【作品#0791】バンテージ・ポイント(2008) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

バンテージ・ポイント(原題:Vantage Point)

【概要】

2008年のアメリカ/メキシコ合作映画
上映時間は90分

【あらすじ】

スペインの広場で行われていたサミットでスピーチをしようと演台に立ったアメリカ大統領が狙撃される事件が発生する。広場がパニックに陥ると、それに追い打ちをかけるように爆破も発生する。シークレットサービスのバーンズは犯人を追う手がかりを探し始めるが…。

【スタッフ】

監督はピート・トラヴィス
音楽はアトリ・オーヴァーソン
撮影はアミール・モクリ

【キャスト】

デニス・クエイド(トーマス・バーンズ)
マシュー・フォックス(テイラー)
フォレスト・ウィテカー(ハワード・ルイス)
エドガー・ラミレス(ハビエル)
シガニー・ウィーバー(ブルックス)
ウィリアム・ハート(ヘンリー・アシュトン)
エドゥアルド・ノリエガ(エンリケ)

【感想】

4千万ドルの製作費に対し、1億5千万ドルのヒットを記録したが、批評家からは賛否が分かれる結果となった。

いわゆる「羅生門(1950)」っぽい形式を取りつつ、「クラッシュ(2004)」と「ボーン・アルティメイタム(2007)」を足して割ったような作品。

ただ、視点が変わっても、「実はこの時こうでした」というのが徐々に明らかになる程度であり、これは脚本が上手いというわけではなく、脚本家のさじ加減でどうにでもなる話に見える。特に味方の裏切りなんて伏線など全くない。こういう所にこそ脚本家の腕が試されるところではないだろうか。

また、チャプター2ではエンリケがシークレットサービスから逃げてパトカーの前に立ち止まると撃ち殺されてしまう。ここではシークレットサービスが撃ったのか、パトカーから降りてきた警官が撃ったのかは分からないままチャプター3へ移行する。そして、ラストのチャプター6でこの場面の真相とその後が描かれる。ここでは追ってきたトーマス・バーンズとパトカーから降りてきた寝返ったテイラーとの銃撃戦となる。チャプター2を思い出せばエンリケを追ってきた二人のシークレットサービスが近くにいるはずなのだがチャプター6ではこの現場に居なかったことにされている。視点を変えて同じ場面を描き直すのならチャプター毎に矛盾や不足が生じてはならないはず。

良かったと感じられたのはフォレスト・ウィテカー演じるハワードのエピソードくらい。妻子と別居中で何かを求めてスペインへ旅行に来た男である。この場所へ来た動機はやや理解しがたいところではあるが、妻子との関係再構築を考えている男がテロ発生後に妻の携帯電話に自身が無事であるとメッセージを残す。テロ発生前に知り合った親子のうち自身の息子と同年代のアナという少女をテロの直後に発見し保護するのだが、ビデオカメラで捉えた映像から警察に協力したいという思いで男を追いかけると、保護されていたはずのアナが多くの車が走る道路の真ん中にいる。ハワードは間一髪のところでアナを救出し、偶然居合わせたアナの母親に引き渡す。その直後に別居中の妻から電話が来る。自身が無事であることと少女を救えたこと、何も知らない息子が元気でいることを涙をこらえながら話す様子はカットを割らずに見せている。決して多くの背景が語られたキャラクターではないが、何かしらの要因で別居することになってしまった男が別の何かで頑張る姿には胸を打たれるし、演じたフォレスト・ウィテカーは流石である。ただ、ここに至るまでの脚本はご都合主義が過ぎる。偶然息子と同年代の少女と知り合ったり、少女を助けた直後に別居中の妻から電話がかかってきたり。ただ、フォレスト・ウィテカーの演技は、そういった脚本の弱さを凌駕するものであった。ちなみにフォレスト・ウィテカーが演じたハワードは当初ロシア人の予定だった。ところがフォレスト・ウィテカーが別の役でオーディションを受けた時にピート・トラヴィス監督はその演技に感銘を受け、このロシア人の役をアメリカ人の役に書き直してオファーしたとされる。その期待に十二分に応えるものだったと思う。

上述の良かった点もありつつ、やはり「アイデア一発もの」という枠組みを超えることはできなかったように思う。短い上映時間の中をアクションを交えつつ突っ走ったのは正解だったと思う。




取り上げた作品の一覧はこちら



【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語/スペイン語)


【ソフト関連】

<BD>

言語
├オリジナル(英語/スペイン語)
├日本語吹き替え
音声特典
├ピート・トラヴィス(監督)による音声解説
映像特典
├メイキング・ドキュメンタリー集
├未公開シーン
├予告編集