト関連】
<BD>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
映像特典
├侵入“ファイヤーウォール” ハリソン・フォード&監督秘話
├ストーリー・オブ・ファイヤーウォール
├オリジナル劇場予告編