【作品#0906】パッセンジャー57(1992) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

パッセンジャー57(原題:Passenger 57)

 

【概要】

 

1992年のアメリカ映画

上映時間は84分

 

【あらすじ】

 

ハイジャック対策の専門家ジョン・カッターは妻が強盗に殺されてからは一線を退きハイジャック対策の講師を務めていた。ある日、一線に復帰すべきとの依頼を受けて飛行機に搭乗すると、そこには護送中のテロリストであるチャールズ・レーンも乗り合わせていた。

 

【スタッフ】

 

監督はケヴィン・フックス

音楽はスタンリー・クラーク

撮影はマーク・アーウィン

 

【キャスト】

 

ウェズリー・スナイプス(ジョン・カッター)

ブルース・ペイン(チャールズ・レーン)

トム・サイズモア(スライ)

ブルース・グリーンウッド(ラムジー)

エリザベス・ハーレー(サブリナ)

アーニー・ライヴリー(ビッグス署長)

 

【感想】

 

当初はシルヴェスター・スタローン主演で進められていた名残りでトム・サイズモアが演じたキャラクターはスライ(シルヴェスター・スタローンの愛称)となっている。

 

凄腕の捜査官と世界一危険なテロリストとの戦いいう筋書きだが両者ともその方面で最も優れた人物であるとは思えない。ジョンとレーンがそれぞれ人質を取った状態で銃を向けあう場面では、レーンはジョンが人質に取った「無能な部下」を射殺してジョンを逃がすことになる。どうせその部下を殺しちゃうならジョンを撃てば良かったのにという話である。

 

また、ジョンは偶然にもトイレに行っている間にハイジャックが発生している。トイレから様子を伺いながら機内公衆電話でスライに連絡する場面では、トイレのドアを閉めて連絡すれば良いものをドアを少し開けて状況を確認しながら電話することで敵の一人にバレてしまう。そこではたとえ状況が完全に把握できなくてもスライにハイジャックが起こったことを知らせるのが最優先のはずだ。そこで敵にバレて上述の流れになるのだからあまり賢明な判断ではない。

 

あと、細かい指摘だが、ジョンがハイジャックに気付くのが遅い。映画的には犯人側が銃を取り出してレーンの護衛の男を射殺し、近くにいる味方に銃を渡して、乗客が騒いでいると、ようやくジョンにカットが変わってハイジャックに気付くという流れである。さすがに銃声がした時点で気付いていないとなると危機に鈍感な人間に映ってしまう。

 

それから、世界一危険なテロリストをなぜ旅客機に護衛一人で乗せたのか。その言い訳みたいなセリフや描写は後にあったのだがどうも納得のいく説明ではなかったな。となると、そこまでの凶悪犯という設定にしなくても良かったと思ってしまう。ラストで記者への質問攻めにスライは「テロ対策が成功した」と言っているが、護衛の男と乗客が死んでいるんだぞ。もしこのテイストの着地にしたいのなら、せめて死者が出ないとか、そこまでの極悪人が犯人ではないとかにしないと割に合わない。

 

というか本作ってちょっと当時の様々な映画のエッセンスをごっちゃ混ぜにしている感じがする。例えば、エディ・マーフィ的なものを感じる要素がある。ジョンの隣におしゃべりなおばあさんが座ってジョンが(おそらく)エディ・マーフィと勘違いされたり、トイレで電話しているところを犯人に見つかったジョンが弱い人間のふりをして敵をやっつけたりところなんかはどう見てもコミカルである。

 

更には奥さんを強盗に殺された暗い過去を持つところなんかは「リーサル・ウェポン(1987)」のメル・ギブソンが演じたリグスみたいだし、飛行機内でのテロリストとの攻防は、限られた空間での活劇「ダイ・ハード(1988)」っぽいし、凄腕の男とハイジャックという組み合わせはチャック・ノリス主演の「デルタ・フォース(1986)」みたいだし…。なんか80年代のアクション映画全部乗せみたいな設定だ。といっても爆破ばかりに頼っているわけではない。

 

では、ウェズリー・スナイプスのアクションが凄いかと言われればそんなこともない。割とありきたりなプレーン味のアクションという感じである。飛行機内の小型エレベーターを下ったところに乗務員に成りすました敵がいるのだが、それほど苦戦することなくやっつけることになる。なぜその敵はジョンに乗務員であると信じてもらえたのにナイフを振り回して戦うことにするのか理解できない。ほかにもジョン・カッターを苦戦させる敵がほとんど出てこないのも本作の弱いところだ。

 

あと、ジョン・カッターを犯人の一味と勘違いして逮捕・拘束していたビッグス署長(ブレイク・ライヴリーのお父さんアーニーが演じている)のキャスティングキャラクター設定も微妙にマッチしていない。怪しい男を捕まえたと自慢気な署長が間違っていたことでFBIの男に大目玉を食らう場面で「ざまあ」と感じる要素がないのは残念。というか、そう感じさせなければこのシークエンス丸ごといらんって話だと思う。

 

一方で好印象を残したのがエリザベス・ハーレーだ。彼女にとってキャリア初期の出演作品となった本作では、CAとして登場して後にペインの味方として悪役の側に回るサブリナ役で出演している。凶悪犯の近くに乗り合わせた少年に対して満面の笑みでCAとしてサービスする姿は後のテロリストとしての顔と見事な対をなしており、まさに女優という感じがしてすごく好き。ただ、彼女のキャラクターは映画的にはそこまで厚遇されたわけではなく、もっと彼女にフォーカスを当てても良かったくらいだ(正直、このキャラクターはもっと見たかった)。

 

その煽りを受けたのが本作のヒロイン的ポジションを演じたアレックス・ダッチャーだろう。序盤ではジョン・カッターと意見が合わずに対立し、乗り合わせた飛行機内では危機に対して共闘する関係となり、最終的には今後のロマンスを匂わせる形となっている。そこまで描くにしては尺が足らないし、映画的にはかなり欲張った印象である。

 

全体を振り返ると、84分という上映時間の短さが救いであり、何気に見られるB級アクションとしては辛うじて成立しているかな。キャラクターを減らしてでもエリザベス・ハーレーに出番を与えるべきだったと思う。

 

 

 

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