【作品#0811】ロミオ+ジュリエット(1996) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ロミオ+ジュリエット(原題:Romeo + Juliet)

【概要】

1996年のアメリカ/メキシコ/オーストラリア合作映画
上映時間は120分

【あらすじ】

架空の街ヴェローナ・ビーチで、二大マフィアの構想は絶えず起こっていた。青年ロミオとジュリエットは互いに一目惚れするが、彼らはすぐに対立する一家の人間であると理解するが…。

【スタッフ】

監督はバズ・ラーマン
音楽はネリー・フーパー/クレイグ・アームストロング
撮影はドナルド・マカルパイン

【キャスト】

レオナルド・ディカプリオ(ロミオ)
クレア・デインズ(ジュリエット)
ジョン・レグイザモ(ティボルト)
ハロルド・ペリノー(マキューシオ)
ピート・ポスルスウェイト(ロレンス神父)
ポール・ソルヴィノ(フルヘンシオ)
ダイアン・ヴェノーラ(グロリア)
ブライアン・デネヒー(テッド)
ポール・ラッド(デイヴ・パリス)

【感想】

シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の舞台を現代に置き換えた映画化。主演したレオナルド・ディカプリオはベルリン国際映画祭で銀熊賞(男優賞)を受賞した。

シェイクスピアの作品の映像化作品は数えきれないほど存在する。そして、その作品が書かれた当時の映像化作品もあれば、本作や「ハムレット(2000)」のように現代に舞台を置き換えた作品もある。他にも翻案など挙げればキリはない。なので、本作のような映像化作品自体は作られることに何の疑問もない。ただ、それがうまく機能したとは言い難い。

中盤くらいまではとにかく映像が騒々しい。当時のMTV風の映像でいわゆるスタイリッシュな演出で見せていく。短いカット割りや素早いカメラワークなどがそれに該当するのだろうが、2024年現在から振り返ると決してカッコいいとは感じない。しかも、かと思えば中盤以降は割と普通の演出になっていく。意図があるのは何となく理解できるが、映画としてこの演出を転換させることは機能したとは言い難い。そして、冒頭のガソリンスタンドでのガンアクションはスローモーションに二丁拳銃が登場し、のちの協会の場面では鳩まで出てくるのでジョン・ウー監督へのオマージュかと思わせる。

また、音楽も当時の流行りの音楽が流れたかと思えばモーツァルトも流れる(ちなみに本作の原作は16世紀ごろだが、モーツァルトは18世紀の作曲家なので当時の音楽という訳でもない)。セリフに関してはシェイクスピアの原作そのままの箇所もあるようだ。このようにあらゆる演出を現代とクラシックで折衷したような作品に仕上がっている。それがバズ・ラーマンらしさなのかもしれないが、あまりうまくハマったとは感じない。

そして、肝心の物語だが所詮は一目惚れし合った若い美男美女の悲恋である。彼らは互いのことを特に知り合ったわけでもない。いくら原作通りか知らないがお互いのことを殆ど知らぬまま愛の言葉を口にしたって薄っぺらく見えるだけである。恋愛のきっかけがお互いの見た目だってそれは観客側からしても構わないところだ。彼らが敵対する一家の者同士だからこそ燃えるというのも理解できる。ただ、やっぱりお互いの中身に好きになる要素が見当たらないのは辛い。お互いの見た目以外の何かはないのか。ただ、出会いの場面の水槽越しに見つめ合うところは印象深くて良いと思う。

ロミオとジュリエットは敵対する一家であり、ロミオは喧嘩が起こりそうになるとその場を収めようと努力するがうまくいかずに最終的にティボルトを殺してしまう。ロミオは殺人まで犯してしまったのに追放処分になるだけである。現代劇でこれは意味が分からん。普通に警察に捕まる案件やぞ。ここは殺人まで至らなくても良いと思うわ。現代劇で主人公が殺人を犯しても捕まらないという違和感は最後までついて回ることになる。

そんな感じで惚れた者同士が対立する一家の軋轢に悩まされつつ、物語は誰もが知るオチへ向かっていく。結局のところ、観客が二人の恋を応援したくなるととても思えないのだ。ロミオは所詮はチンピラだし、ジュリエットは世間知らずのお嬢様。せめて観客が応援したくなるような設定や物語にすべきなのに、それをしたであろう箇所が見当たらない。

結局は多くの観客が知っている通りのオチが待っている。それが見えてくる辺りからかなり退屈になってくる。ここがこの物語の一番の見せ場だと思うが、全く盛り上がらない。わかっていても面白かったり感動したりする映画や物語はいくらでもあるが、本作に限ってはわかっているからこそ盛り上がらない感じに仕上がっている。

若き日のレオナルド・ディカプリオは瑞々しいし、まだ10代のクレア・デインズもこの役に相応しい清楚さを持ち合わせている。やはり上述の彼らの出会いの場面の美しさ以外は見どころがない。時に題材によって窮屈になり、時にバズ・ラーマンらしく自由にアレンジした作品が本作というところだろう。

【関連作品】

「ロミオとジュリエット(1936)」…アメリカ製作/ジョージ・キューカー監督版。
「ロミオとジュリエット(1954)」…イギリス製作/レナート・カステラーニ監督版。
「ロミオとジュリエット物語(1954)」…旧ソ連製作/レオ・アルンシュタム/レオニード・ラブロフスキー監督版。
「ロミオとジュリエット(1964)」…イタリア製作/リカルド・フレーダ監督版。
「ロミオとジュリエット(1968)」…イタリア製作/フランコ・ゼフィレッリ監督版。
「ロミオ+ジュリエット(1996)」…アメリカ製作/バズ・ラーマン監督版。
「ロミオとジュリエット(2013)」…イギリス製作/カルロ・カルレイ監督版。



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【ソフト関連】

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音声特典
├バズ・ラーマン(監督)、キャサリン・マーティン(プロダクション・デザイン)、クレイグ・ピアース(脚本)、ドナルド・M・マカルパイン(撮影)による音声解説
映像特典
├“シェイキングアップ・シェイクスピア"
├秘蔵映像集
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├バズ・ラーマン ギャラリー
├撮影監督のギャラリー
├インタビュー集
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