【作品#0908】推定無罪(1990) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

推定無罪(原題:Presumed Innocent)

 

【概要】

 

1990年のアメリカ映画

上映時間は127分

 

【あらすじ】

 

ラスティ・ラビッチが務める検事局の後輩キャロリンが何者かによって殺害される事件が発生した。上司のレイモンドはラスティに事件の捜査を任されるが、ラスティとキャロリンはかつて不倫関係にあり、ラスティも気が進まない中、ラスティに不利な証拠が発見されてしまう。

 

【スタッフ】

 

監督はアラン・J・パクラ

音楽はジョン・ウィリアムズ

撮影はゴードン・ウィリス

 

【キャスト】

 

ハリソン・フォード(ラスティ・ラビッチ)

ブライアン・デネヒー(レイモンド・ホーガン)

ラウル・ジュリア(サンディ・スターン)

ボニー・ベデリア(バーバラ・サビッチ)

ポール・ウィンフィールド(ラレン・リトル判事)

グレタ・スカッキ(キャロリン・ポルヒーマス)

ジョン・スペンサー(リップランサー)

ジョー・グリファシ(トミー・モルト)

 

【感想】

 

本作の原作本が発売される前にシドニー・ポラックは映画化権を購入し、自身で監督することも考えたが、ユナイテッド・アーティスツは金がかかり過ぎるとして企画はワーナー・ブラザースに行き、アラン・J・パクラが監督することになった。また、ケヴィン・コスナーやロバート・レッドフォードがラスティ・ラビッチ役に検討されたが、ハリソン・フォードが演じることになった。また、ジョセフ・マッゼロ(両親の虐待を証言する少年役)とジェフリー・ライト(冒頭のオフィスの場面で電話している男役)の映画デビュー作である。

 

究極を言えば、主人公ラスティの自業自得であり、彼のせいでキャロリンは死ななくても良いのに死んでしまったのだ。本作の冒頭とラストにラスティのナレーションがある。そこでラスティは自身の過ちに言及することはない。そもそも、この冒頭とラスティのナレーションは全くもって必要ないと思うのだが、そのナレーションの部分で主人公が反省する言葉を発しないとなると余計に印象が悪い。子供のこととか自分のことは考えているが、亡くなったキャロリンのことを悼むわけでもない。だったらこのラストのナレーションは不要だった。その直前のラスティの表情で十分表現されていたようにも思うけどな。ハリウッド映画でやりがちなナレーションで始まってナレーションで終わる映画であるが、本作に関しては蛇足だし、別に冒頭のナレーションだって必要性を感じない。

 

バーバラは夫ラスティに不倫された過去があり、その一件は二人の間で一応は解決したものとなっていたが、ラスティはキャロリンに未練があり復縁を望んでいた。そして、夫がキャロリンの殺人容疑で逮捕されて裁判になってしまう。一人息子の母親であり、大学で働く女性であり、殺人容疑で逮捕されたラスティの妻である。こんな状況になってもバーバラは泣いたりわめいたり責めたり落ち込んだりといった分かりやすい感情表現をすることはない。ただただ夫の裁判に付き添い続ける女性として描かれていく。こんな状況でも夫に従順な妻みたいな古臭い女性像に見えたことだろうが、彼女が犯人だったのだからそれ自体が狙い通りだったのはなるほどと思わせる部分がある。

 

そういう「古い女性像」として見ていたバーバラが犯人だったということで「なるほど」という感想を抱く以上のものは提供できていないと思う。たとえ夫に不倫され続けた妻という立場であっても、夫の不倫相手を殺害しても良いなんていう法律はない。本作ではラスティの無罪が証明されただけであり、「一事不再理」は適応されないはずだ。なのでバーバラが自首でもしない限り彼女を起訴することはできるのではないだろうか(間違っていたら申し訳ないが)。でも、ラスティは自首を促すこともないだろうし、通報することもないだろう。犯行に使った凶器はラスティの家にある。おそらく迷宮入りしてしまうだろう。

 

本作で描かれた以降の物語は想像するしかないが、おそらくそうなるだろう。バーバラがキャロリンを殺害したのは許されないのは当然として、事の発端は既婚者のラスティがキャロリンと関係を持ったことである。その彼らが関係を持つ経緯は回想シーンで簡単に描かれるだけなのだが、要するにキャロリンは出世願望が強くラスティと関係を持ったが、ラスティ自体は昇進に興味がなかったのでキャロリンはラスティと関係を持っても意味がないとして関係を断ったという描かれ方だった。

 

映画内ではお互いが暗黙の了解の上で関係を持つという感じになっているが、キャロリンは出世のためにラスティを利用したのだ。そしてそのラスティが出世の役に立たないとわかると捨てたのだ。キャロリンは実力で出世を勝ち取ろうとしたわけではなく、自分の体を利用したのだ。それは後にキャロリンがレイモンドとも関係を持っていたことが物語っている。女性が自分の体を利用して出世しようとすることはいくらでもあったことだろう。それはもちろん男性側からの提案や強要に近いものも含めて。そういったことが行われる土壌があったこともこの殺人事件の遠因であるとも言える。

 

本作の描き方ではここまで考えさせようという意図こそないが、本当の原因を突き詰めないとこういった悲劇はなくならない。少なくとも本作の主人公がナレーションベースで、自身の行為や女性の枕営業を問題視する言葉は一切出てこない。これぞ身勝手な男性社会の象徴のように聞こえたが、それは皮肉として描いていないと私には映った。まだこの時代にはそういった意識は薄かったのか、はたまた…。

 

 

 

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