【作品#0878】パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー(1998) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー(原題:Patch Adams)

 

【概要】

 

1998年のアメリカ映画

上映時間は115分

 

【あらすじ】

 

実在の医師パッチ・アダムスが医師になるまでを描く。

 

【スタッフ】

 

監督はトム・シャドヤック

音楽はマーク・シャイマン

撮影はフェドン・パパマイケル

 

【キャスト】

 

ロビン・ウィリアムス(パッチ・アダムス)

ダニエル・ロンドン(トゥルーマン・シフ)

モニカ・ポッター(カリン・フィッシャー)

フィリップ・シーモア・ホフマン(ミッチ・ローマン)

ボブ・ガントン(ディーン・ウォルコット)

 

【感想】

 

トム・シャドヤック監督の前作「ライアー ライアー(1997)」のオファーを断っていたロビン・ウィリアムスは「ライアー ライアー(1997)」が興行的に成功したことを受けてトム・シャドヤック監督の次の作品に出演したいと考え本作への出演が実現した。パッチ・アダムス本人は本作にカメオ出演をしているが、本作でのパッチ・アダムスの描かれ方を嫌っており、本作を酷評したロジャー・イーバートの意見に賛同している。

 

これって良い話なんだろうか。大学生時代以来かなり久しぶりに鑑賞したがこの印象は当時と変わらない。

 

まず、パッチ・アダムスを当時40代後半のロビン・ウィリアムスが演じたことが失敗じゃないだろうか。パッチ・アダムスが医学部に入学したのは22歳ごろ。いくら何でも無理がある。さらに親子くらい年齢の離れたモニカ・ポッター演じるカリンとの恋人関係も無理がある。

 

そして、映画の終盤でカリンは患者によって殺されてしまうのだが、これは事実ではなく、実際に殺されたのはパッチの親友の男性である。また、パッチと恋人になるカリンは、実生活で恋人になって結婚したリンダのことを指している(彼らは奇しくも映画公開の1998年に離婚)。実在の人物を描く映画において、モデルとなる人物が殺される結末を用意するなんて製作側の気が知れない。本人に何て言ったんだろう。「あなたのことを映画化するんですけど、あなたの奥さんは学生時代に殺される話にします」とでも言ったのかな。正気の沙汰とは思えない。

 

パッチ・アダムス本人が本作のことを批判しているが至極当然。上述のこともそうだが、彼は「無料で」受診できる診療所を開業したのだ。その精神に則るのなら、そもそも金儲けの権化みたいな映画化は立ち入るべきではない気がする。そして、上述のようなどう考えても本人に失礼な脚色までしている。そりゃ本人も怒るでしょう。観客が仮に上述の件を知らなかったとしてもあまり良い気分のする映画ではない。

 

本作の二項対立があまりにも単純化されているのも問題だ。頭の凝り固まった学長が悪で自分は善。学長の言い分に正しいこともたくさんあったと思うが、パッチはそのすべてを否定しているかのようだ。患者との対話が大事だと説いていたが、もし学長のような性格の患者が目の前に現れたらパッチはどうするのかと聞きたい。今目の前にいる相手とろくに対話もできないまま患者との対話だけはうまくいくのか。結局気の合う連中同士で無許可のクリニックをやっていただけに見える。で、気の合う者同士で集まるのは良い。さらに、患者にだって通院する病院を選ぶ権利はある。パッチのところを希望する患者はそこへ行けば良いし、行って合わなければ別のところに行けば良いだけだ(もちろん選択の余地がない地域や病気はあると思うが)。

 

ちなみに本作の中でパッチが対話を諦めた患者はおらず、仮に当初はパッチを拒んだ患者でさえもパッチが工夫を加えるとパッチに笑顔を見せる。中にはパッチみたいな医者が苦手なタイプもいただろうし、パッチに心を開かない患者もいただろうが、そういう患者は基本的に描かれることはない。患者以外のキャラクターも学長を除けば基本的にそうである。ミッチーも当初はパッチを嫌っていたが終盤には完全に仲間になっている。別にパッチという人間や医者を否定するつもりはないが、本作でまるで神様の如く崇められているのが気にかかる。パッチとすべての患者が合うわけではないだろうに。映画の終わりにお偉いさん相手に説教をしてパッチに二度も拍手を浴びせるくらいだから猶更だ。

 

また、パッチが勉強をする場面がほとんどないのも気にかかる。パッチが勉強していないことをミッチが指摘しても、パッチは常に成績上位者である。なぜ成績上位なのかの説明はなく、まるで天才みたいな描かれ方である。パッチだって最初は何も知らない状態なわけである。それを知る過程は必ずあったはずだからそれは描くべきだったと思う。これだと成績が良いからルールを破っても良いみたいに見えてしまう。ここもパッチを好きになれないポイントである。

 

それに、無許可の診療所ってさすがにやばいと思うんだが、本作では患者が不満に思う病院が悪として描かれ、その病院で多額の金を取られた患者や満足に治療を受けられなかった患者がパッチの営む無許可の診療所を受診するためにやってくる。見た感じろくな医療設備もなさそうだが、患者はこんなところに来て満足できるのだろうか。しかも備品がなくなると病院から盗んでいるし。その備品がなくなることで困る人がいることなんてお構いなし。自分たちの診療所さえ良ければいいのだろうと思えてしまう。

 

本作はトム・シャドヤック監督が「ライアー ライアー(1997)」の次に監督した作品である。「ライアー ライアー(1997)」はジム・キャリーがコメディ映画に実足を置きつつドラマもできますよというような映画だったと認識している。その成功を受けてトム・シャドヤック監督は割とドラマ面をメインにした本作を監督したのではないかと思う。ただ、こっちの路線はあまり向いていないように思う。

 

映画は主人公が成長するタイプの映画と、完成した主人公が周囲を変えるタイプの映画が多くあり、本作は後者だと思う。精神病院を出て医大に入ってからのパッチは基本的に完成した人間として君臨し、自分の考えを曲げることはない。そしてその彼の考え、行動が周囲を動かしていくことになる。やはり本作で描かれるパッチ・アダムスは完成された人間には到底見えない。彼自身も成長していく物語にしなかったのが最大の失敗点だろう。

 

 

 

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