【作品#0801】ルディ/涙のウイニングラン(1993) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ルディ/涙のウイニングラン(原題:Rudy)

【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。

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【概要】

1993年のアメリカ映画
上映時間は116分

【あらすじ】

幼いころからノートルダム大学のフットボールチーム「ファイティング・アイリッシュ」に憧れていたルディは小柄な体格と成績の悪さ、貧しい家庭環境から大学進学を諦めて地元の向上で働いていた。それでも夢を諦めきれないルディは仕事で得たお金を貯金して、ノートルダム大学へ入学するために地元を後にする。

【スタッフ】

監督はデヴィッド・アンスポー
音楽はジェリー・ゴールドスミス
撮影はオリヴァー・ウッド

【キャスト】

ショーン・アスティン(ルディ・ルティガー)
ネッド・ビーティ(ダニエル・ルティガー)
ジョン・ファヴロー(D・ボブ)
ロバート・プロスキー(カヴァナー神父)

【感想】

実在のフットボール選手ルディ・ティルガーを描いた本作は、実在のバスケットボールチームを描いた「勝利への旅立ち(1986)」のデヴィッド・アンスポーが監督を務めた。また、本作はヴィンス・ヴォーンの映画デビュー作でもある。

2008年のアメリカ大統領選挙で共和党候補のジョン・マケインは本作のジェリー・ゴールドスミスのサントラから「Take Us Out」を使用している。ちなみに、同選挙の勝利宣言でバラク・オバマは本作と同じフットボールを題材とした「タイタンズを忘れない(2000)」のサントラからトレヴァー・ラビンの楽曲を使用している。後者のエピソードは「すばらしき映画音楽たち(2016)」で語られている。

映画の最後の字幕に、肩車で試合会場を後にしたのは彼だけでと記されているが、本作の2年後にマーク・エドワーズも同様に肩車で試合会場を後にしているらしい。

「何かを始めるのに遅すぎることはない」とか「夢に向かって行動するのに周囲の目を気にすることはない」といった古典的でかつ普遍的なメッセージは十二分に伝わる作品。どれだけ高い目標を掲げたって個人の自由だし、たとえ到達するのがほぼ不可能であろうとそんなことは構わない。それは私も年齢を重ねていくにつれてそう思う。別に失敗したって良い。それで笑うような人間は相手にしなければ良いだけだ。そもそも他人の失敗を馬鹿にするような人間を変えることなんて無理な話である。いかに自分を高めるかに集中するルディの姿には心動かされるものがある。

映画と実話の違いはいくつもある。映画では新コーチのダン・ディバインはルディをメンバー入りさせることに懐疑的だったが、実際にはルディをメンバー入りさせるアイデアは新コーチのダン・ディバインによるものであるようだ。ただ、映画化に向けてダン・ディバインは自ら悪役を買って出たらしい。ちなみに、映画の中ではチームメイトがコーチのデスクに自らのユニフォームを置いていくという抗議方法が取られているが、ダン・ディバイン本人はもしそのようなことがあったら関与した選手はチームから追放していただろうと語っている。

また、ルディにはフランクという兄はいないそうだが、実生活でルディが夢を叶えることに対して「無理だ」と言った人をフランクという架空のキャラクターに集約している。他にも、最後の試合でルディコールは起こっていないし、ルディを途中出場させるためにコーチの指示を無視してプレーを変更していないし、グランドキーパーのフォーチュンは実在の人物ではない。この要素がなくてもこの実話をもっともらしく映画化できたとは思う。

そんな本作で一番物足らないのはチームメイトとのドラマである。上述のようにルディが試合に出られるようにチームメイトが一致団結してはコーチに抗議までしている描写がある。ルディがチームメイトと一緒に練習する場面はいくつもあるが、そこで捉える姿はルディ個人ばかりである。ルディは大学に編入できる以前から「どんなことでも役に立ちたい」と言っていた。レギュラーの選手とは比べ物にならないくらいの小さな体でもルディは一生懸命に練習に励んでいた。所詮はレギュラー選手相手の練習かもしれないが、そこで控え選手が一生懸命頑張ることでレギュラー選手だって噛み応えのある練習になるだろうし、それがチームの勝利につながる可能性は十分にある。ルディはそこまで考えて練習しているだろうが、それをチームメイトも理解しているという感じには見えない。

とある場面でルディ相手に手を抜いたジェイミー(ヴィンス・ヴォーン)がコーチから叱責を受ける場面がある。このジェイミーは自分よりはるかに小柄なルディ相手に本気を出したって意味がないと考えているのだろう。たとえ恵まれた体格や能力があったとしても「ひたむきさ」で自分より勝るやつがいると周囲は感じたはずだ。このルディのひたむきさが周囲に波及していくきっかけとしてこの場面は非常に重要だし、ルディ目線で見ている観客にとっては気持ちの良い場面でもある。ただ、以降にこのような場面はあまり登場せず、「ルディがひたむきに頑張っているから俺も頑張ろう」とか「ルディが一生懸命練習に励んでいるからチームの士気も上がっている」とか「ルディのおかげで練習に身が入り試合にも勝てる」とかそういう積み重ねは欲しかったところ。

ノートルダム大学への編入前にルディはグランド整備の仕事を買って出る。そこで彼の上司になるのがチャールズ・S・ダットン演じるフォーチュンである。彼はルディのひたむきさに負けてルディに仕事を与え、ルディがこっそり控室を寝床にしていると分かると鍵と毛布をこっそり用意してくれた。それもこれもルディが夢を叶えようと必死だからだ。そんなルディも自身にとって最後の試合のメンバーリストに入っていないと分かるとフォーチュンに「俺は辞める」と言う。すると、フォーチュンはかつてノートルダム大学でプレーしていたが、肌の色が原因でプレーできないだろうと思って辞めたことを後悔していると話してルディを励ます。そして、その後にチームメイトがコーチに抗議してルディのメンバー入りを後押しする展開となっている。感情的な揺さぶりが必要なのは分かるが、ここでルディが辞めると言ってそれを翻す展開は仮に実話通りだったとしてもなくても良かったかな。特にフォーチュンの後悔の話はやや嘘くさい話に聞こえてしまう。チャールズ・S・ダットンの演技も彼らのやり取りも素晴らしいのは確かだが。ただ、意地悪を言うと、その後にルディが遅れてチームの練習に合流する場面は遅れているのだから走って合流してほしかったな。

また、ルディが努力している様子はしっかり伝わってきたのだが、個人的に物足らないと感じたところは少しある。例えば、ノートルダム大学へ編入できるまでの間、ルディはひたすらに成績を良くするために勉強に勤しむのだが、その傍らでグランド整備の仕事をしたり、ファイティング・アイリッシュのためになるサークル活動に励んだりしている。勉強以外の時間のルディの過ごし方として別に悪くはないのだが、本作の描き方だとノートルダム大学へ編入するまでの間は何のスポーツもしていない印象を受ける。せめていつノートルダム大学へ編入してトライアウトを受けることになっても良いように体力作りをするとか、個人練習をするとかそういった描写は必要だったように思う。これは少しだけモンタージュの如く描かれるだけでも印象は変わったと思う。それは、ノートルダム大学へ編入してファイティング・アイリッシュの一員として活動を始めてからについても同様のことが言える。チームメイトにサインの確認をする場面はあったが、チームの練習以外の時間にルディができることもあったんじゃないかと思ってしまう。居残り練習をするとか、小柄な体でも戦えるようにするにはどうしたら良いか誰かに相談するとか、そういった場面も必要だったと思う。こういった描写がないとただひたすらな奴という印象を与えかねない。同じ努力をするにしてもやり方は考えなければならないはずだ。もしルディが努力の仕方を間違えているのだとしたら、それを指摘できる周囲のキャラクター(家族、チームメイト、コーチなどなど)がいると、尚のこと良かったんじゃないだろうか。結果的に彼は夢を叶えた。これが難しいところだ。

これでも控えめな方だと思うが、もっとリアリティを追求しても良かったと思う。どうも脚色、創作した箇所が微妙に浮いていて、せっかく良いものを作れているのに場面によってはちょっと白けてしまう雰囲気もある。また、細かい経緯は分かりかねるが、恩師のコーチが映画では悪役を買って出たり、主人公の兄貴にフランクという架空の嫌味なキャラクターを用意したりしないと主人公のドラマを描けなかったとは思えない。結局は自分との戦いなのだから。

また、これほどまでに一つのことに執着できるのも才能であり一方で病的でもあり、そこは紙一重だと思う。だからこそ、ジョン・マケインの陣営は本作のサントラから楽曲を拝借したのだろう。映画のテーマや要素をどう引用してくるかはその人次第。しかも本作の主人公が行動を起こすきっかけは友人の死である。本作みたいな作品はいろんな形で利用されてしまいそう。




取り上げた作品の一覧はこちら



【ソフト関連】

<DVD>

言語
├オリジナル(英語/スペイン語)
├日本語吹き替え
映像特典
├作品のモデル:ルディ・ルティガーのインタビュー
├ショーン・アスティン(主演)のコメント
├メイキング・ドキュメンタリー
├タレント・ファイル
├関連作品予告編集

├ミュージック・スコア